97 水魔法
久しぶりの投稿です。よろしく。
まずは思う形には完成できた。
修正したいところがいくつかあるけど、満足いくまでやってたら三日くらいかかっちゃう。不具合なく使えることを優先しましょう。
「水を入れるから一人きて。二人は釜に火を入れてちょうだい」
ついてきたのはミホ。水を足す担当のようだ。
「水汲み、一人でやってるの?」
一人でこなせる仕事ではないのだと思うのだけれど。
「ライダル家は昔から水魔法の家系で、わたしは水を操ることができます。ただ、そう強力ではないので水運びくらいが精々なんです」
確かに言われてみればミホには魔力があり、水の魔法特有の波動があった。言われて気がつくものだけどね。
「そうすると仕事奪っちゃいそうね」
水道橋から浴槽に流す機構と管をつけた。もう水を移動させる手間はなくなる。そうなったらミホの仕事がなくなっちゃうわ。
「いえ。そうなったら館のほうに回されると思います。奥様の湯浴みには呼ばれますので」
「それならよかったわ」
仕事を奪うことにならずなにより。とは言え、水を操れるのはいいわね。洗濯もいけそうだわ。
水が浴槽にたまるまでミホの力がどれほどのものが見せてもらった。
浴槽から水を操ってもらい、可能な限り水玉を作ってもらうと、一抱えできるくらいまで膨らませることができた。ざっと四十リットルって感じね。
「……げ、限界てす……」
「もういいわよ。ありがとう」
気を緩めた瞬間に水玉が瓦解して浴槽に落ちた。
息を切らすところを見ると、家系的には弱いのかもしれないわね。強かったら戦いのほうに育てられてたでしょうよ。
「水を作り出すことはできる?」
呼吸が整ってから質問をした。
「近くに水があれば鍋一杯分。なければほんの少しです」
魔力変換ではなく、完全に水操作なのね。
「もし、ミホがもっと上達したいのなら水魔法を教えてあげるわ。水魔法はいろいろ役に立つ使い道があるからね」
本人のやる気がないと身につかないもの。無理にとは言わないわ。
「お願いします! 教えてください!」
あれ? なにやらやる気満々ね。なんなの?
「上達すれば家での立場がよくなります! がんばって覚えますので、ご教示お願い致します!」
マリッタも家での立場が~って言ってたけど、家族間で立場とかあるのってどうなの? なんか殺伐としてない?
「わかったわ。まず初歩からね」
浴槽からコップ一杯分の水を上空に上げ、水玉を作る。
「やってみて」
「は、はい!」
わたしと同じくやると水玉を上空に作り出した。とても滑らかに。毎日やっているだけあって操作はいいようね。
「この水玉、水を操っているようで実は魔力を操っているの。つまり、魔力が水を集めて水を動かしているのよ。そう言われて思うことはない?」
「は、はい。言われてみれば長時間やっていると魔力が枯渇します」
「うん。ミホ、あなた才能あるわ。その感覚がわかるのだから」
水魔法の家系と言うのは確かなようね。
「わ、わたし、才能ありますか?」
「まあ、さすがに王国一になれるとは言えないけど、水魔法で食べていけるくらいの才能があるのは保証してあげるわ」
商売としてやっていくなら違う知識や才能も必要だけどね。そこまで語るまでもないでしょう。
「ミホは十五歳くらいかしら?」
「はい。もう少しで十六歳になりますが」
「じゃあ、四年。みっちり鍛えればこのくらいにはなるわ」
浴槽の水のすべてを持ち上げてみせた。
「あなたの魔力量から四年の修練を考えたらここまでは到達するんじゃないかしら? と言っても下女の仕事もあるでしょうからこの半分かしらね?」
浴槽のすべては毎日修練したらの話。仕事をしながらなら半分が精々でしょうよ。
「……わたしに、そんな才能が……」
「才能があっても鍛えなければ意味はないわ。要はあなたの努力次第ね」
「がんばります!」
鼻息荒くやる気を見せるミホ。焚きつけておいてなんだけど、そのやる気はどこから出てくるのかしらね?
「じゃあ、右手に魔力を手に纏わせてみて」
ミホにわかるよう魔力を光らせて手に纏わせた。
「光るのはミホがわかるようによ。そこまでやる必要はないわ」
最初は戸惑いはしたものの、見様見真似で纏わせた。
「そう。仕事中はずっと纏わせてなさい。そして、仕事が終わったら寝るまでに水玉をずっと浮かせてなさい。それが苦もなくできるようになったら初歩終了。一抱えで精一杯だったのが長時間維持できるようになってるわ」
一月か二月もやれば大丈夫でしょう。
「本当なら小さい頃からやればいいのでしょうけど、十五、六歳ならまだ間に合うわ。基礎さえしっかりしていれば十二分に伸びるでしょう」
「が、がんばります!」
「仕事に差し支えないていどにね。侍女長様に叱られるようなら終了よ。まっ、その見極めも修練の一つね。魔力を感じさせないのも上級者の技よ」
「はい!」
とまあ、話が逸れてしまったが、湯が沸いてきた。漏れがないかを確かめて、実際に入ってもらって使い心地をみてもらう。
「二人にもういいと伝えてきて。あと、侍女に入ってもらって不備がないかを確かめるから手の空いてる者がいないか、侍女長様に伝えてちょうだい」
「はい。畏まりました」
ミホが出ていき、わたしは尖った角がないかを探し始めた。




