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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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72 死者の石

 ──ミラノリア。


 レベルAの世界であり、わたしたちの世界より上位の世界だそうだ。


 詳しい情報は教えてもらえなかったけど、その世界では『死者の石』と呼ばれ、第一級の呪物とされているとか。


「死者の石はとにかく厄介なのです」


 どうも人の思念を集めて怨霊を創り出すものらしく、その怨霊に取り憑かれたら死人になるらしい。


「死人は聖なる魔法でないと祓うことはできません。しかも、死人に噛まれたりするとその者も死人になり、どんどん増えていき、世界が壊れたことも一つや二つではありません」


 それはまた凄いわね。世界が滅ぶってどれだけよ?


「わたしたちの世界、結構怖いのがあるんですね」


「いえ。アルベガルにはありません。似たようなものはありますが」


 ん? わたしたちの世界にはない? ど、どう言うこと?


「世界は魔術協会が管理してますが、世界を越える技術は何万年も前からあり、秘密結社が握っていることがあります。確証はありませんがマルドラトと言う死の商人が売っているのでしょう」


 し、死の商人って、不穏すぎて怖くなってきたんですけど!


「で、でも、世界を越えるには時空の歪みとか感知できるんじゃなかったでしたっけ?」


 世界の壁は厚い。そこを開けるには空間が揺れるとかなんとか。観測機に反応があるとおばあ様に聞いたことがあるわ。


「通常はそうなのですが、魔術協会より技術が高い結社もいるのです。しかも、結社の者が世界を越えていると言う情報もあります」


 ってことは、わたしたちの世界にもいるかもしれないってことか。いや、死者の石があると言うことは、その可能性は高いと見るべきでしょうね。


「もし、情報を得たら報告してもらえると助かります」


「わかりましたが、魔術結社の方を派遣なりはできるのですか?」


「今のところは難しいですね。滅多なことで世界を越えることは許されません。越えるにしても準備に数年はかかるでしょう」


 まず無理と言うこと。自分の世界は自分たちでなんとかしろ、ってことなんでしょうね。ハァ~。


「お力になれず申し訳ありません」


「いえ、商取引するにも数百年かかったと聞いています。配慮のない願いをしてしまい申し訳ありませんでした」


 おばあ様が生まれる以前から魔術結社との商取引の交渉が始まり、やっと開始されたのが百数十年前。スマホになったのはここ数年のことだわ。


「いえ、ご理解ありがとうございます」


「それで、これはどう対処したらよいのでしょうか?」


 詳しい情報は与えられないみたいだけど、死者の石の対処法は聞いても問題ないはずだ。


「そのことですが、すべて魔術協会で買取りさせていただきませんか? 一つ、百万ポイントで買い取らせていただきます」


「──ひゃ、百万ポイント!?」


 いやいやいや百万って、一、十、百、千、万、十万、百万の百万ってことよね? わたしの魔力ですら一日五千ポイントよ? と言うか、死者の石、桶いっぱいにあるのよ? どんだけになるのよ!?


「危険なものではありますが、貴重なもの。他にも使い方があるのです。実は、ミラノリアとの商取引は現在行われてないのですよ」


 その理由は話してくれない感じだが、話さない時点で察しろってことでしょうね。まあ、この世界の諺に触らぬ神に祟りなしってのがある。触れるなと言うなら素直に従っておきましょう。


「そうですか。すみませんが、わたしの判断ではできかねませんので少しお時間をいただけませんか?」


「もちろんです。よく話し合ってお決めください」


 長椅子から立ち上がり、一礼して異次元屋を出店する。


「ハァ~~~」


 意識が自分の体に戻ると同時に長いため息を吐いてしまった。


「……どう説明したものやら……?」


 これと言った説明されなかったことをおば様たちに説明しなくちゃならない。気が重くてしかたがないわ。


 とは言え、説明しなくてはならない。部屋を出て下女の方に侍女長様に連絡を取ってもらい、またおじ様の執務室へと向かった。


「なにかあったの?」


 自然体でいたつもりだけど、顔には出ていたようでおば様に心配されてしまった。


「あの水晶ですが、死者の石だとわかりました」


「……随分と不穏な名称ね……」


「はい。人の魔石で怨霊を創り出すものであり、その怨霊は人を死人にする力があるそうです」


 執務室が沈黙に包まれた。


 まあ、無理もない。そんなものが庭にばら蒔いてあったんだからね。つい最近きたわたしだって知らずにいたことに嫌悪感があるもの。


「誰がやったかは旦那様にお任せします。奥様には死人の石の処分のことでお話があります」


「わかったわ。わたしの部屋で話しましょう」


 異次元屋できいたことを理解してるからか、すぐに返事をしてくれおば様の部屋へと移った。


「魔術結社法部のミルジアさんをご存知でしょうか?」


 部屋に入り、談話専用の卓についてすぐ話を始めた。


「……法部とは本当に厄介な話なようね……」


 知ってはいそうだ。


「ミルジアさんとは昔、会ったことはあるわ。違法取引の協力をしたときにね」


 ……秘密結社とやらは意外と世界を股にかけているようね……。


「そのミルジアさんが、死者の石を一つ百万ポイントで買取りたいそうです」


「は? 百万ポイントですって!?」


 そう。驚くほどの買取り価格なのだ。


「はい。わたしでは判断できませんのでおば様にお願いします」


 丸投げしたようで申し訳ないけど、これはわたしが判断していいことではないしね。侯爵夫人であり魔術結社の協力者でもあるおば様に任せるしかないわ。


「ハァ~。しょうがないわね」


 愚痴を言いたいのでしょうけど、それを飲み込んでスマホを取り出して異次元屋へと入店した。


「がんばってください」


 わたしには応援することしかできませんので……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面倒事は上司に丸投げ! それが上司の存在理由。
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