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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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71 ミルジア

 昼食を済ませ、侍女長様の許可を得て自室へと戻った。


 戸に鍵をかけ、収納魔法で異空間に仕舞った桶を出す。


「少しいただきますね」


 床に召喚魔方陣を描き、匙で水晶を掬って魔方陣の上に置いた。


 続いてスマホを取り出し、異次元屋のアプリを開いて入店。一瞬の消失とともに異次元屋のホールにわたしの霊体が立った。


「いらっしゃいませ、シャーリー様。異次元屋にようこそ」


「お邪魔しますね、リューケンさん」


「はい。ごゆるりとお買い物を楽しんでください。今日はどのようなものをお求めですか?」


「今日は買い物ではなく、買取りをお願いしたくてお邪魔させてもらいました。ただ、ちょっと問題があるものでして、人に害を与えるものかもしれないんです」


 害があるものを異世界にいきなり持ってくることはできない。まあ、一度隔離して調べるとは言ってたけどね。


「アルベガルのですか? 写真は撮ってありますか?」


「あ、すみません。撮ってませんでした」


 あまり使わないからカメラ機能があるのを忘れてたわ。


「すぐに撮ってきますね」


「あ、大丈夫ですよ。召喚魔法陣に乗せてあるんですよね?」


「はい。乗せてあります」


「でしたら召喚して調べてみます。少し店内を見てお待ちください」


 一礼してリューケンさんが消えてしまった。


 はぁ~。もうちょっとスマホの扱い方を学ばなくちゃダメね。


 反省しながら異次元屋の店内を見て回り、一時間くらい過ぎた頃にリューケンさんが現れた。なにやら表情を固くして。


「シャーリー様。あれをどこで手に入れましたか?」


「わたしが働いている侯爵家の庭ですが、なにか?」


「あ、失礼しました。場所を移しましょう」


 と、意識が揺らいだと思ったら、客間的なところに現れた。


 そこには初めて見る若い男性がいて、なにか複雑な魔法陣に置かれた水晶を見詰めていた。


「こちらは、魔術結社法部のミルジア様です」


 リューケンさんとは違う国の人みたいね。金髪に緑色の瞳って凄いわ。


 いや、わたしたちの世界にも金色の髪の人はいるらしいけど、ミルジアさんは、金色に輝いているよ。シャンプー、なにを使ってりのかしら?


「初めまして、シャーリー嬢」


 若いかと思ったらかなり年配の方らしいわ。


 魔力がたくさんある人は老化が遅く、若いままでいる。けど、内面までは若くはいられない。しゃべるとすぐにわかってしまうわ。


「初めまして。ミルジア様」


 地位のある人っぽいので丁寧にお辞儀のしておく。


「様は必要ありますんよ。気軽にお呼びください」


「はい。では、ミルジアさんとおさせていただきます」


「それで構いません。席にお座りください」


 霊体であるから立っていても疲れはしないけど、だからと言って立たせての会話は失礼に当たるのでしょう。なら、それに合わせるのが礼儀ってもの。軽く一礼して革の椅子に腰を降ろした。


「どうぞ」


 と、なにか飲み物を出された。


「偽りのものですが、ちゃんと味はわかるようになってます。まあ、なんの栄養にはなりませんがね」


 凄い。霊体に味を感じさせるとかどうしたらできるのよ? 意味がわからないけど、とっても高度なことなのはわかるわ。

 

 器に触れるとちゃんと物質の感触はあり、口にしたらちゃんと紅茶の味があった。


「……異世界は魔法が発展してるんですね……」


 わかっていても実際に見て触れると痛いほど思い知らされる。これはわたしたちの世界より数千年先をいっているわ……。


「それがわかるシャーリー嬢には是非とも魔術結社の一員になって欲しいですね」


「申し訳ありません。まだ世界を超える気はありません」


 前もリュージさんに誘われたけど、魔術結社になると言うことは今いる世界を捨てなくちゃならない。


 わたしがもっと探求心が強いなら受けていたでしょうが、今いる世界の繋がりをすべて切ってまでなりたいとは思わないわ。


「それは残念です」


 本気で言っているのではなく、話の流れで言ったみたいね。なのでにっこり笑うだけで止めておいた。


「話を戻しますと、これはミラノリアと言う世界の魔核。アルベガルでは魔石と言ったほうがいいですね」


「魔石、ですか?」


 魔術結社の方が言うのだから間違いないんでしょうけど、とても魔石には見えない。魔力なんてまったく感じないわ!?


「まあ、信じられないのも当然です。これは人の魔石であり、霊体を元に作られたものですから」


 あまりのことに言葉が出てこない。いくらなんでも荒唐無稽すぎるんですもの。


 けど、それを受け入れなくては話が進まない。無理矢理にでも受け入れた。


「さすがミディのお孫さんです」


「祖母を知っているので?」


「はい。長い、長い付き合いでした」


 どんな付き合いをしていたかはわからないけど、ミルジアさんの笑みから深い付き合いだったのは理解できた。


「失礼。歳を重ねると昔を思い出しやすくなるもので」


 気持ちを静めるためか、お茶に手を伸ばして口にした。


 わたしもリューケンさんもお茶に手を伸ばす。年長者への礼儀として、祖母を知る方への思い遣りとしてね……。

 

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