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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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90 シャワー

 シャンプーを作っていたら自室のドアが叩かれた。


 叩かれ方から下女じゃないわね? 侍女様でもない。初めての叩かれ方だわ。


「はい。どうぞ。お入りください」


 ちょっと手が離せないので入ってもらうことにした。生成水を作ってる最中なのよ。


「失礼します」


 と、おば様たちの寝室を担当している侍女が入ってきた。もちろん、名前は知りません。と言うか、いつになったらわたしは侍女たちの名前を把握できるのかしら? いや、もう直接訊いたほうが早いか。


 ……いやまあ、最初からそうしろって話なんだけどね……。

 

「ちょっと作業中なのですみません。なにかご用で?」


「あ、こちらこそすみませんでした」


「いえいえ、構いませんよ。会話はできますから」


 もう何度も作っているもの。おしゃべりしながらでも問題ないわ。


「あの、湯浴みのことで相談したいことがありまして、少し時間をいただけませんでしょうか?」


 湯浴み? 肌の相談かしら?


「はい。お話なら大丈夫ですよ。あ、寝台でよければお座りください」


 そう広い部屋ではなく、人を招くような場所でもない。仲のよい人なら部屋を行き来してるようなことを話していたけどね。


 失礼しますとベッドに座った。長い話になるのかな?


「実は、湯浴み担当の下女から聞いたのですが、湯の雨を降らす魔法があるとか」


「ええ。シャワーと言います。体を拭くより気持ちいいですよ」


 朝はサッとシャワーで済ませられたら最高なのに。まったく、水道がないって本当不便よね。


「そのシャワー、湯浴み場で使えるようにできないでしょうか?」


「……それは、使えたらわたしも嬉しいですが、勝手に湯浴み場を改造はできないのでは?」


 シャワー室ができるならわたしも飛び上がって喜ぶけど、さすがに勝手に改造はできない。おば様や侍女長様から叱られるわ。


「それに、シャワーをするとなると湯を沸かす苦労もあります。侍女全員が使うとなると一日中沸かしてないといけなくなります。薪代がかさみ、下女の仕事が増えます。侍女の判断ではできないのでは?」


 さすがに館の改造を勝手にやったらダメなことくらいわたしにもわかる。おば様から説教を食らう未来しか見えないわ。


「確かにそうでしたね。わかりました」


 なにを?


「少し、侍女たちと話し合います」


 だからなにを?


「お忙しいところすみませんでした。またお邪魔してもよろしいですか?」


「え、ええ。いつでもどうぜ」


 消灯時間のようなものはないし、いろいろやることがあるから夜遅くまで起きてるしね。


「ありがとうございます。では失礼します」


 と、そそくさと部屋を出ていった。なんなの、いったい?


「ま、いいわ。シャンプー作りを続けますか」


 と、シャンプー作りに集中していると、またドアが叩かれた。あら、随分と早いこと。あれから一時間くらいなのに。


「はい、どうぞ」


 と、先ほどの侍女が侍女長様を連れて戻ってきた。え、なに?


「どうかなさいましたか?」


 動けないのでご容赦くださいませ。


「シャワーのことです。侍女たちから陳情を受けました」


「は、はぁ。そうですか」


「……シャワーを設置は可能なのですか?」


「え、ええ、まあ、許可と材料費をいただけるならすぐにでも設置します」


 そう難しいことではない。シャワー施設は何度か作ったことあるしね。


「材料費はどのくらいですか?」


「一万もあれば間に合うかと」


 前は三千ポイントくらいで作れたけど、侍女の数を考えたら三つは必要でしょうし、もうちょっと安いものにすれば四つは設置できるんじゃないかな?


「……一万ですか……」


「高いと言うなら材料を集めてきますが」


 この世界のものなら金貨一枚もあれば調達できるんじゃない? まあ、作ってもらうので時間はかかると思うけどね。


「シャワーは館の風呂にも設置可能ですか?」


「はい。ただ、奥様が使うとなればそれなりの改造──いえ、改築しないとなりませんが」


 まさか壁にホイとつけただけでは不味いでしょう。シャワーを浴びるのも侍女が付き添うんだからね。


「わかりました。湯浴み場にシャワーをつけることを許可します。明日、内容を書に纏めて提出しなさい」


 ん? はい? え?


「シャルロット様。ありがとうございます」


 あ、いや、え? ちょっとおいてけぼりなんですけど! 


「あと、部屋でなにをしても構いませんが、危険なことはしないように。大きいことをするときはわたしに報告しなさい」


 と、言うことだけ言って、侍女長様も侍女も部屋を出ていってしまった。


「いや、わたし、休暇中なんですけど!」


 と言うわたしの抗議は誰にも届きませんでしたとさ。なんなのよ、もー!

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