ユリウスの幼馴染
「ユリウス!? ユリア、いつから名前が変わったの?」
ん? ユリア? 名前が変わった? 一体、何のことなんだ?
「セリス! 少し、向こうで話そうか!?」
ユリウスの顔色が変わり、凄まじい速さで幼馴染を店と店の間まで連れて行く。
遠目で見る限り、ユリウスは焦っている様子で幼馴染は笑いながらも頭を下げている。
少しの間、一人で待っていると二人が戻ってきた。
「ソウマ! さっ……さっきのはセリスが勘違いしたんだよ! 私はユリアなんて名前じゃなくてユリウスなんだ!」
「そ……そうなんだ! 勘違いをしてたんだよ」
ユリウスとセリスが不自然に、微笑んでいる。気にはなるけど、本人達が言っているんだし本当に勘違いだったんだ。
「なるほど! 勘違いだったのか……確かにユリアって名前なら女性に使われる名前だもんね!」
何故かユリウスとセリスの表情が、少しずつ青ざめていく。
「だ…………だよね! ユリアなら、お……女の人の名前だよね!」
何か不自然な言い方だけど何かあったのかな?
もしかしたら……ユリウスの元恋人の名前がユリアって名前で気まずいのかもしれないしこれ以上は何も言わないでおこう。
それよりユリウスの幼馴染が女の人だったことに僕は驚いた。
幼馴染で男と女で同じパーティだなんて僕とウルカとの関係にそっくりすぎるじゃないか。
ユリウスとセリスの関係が気になる。
「ユリウスとセリスさんはどれくらいの付き合いなの?」
「セリスでいいわよ! 私達は孤児院の出身で小さい頃からずっと一緒なんだよ」
「だからそんなに仲が良いのか……まるでカップルのように見えるよ」
ユリウスとセリスの二人ともがキョトンとした顔を僕を見る。
もしかして、何か失礼なことを言ってしまったかな?
「僕、何か変なこと言っちゃったかな?」
ユリウスとセリスが僕から目を逸らし、二人で後ろに振り返り、何かコソコソと相談を始めた。また少しして、何かが決まった様子で振り返る。
「ソウマの言う通り、私達は昔から仲良しのカップルなんだ!」
「そうそう! ユリウスが好きで私からアタックしたんだよ!」
凄い圧で言い寄る、ユリウスとセリスに驚き、二歩程後ろに下がる。
「な……なるほど! 仲良しなんだね」
二人揃って表情が乱れている。
今は喧嘩中で気まずい雰囲気を出さない為に、あえて仲の良いフリをしているのかもしれない。
「それよりも、労働組合に行ってよさそうな仕事は見つかったのかい?」
ユリウスの表情が元に戻り、話が変わって僕の仕事について聞く。
「うーん、三つ候補はあるんだけどすぐには決めれなくて……」
「確かにすぐには決められないよね……三つってどんな仕事なんだい?」
「酒場の裏方と工業区の仕事と冒険者としての採取系の仕事かな」
酒場の裏方の仕事か、冒険者として採取系をするかで迷っているんだけど。
すると、ユリウスとセリスが真面目な顔で二人同時に、僕へお願いをしてくる。
「ソウマさえ良ければ、私達と一緒に冒険者組合まで行き、依頼を同行してくれないかな?」
「私もユリウスも初めてで、何をしたらいいのか分からなくて……」
確かに、冒険者になって最初は何をしたらいいのか分からないよな。
依頼の種類は山ほどあるし、初心者は何が何か分からないだろう。
「僕は戦力にならなくてクビになったんだけど……そんな僕でも良ければ同行するよ」
ユリウスとセリスは嬉しそうに顔を上げて喜んでいる。
「私達は戦力になるかならないかで人を選ばないさ! ソウマだからお願いしてるんだ」
「私もユリウスも他に知り合いなんていないし、ソウマさんが優しいから」
生まれてから初めて人に、必要だと言ってもらえたような気がする。
仕事探しの気分転換にもなるだろうし、一緒に行くことにした。
「わかった、僕が分かる範囲で良ければ色々と教えるよ」
「本当かい? つい先日、知り合ったばかりなのにありがとう!」
セリスもユリウスに合わせて、頭を下げて御礼する。
そこまで御礼されることはしてないと思うけど、感謝されるのは悪いことじゃない。
「それなら早速だけど、冒険者組合に行こうか! 初めてなら教えることが沢山あるよ」
「よろしく頼む! 私達も気合をいれる!」
冒険者組合に行くだけなのに、そんなに気合を入れなくても……。
まぁ、初めてなら仕方のないことだ。
こうして僕とユリウス、セリスの三人は冒険者組合に向かうことになった。
冒険者になるには二つの試験を受けるのだが、ユリウスとセリスの実力に、驚くことになるのだった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
本日も夜に次話を投稿致します。
是非、読んでいただけると幸いです。