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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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66 水着(ビキニ)

 そう言えば、侯爵家の奥様とご令嬢がお風呂に入るとなれば大人数にもなるのを忘れてたわ。


 まあ、子爵夫人と男爵夫人がお風呂に入るだけで二十人近く……いや、あれは特別か。侯爵夫人と比べたら悪いか。


 いろいろ用意して脱衣場にきたら侍女たちが十五人もいた。ゆっくり一人でお風呂にも入れないとか、身分があるのも大変ね。


「遅れてすみません」


 脱衣場的な場所に侍女長様がいて、遅れたことを謝罪した。異次元屋に行ったら遅くなってしまったわ。


「奥様とお嬢様は入っています」


「侍女長様。入る方はこれに着替えてください」


 異次元屋で買った安い水着ビキニを渡した。


「……これは、水着、ですか……?」


 水着はおばあ様のときからあり、お城にきたときは湖で着たのを侍女長様も見ている。あまりよくは思ってない顔はしてたけど。


「湯着は湯を吸うと動きが悪くなりますし、冷めると体に悪いですからね」


 湯着も薄いけど、お湯を吸えば重くなり、冷めれば体を冷やす。わたし的に湯着って悪い文化なのよね。


「魔法で強化と保温の効果を足しているので冷えることはありません。裏技として冬に使うと暖かいですよ」


 冬、森に狩りや散歩にいくときは防寒として使っているわ。


「入るなら着替えてくださいね」


 そう言って、わたしは服を脱いだ。


「では、先に入りますね」


 躊躇している侍女長様を残し、異次元屋で買ったものを持ってお風呂場へと向かった。


 中にも湯着を着た侍女が四人いて、壁側に控えていた。


「新しい湯着を用意したので脱衣場で着替えてください」


 侍女としての立場だけど、今は奥様とお嬢様と一緒に入る立場。できる侍女ならこの状況に臨機応変に対応できるでしょう。


 一礼してお風呂場を出ていく侍女たち。やはり侯爵家の侍女ともなると優秀な人ばかりよね。


「お待たせしました。異次元屋でハルフィーナ産の蜜柑を買ってたら遅れました」


 湯に浸かる二人に謝罪する。


「ハルフィーナ産の蜜柑って、よく手に入れられたわね。異次元屋にもなかなか入ってこないのに?」


「前々から予約してたんです。予約だけで二十万ポイントが消えちゃいましたけどね」


 ハルフィーナ産の蜜柑は、食べてよし、お湯に入れてよし、体によし、よしよしよしの神の果物とされている。出回ったらすぐに完売となってしまうのだ。


「使ったりしていいの?」


「使わないと意味はありませんよ」


 蜜柑の油を使って作ったシャンプーは、カサカサの髪も艶やかにするほど効果がある。まあ、用法用量の注意は必要だけどね。

 

 この湯なら蜜柑を六つも入れればいいでしょう。


 お湯玉を作り出して体を軽く洗ってから湯へと入る。あー気持ちいい。


「シャーリーねえ様、髪を洗ってくださいませ」


「あら、わたしが先よ。ねぇ、シャーリー?」


 しょうがない母と娘なんだから。


「おば様は髪より肌の回復が先ですよ。少し、肌がカサカサになってます。夜更かしやお酒の飲みすぎでは?」


「友達からは綺麗な肌と言われるのだけれど、そんなにカサカサしてるかしら?」


「基準は満たしてますが、それは椿の油を使っているからそう見えるのであって、元から回復させなければ沁みにもなりますよ」


 美しさは元から。表面だけ飾ってもそれは真の美しさではないわ。


「おば様はしばらく湯に浸かっててください。そのあとマッサージしますから」


 蜜柑の成分を体に染み込ませ、香りで精神を落ち着かせる。精神の安定も美しさの元だ。


「まずはミアの髪を回復しましょうか。ミアに合いそうな髪油も買ってきたからね」


「いいの、シャーリーねえ様?」


「ミアの髪が美しくなるなら惜しくないわ」


 まあ、三百ポイントと安いしね。あ、質は最高よ。


 湯から上がり、水着を着る。言った本人が率先しないと侍女たちも水着を着ないでしょうからね。


 ミアを椅子に座らせ、お湯玉で体を覆い、蜜柑を一つ入れる。


「ミアの金色の髪は綺麗よね」


 おじ様譲りの金色の髪。キラキラして憧れるわ。


 わたしの髪は薄紫に毛先が濃くなっている。特殊な髪の色だから維持管理が大変なのよね。乾燥すると髪がチリチリになってしまうし。


「シャーリーねえ様の髪のほうが素敵だわ。神秘的な色だし」


 まあ、お互いないものねだりよね。他人のが羨ましく思うのって。


「いつも使っているシャンプーは持ってきている?」


「こちらになります」


 ミア付きの侍女がシャンプーを差し出してくれた。と言うか、ミアと同じくらいの年齢ね。侍女ではなく世話役かしら?


「ん? このシャンプー、わたしが作ったものじゃないわね?」


 香りは似てるけど、感触が違うわ。


「友達にせがまれて切らしちゃったの。だから、薬師の方に作ってもらったんです」


「へ~。凄い再現率ね。八割はできてるわ」


 粘りがないと言うことは海草が違うんだろうけど、これなら貴族用のシャンプーとして通じるわ。


「でも、シャーリーねえ様が作ってくれるシャンプーとは違うのよね? なぜです?」


「魔力が込もってないからよ。ミアのような大きい魔力を持つ者は髪に影響を与えるの。魔力を使いすぎたりすると髪に宿る魔力まで持っていかれるのよ。だから毎日の魔力操作訓練は必須ってわけよ」


 魔力があればあったで苦労はあるものなのよ。


「今回はわたしの魔力で回復させるわ」


 シャーリー流、髪回復術を見せてあげましょう!

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