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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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62 大変だこと

 ミアとケーキ作りを、としたら、館の厨房でやることとなった。なぜに?


「お嬢様を裏にいかせられません」


 とのことでした。


 まあ、裏でやったら館の厨房の沽券にかかわるのでしょう。よくはわからないけど。


 と言うか、侍女のわたしが入っていいのかしら? ミゴリも入れなくちゃならないしね。


「構いません。料理長も喜ぶでしょう」


 料理長? って、そう言えば、誰だったかしら? メイズラさんしか名前を知らないわ。


「シャーリーねえ様、お待たせしました」


 なにか侍女服に似た白い服とエプロンに着替えたミアが戻ってきた。


「それは?」


「蕾の会で使っている実習着なんですよ」


 なにか本格的なことを教えているのね、蕾の会って……。


「この前はパンを作ったんですよ」


 昔はパンを麦粉焼きと言っていたらしいけど、おばあ様がパンを発酵させる酵母を広めてからはパンと呼ばれ、今ではそれが名称となっているわ。


「侯爵令嬢がパン作りを覚えてどうするの?」


 お抱え料理人が何人もいるんだから作る機会すらないでしょうに。いや、今まさに作ろうとしてるけどさ!


「今は嗜みとして料理ができないと笑われるんですよ」


「そ、そうなんだ……」


 時代によって行儀作法は変わると聞いたことはあるけど、料理が令嬢の嗜みになるとはね~。時代は常に変化してるってことかしら?


「ケーキ作りも教えたりするの?」


「はい。簡単なものですけどね」


 あくまでも嗜み程度ってことね。


「では、厨房に参りますか。侍女長様。ミゴリを呼んでくださいませ。一緒に教えますので」


「わかりました。お嬢様。火を使うときはシャルロットに任せてくださいね」


 ん? 火? なんのこと?


「わかってるわよ。料理に魔法は使いません」


 あーなるほど。魔法を使えると、つい料理に使いたくなるわよね。わたしも最初のころはコンロを黒焦げにしたものだわ。フフ。


 笑うとミアが拗ねるので心の中で笑っておいた。


 侍女長様が下女に言付けると、侍女長様の案内で館の厨房へと向かった。


 館の厨房は一階の奥にあり、裏厨房より立派に造られている。


「今思うと、ミアが入るから立派に造られていたのね」


 わざわざミア専用の厨房を造るとは思えないから、侯爵令嬢に相応しく造ったとみるほうが自然ね。


「はい。友人を呼んで作ることもありますから」


 料理も社交と言うわけか。令嬢も大変だこと。


 わたしたちが来ることは伝えられていたのか、厨房の人たちが並んで待っていた。こちらもこちらで大変だこと。


「コルム。厨房を借りるわね」


「はい。ご自由にお使いくださいませ」


「シャーリーねえ様、コルムは覚えてますか?」


「はい。メイズラさんのご子息でしたよね。その節は大変お世話になりました」


 名前は今初めて知ったけど、メイズラさんの息子で厨房を仕切っていた記憶はあるわ。


「いいえ。お世話にしていただいたのはわたしどものほうです。あなた様に美味しいと褒めていただいたことは今でも誇りです」


 そんな大袈裟な。素直に美味しいと思ったから言ったまでなのに。


「こちらこそ美味しい料理をいただけて幸せです。今は侍女としの身ですが、機会があればまた食べさせてください」


「なら、今日は一緒に食べましょうよ。メアリ、よろしいかしら?」


「はい。奥様にそうお伝えします。コルム。よろしくお願いしますね」


「お任せください。腕によりをかけてご用意させていただきます」


 なにか大変なことになったけど、遠慮するほうが失礼だ。にっこり笑って楽しみだと返事をしておいた。


「シャルロット様。遅れて申し訳ありません」


 と、ミゴリがやってきた。


「いいのよ。急でごめんなさいね。あとでわたしからもメイズラさんに謝っておくわ」


「いえ、シャルロット様を優先させろと言われてますので問題ありません」


 ……特別扱いされてるわね、わたしって……。


「そう。では、わたしの手伝いをお願いね」


「はい、わかりました」


 コルムさんに視線を飛ばして、厨房へと入れてもらい、厨房の一角を貸してもらった。


「シャーリーねえ様、なにを作るの?」


「そうね。お土産用にカップケーキでも作りましょうか」


 ちょうどよく型板と型紙も買ってある。お土産にするならちょうどいいでしょう。


「カップケーキですか?」


「ホットケーキみたいなものですか?」


「まあ、似てはいるわね」


 わたしも明確な違いまではわからない。作るのは好きだけど、その歴史にはまったく興味ないからね。


「えーと、材料を」


 そう言えば、勝手にやっらちゃってよろしいのかしら? 


 周りを見回したら、近くにいたわたしと同じ年齢くらいの男性と目が合った。


「シャーリーねえ様。ミローノはわたしの料理の先生です」


「先生?」


 え、いるの? いや、家庭教師や乗馬の先生がいるんだから料理の先生がいても不思議じゃない、のか?


「先生がいるのならわたしは差し出がましいのでは?」


「いえ、お菓子は専門外なのでわたしも学ばせてください」


「シャーリーねえ様。お願いします」


 ミアに言われたら承諾するしかないわね。


「よろしくお願いします」


 ミローノさんに材料を出してもらい、ミアとミゴリに指示を出しながらカップケーキを作った。

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