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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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87 お休みなんですけど

「意外と早く帰ってきたのね」


 馬車から降りたらおば様と侍女長様が待ち構えていた。


 身分的に使用人用の馬車乗り場にいる人ではないだろうに、侍女長様が渋い顔(してるようにわたしには見える)してるわ。


「何人も見張りをつけているのだから心配するようなことしませんよ」


 信用ないのはもうしょうがないとしても、十人近い見張りがついてる中で暴れたりしないくらいの常識は持っているわ。


黒衣くろこの立つ瀬がないわね」


「何回も気配を感じているんですからわかりますよ」


 侍女に化けたり庭師に化けたりしてるけど、動きや気配、魔力が一般人と違うのだから嫌でもわかると言うものだわ。


「マリッタ。奥様にロフロケーキを一つ。侍女たちに一つを渡しておいて。焼き菓子は下女たに配っておいて」


 荷物を降ろしているマリッタにお願いする。


「畏まりました」


「あら、ロフロケーキ?」


「はい。モルティーヌの店主に都合をつけていただきました。奥様によろしくとのことです」


「モルティーヌ? 確か、ミレイタにある焼き菓子屋、だったかしら?」


 おば様にはあまり馴染みがないところなんだ。まあ、異次元屋を利用していたらモルティーヌは利用したりしないわね。おば様はチョコレートが好きだから。


「はい。侍女たちも利用していると聞いたので寄ってみました」


「ミアも美味しいと言ってたわね。今度いってみようかしら?」


「ええ。いく価値はあるところでした」


 まあ、侯爵夫人がいっていいのかはわからないけどね。


「お土産にロフロケーキを買ってきたのでお食べください」


 おば様に食べてもらいたいから特別に席を用意してくれたのだから、おば様に食べてもらわなくちゃサイモンさんたちが報われないわ。


「美味しかった?」


「はい。わたしでは出せない味でした」


「シャーリーより上なの?」


「職人は凄いですね」


 一つを極めた人は本当に凄いわ。器材や材料が劣るのに、二段階上のものを作ってしまうんだからね。


「あ、予約制なので、頼む場合は余裕を持ってのほうがよろしいかと」


 侯爵夫人が言えばすぐにでも用意してくれるでしょうが、そんな特別待遇は侯爵家の名を汚す。品行方正がザンバドリ侯爵の家訓(表向き)なんだからね。


「そうね。メアリ、話を通してて」


 あ、いくんだ。取り寄せるんじゃなくて。


「畏まりました」


「お手柔らかにお願いしますね」


 あちらもそう暗い下心があったわけじゃないんだし、あんな美味しい店を潰すのはもったいないわ。


「あなたはわたしをなんだと思ってるのよ。ただ、食べにいくだけよ」


 侯爵夫人が食べにいくだけで済まないことぐらいわたしにでもわかるわよ。まあ、どうただで済まなくなるかは想像できないけど。


「では、失礼します」


 話は終わりと一礼して立ち去ろうとしたら、おば様に肩をらつかまれてしまった。


「報告することはまだあるでしょう」


 にっこり笑うおば様。わたし、お休み中なんですけど……。


「それは黒衣くろこからお尋ねください。そのために気づいてないふりしてたんですから」


 さすがおじ様の黒衣くろこ。薬問屋の倉庫まで忍び込んでいた。日頃、どんなところに忍び込んでるのか窺えるわね……。


「あなたがいるのに近くまで寄れるわけないでしょう。貴重な黒衣くろこを失うわけにはいかないわ」


 いや、わたし、そんな狂暴じゃないんですけど。見て見ぬ振りくらいできるんですけど。おば様、わたしをどんなふうに見てるの?


「ミリエイラ商会にガルズ様との繋ぎをお願いしただけです。いろいろお世話になりましたから」


 おじ様がなにを考えてわたしと接触させないようとしてるかわからないけど、わたしはお世話になったお礼をしたいだけ。ってまあ、相手が隣国の大使なんだからお礼を返すだけでは止まらないことは承知してるけどね。


「だろうとは思ってたわ」


 はぁーとため息をつくおば様。そんなにダメなこと?


「いいわ。あなたの好きにしなさい」


 あれ? 許してくれるの? なぜに?


「とりあえず、ロフロケーキを食べながら報告しなさい」


 だからわたし、今日お休みなんですけど。


 なんて抗議もできずおば様の執務室へと連行され、本日二度目のロフロケーキをいただきながらミリエイラ商会でのことをしゃべらされてしまった。


 でもまあ、ロフロケーキを食べられたし、まっ、いっか。

たまにの投稿ですみません。

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