83 お土産
「今日はありがとうございました」
ミリエイラ商会の支店へと戻ってきて、支店長のロイドさんと支店番頭のロックさんにお礼を言った。
「いえ、シャルロット様のお力となれたら幸いです。またなにかありましたらお声かけください。ミリエイラ商会はいつでもシャルロット様のお力となります」
「では、厚かましいくはありますが、一つお願いしたいことがあります」
ロイドさんも打算があって力になると言ってるならこっちも打算でお付き合いさせてもらいましょう。
「わたしどもで叶えられることなら。どんな願いでしょうか?」
さそくなことにもロイドさんの笑顔は崩れない。貴族もだけど、商人も仮面を被るのが上手なものよね。
「ミリエイラ商会は、サンビレス王国の商会と繋がりはありますか?」
カルビラス王国とサンビレス王国は通商を結んでいる。なら、ミリエイラ商会ならどこかで繋がっているはず。まあ、希望的予想だけど。
「……はい。サンビレス王国からも布は仕入れておりますので、繋がりはあります」
「では、サンビレス王国の大使、ガルズ・バンドゥーリ子爵様に繋ぎを取っていただけませんでしょうか?」
あれから一月以上経つけど、忙しいのか手紙一つこない。あ、おじ様のところにはきたみたいだけど、わたしのところには届いてないわ。
……まあ、おじ様のところで止まっているのかもしれないけどね……。
「少し、時間がかかりますが、よろしいでしょうか?」
「構いません。面倒なことをお願いしてすみません」
「いえいえ、繋ぎを取るくらいできなくては商人失格です」
「もし、金銭的面倒があるなら言ってください。お支払いさせていただきますので」
「ご心配なさらず。商人にとって繋がりは金銭にも勝ります。ザンバドリの名があれば呼んでなくてもあちらから近づいてきますよ」
もしかして、これは、おば様に怒られる案件かしら?
ま、まあ、おば様ならこのくらいお見通しよね。想定内よね。そうだと思っておきましょう。うん。
「失礼します。シャルロット様、馬車が参りました」
馬車を呼びにいっていたマリッタが現れた。
「ありがとう。では、ロイドさん。よろしくお願いします」
「はい。お任せくだはい。繋がりができましたらマリッタお嬢様を通してご報告致します」
「はい、わかりました」
部屋を出て外に向かい、また支店総出で見送られてしまった。
馬車に乗り、走り出してしばらくしてマリッタにもお礼を言った。
「お気になさらず。これも仕事ですので。それに、家に貢献もできましたので、こちらからお礼を言いたいくらいです」
「家に貢献?」
え? 貢献しなくちゃならないの? 娘なのに?
「はい。下女の勤めが終われば家の仕事をしなければなりません。どこかの家に嫁ぐにしても無能では紹介もされません。シャルロット様のお陰でミリエイラ商会はサンビレス王国と繋がりができました」
わたしにはよくわからない理屈だけど、こちらもガルズ様に繋ぎをしてもらえるんだからウィンウィンな関係ってことにしておきましょう。
「そうだ。途中でお菓子屋さんはあるかしら?」
「お菓子屋ですか?」
「マリッタたち下女にお土産を買っていきましょう」
他の侍女と休憩中、おしゃべりの中で出かけた際はお土産を買ってくるのが暗黙の了解と聞いた。なら、わたしもお土産を買っていくべきでしょう。
「わかりました。モルティーヌと言う店がありますので、そこによりましょう」
御者さんに声をかけ、モルティーヌと言うお店へと向かった。
モルティーヌとやらにはすぐに到着した。
「随分と大きな店なのね」
どこかの館かと思うくらい大きく、馬車を停める場所まであった。王都のお菓子屋って規模が違うのね~。
「王都で一、二を争う店です。他の侍女様もよくきておりますよ」
へー。そうなんだ。貴族御用達、って感じかしらね?
「マリッタもきたことあるの?」
「はい。と言っても年に一度これたらいいほうですが」
それはかなり高級って感じね。
マリッタの先導で店に入ると、お菓子の城かって思うくらい焼き菓子やら生菓子、長期保存用の菓子など、異次元屋並みに充実していた。
「なかなか凄いわね」
これで一、二を争うって、王都、質が高すぎじゃない?
「マリッタ。選んでもらえる? わたしでは下女たちの好むものがわからないわ。予算は気にしなくていいから」
店内のものを買い占め、ってわけじゃないなら給金で間に合うはずでしょう。
「わ、わかりました」
選ぶのらマリッタに任せ、わたしは店内を見て回ることにした。
あーいい匂い。




