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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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59 ミゴリ少年

 館の厨房には何度もいったけど、裏厨房はこれが初めて。結構ちゃんとしていた。


「厨房長のメイズラです」


 と、侍女長に紹介された厨房長さんは、白髪のおじさんだった。


「久しぶりですございます、シャーリー様」


「あ、昔、わたしにお菓子を作ってくれたおじさん!」


 白髪になっててすぐには思い出せなかったけど、笑顔は昔のままだった。


「あ、失礼しました。この度、侍女として働くこととなりましたシャルロット・マルディックと申します。よろしくお願い致します」


 いけないいけない。今のわたしは侍女であり新参者。古参の方には敬意を払わないとね。


「アハハ。あのお転婆が変われば変わるものだ。すっかり大人の女性になって」


「そ、その節はお世話になりました!」


 昔を出されると頭を下げるしかない。あの頃は本当にお猿でした。


「メイズラ。シャルロットに厨房を使わせてください。奥様の許可は得ておりますので」


「はい。わかりました」


 年季はメイズラさんが上っぽいけど、立場的には侍女長様が上なのね。


「シャルロット。メイズラの仕事を邪魔しないようにしなさいね」


「はい。わかりました」


「…………」


 なにか言いたげな侍女長様。なんでしょうか?


「いえ、ケーキ、お願いしますね」


 後ろ髪引かれそうな顔で厨房から出ていった。なにをそんなに不安に思ってるのかしらね?


 まあ、侍女長ともなれば心配することは多々あるのでしょう。頑張ってくださいませ。 


「メイズラさん。材料を見せていただけますか?」


「ああ。ミゴリ! ちょっと来い!」


 怒号に近い声を上げた。


 厨房は戦場とか聞いたことあるけど、本当に戦場にいるかのような気迫ね。いや、戦場にいったことないからわからないけど。


「副長、お呼びでしょうか?」


 やって来たのは十四歳くらいの少年だった。


「シャルロットに貯蔵庫を見せてやれ。わかってるな?」


 なにを? と思ったけど、ミゴリ少年にはわかっているようで、ゴクリと唾を飲んだあと、わたしを見て腰を折ったようにお辞儀した。な、なんなの!?


「見習いのミゴリです! よろしくお願いします!」


「は、はい。わたしは、シャルロット・マルディックです。よろしくお願い致します」


 新人とは言え、男爵令嬢と言う立場なのでお辞儀はしない。微笑みで応えた。


「シャルロット様、貯蔵庫に案内します!」


 げ、元気な子ね。


「はい、ありがとうございます」


 緊張したミゴリ少年のあとに続いて貯蔵庫へと向かった。


 まあ、貯蔵庫は厨房の横にあり、金属の扉で仕切られていた。


 この世界には電気で動く冷蔵庫はないので、魔法で動く冷蔵庫を使っている。


 わたしは、館の冷蔵庫しか知らないけど、こちらのほうが新しいわね。つい最近、造られた感じだわ。


「シャルロット様。中は寒いのでこれを着てください」


 と、厚手の外套を渡された。


 冷蔵庫よね? 冷凍庫と聞き間違いした?


 ミゴリ少年も厚手の外套を着たのでわたしも着ることにした。


 金属の扉を開けると、冷気が流れて来る。


 ……確かに冷蔵庫の気温ね。もしかして、気を遣われた感じ……?


 ミゴリ少年の気遣いと理解して、貯蔵庫へと入った。


 貯蔵庫は冷蔵庫を兼ねたものらしく、別に常温でも保管できるものまで入っており、入れないほうがいいのでは? と思うものまで入っていた。


「自由に使っていいのかしら?」


 献立は決まっているはず。勝手に使っては献立が狂うでは?


「一日二回、通いの商人が来ますので問題ありません」


 まあ、結構な人が働いてるしね、一日二回来ないと間に合わないか。


「ケーキを作るので卵、チーズ、牛乳をお願いします」


 おば様は甘いものが好きなので材料は揃っているはず。まあ、チョコレートは異次元屋から買うしかないのでないでしょうけどね。


「はい、わかりました」


 わちしの注文にミゴリ少年が棚から取ってくれ、外へと運んでくれた。


「小麦粉をお願いします」


「はい!」


 どうやらミゴリ少年は、わたしの助手に任命されたみたい。きっと、見所があるからわたしにつけられたのね。


「ミゴリ。あなたは、ケーキを作ったことはある?」


「ありませんが、賄いでパンケーキは作ったことはあります!」


「へ~。賄いを任されているなんて凄いですね」


 確か、賄いは中堅の料理人がするはず。それを見習いに任せるなんて腕がいいのでしょう。おば様やおじ様は実力重視の人たちだからね。


「まだまだです! もっと修行しないと!」


 ふふ。その向上心やよし。気に入ったわ。


「そう。なら、ケーキ作りを教えてあげますね」


 一人前にして毎日ケーキを食べれるようにしましょうか。


 わたしも毎日ケーキ作りをするわけにもいかないしね、わたしの助手としてつけられたのならわたしが教えても問題ないってことだわ。


「はい! よろしくお願いします!」


 ええ、任せなさい。君を立派なお菓子職人にしてあげるわ。


ふと思った。もしかして自分は孫を書いてるか?

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