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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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57/107

57 *侍女長メアリ・カティア*

 はぁ~。


 何度ため息が漏れたことでしょう。いけないと思いつつも自然と漏れてしまい自分ではどうしようもできないわ……。


 姫様──いえ、シャルロットのことは小さい頃から知っている。良いことも悪いこともだ。


 シャルロットは貴族ではないし、この国の者でもない。奥様と繋がりがあるだけです。ですが、その立場は、国王にも匹敵するから厄介なのです。これも良くも悪くも、だ。


 十八歳となり、幼少のときよりは断然落ち着いたようですが、その本質は昔のままでした。


 アルジャード様からの報告でも立ち振舞いは令嬢に見えるが、やってることは幼少時の暴れん坊のままだったとのこと。


 ……災害級の魔物を単独で倒すとか、聖賢者の孫でなければ笑い飛ばしているところだわ……。


 まあ、強いのはわかっていること。分別もあるから恐ろしいと思うことはありません。失礼な言い方をすれば理性的な方なのです。


 ちゃんと悪いことは悪いと言え、弱きを助ける義侠心もあり、礼儀も身についています。


 では、なにが問題かと言えば、優秀すぎるところが超絶問題なのです。


 聖賢者の血なのか、大抵のことは一度で覚え、長年仕えた者の立場がなくなるほどの技術を見せる。シャルロットがそうだとわかっていても矜持がへし折れると言うものです。


 少し早く部屋に迎えにいけば、粗を探すのもバカらしいほど完璧で、どの侍女より輝いていた。


 ……完璧すぎて逸脱しているわ……。


 もっとみすぼらしくしろとも言えず、この完璧を受け入れるしかなかった。ため息を漏らさなかった自分を褒めてやりたかったわ。


 奥様に仕える侍女以外は、朝の仕事はなく、朝食を摂ってからの仕事になる。


 しばらくはわたしの下で働かせることにしたが、正直今も迷っている。シャルロットになにをさせないかを、だ。


 館の仕事は充分に足りている。そこに侍女四人……いえ、十人分に匹敵する者を投入したら館の仕事は乱れに乱れてしまう。下手をしたら瓦解しかねないわ。


「皆さん、朝は少食なんですね」


 そうでした。シャルロットは膨大な魔力を持つ故に大食漢でした。わたしとしたことが失念してたわ。あとで料理長とも話し合わないと。


 しっかり食べなければいけないのに、胃がもたれて半分も食べれなかった。はぁ~。


 朝食後は、館の案内をしますが、これは見て見ぬふりをしなければいけない場所の案内、と言ったほうが正しいでしょう。昔、冒険と称して入ってはならない場所にまで侵入しましたからね……。


 あれから館も改築改造したので立ち入らぬよう注意、はっきりと言わなくとも察してくれるのでそこは助かるわ。まあ、察しすぎるところも問題ですけど。


 ある程度、館を案内し終わり懸念事項を口にしたら、シャルロットからとんでもない返しを受けてしまいました。


「呪い?」


 はあ? なにを言ってるの?


「はい。絵画の裏に呪素を感じました。小さかったので放置しましたが」


「そう言うことは早く言いなさい!」


 本当に察しがよすぎて深読みしてたのね……。


 排除するよう指示を出し、奥様への元へ向かった。


 普段、奥様の朝は遅いですが、シャルロットのことが気がかりのようで、お付きの者から早く起きたと報告を受けました。


 わたしは側近中の側近なので、よほどのことでなければすぐに奥様と会うことができる。


 扉の前にいる侍女に目配せし、奥様の執務室の扉を開けてもらう。


「もう問題を起こしたの?」


 わたしが執務室に入るなり、奥様が安楽椅子から立ち上がった。


 ……奥様、不安だったのですね……。


「いえ、問題を見つけました」


 先ほどのことを奥様に説明します。


「……呪いとはね……」


 侯爵家の館として警備はしっかりしている。館に入るものはすべて確認され、怪しいものはたとえ国王から与えられたものすら弾かれる。なのに、呪いを入れてしまうなど、シャルロットからの言葉でなければ信じられなかったでしょう。


「申し訳ごさいません」


 これはわたしの責任です。どんなお叱りを受けても甘んじて受け入れるしかないことです。


「メアリのせいではないわ。敵が巧妙なだけよ」


 それでもわたしの落ち度。二度はしません。


「いろいろ不安はあったけど、シャー──シャルロットを呼んでよかったわ」


 それには同意です。


「しばらく、シャルロットには館の掃除をさせましょうか?」


 掃除とは館に害あるものの排除、と言うことでしょう。


「はい、それがよろしいかと。あと、館の外を学ばせるのもよいかと思います。館に閉じ込めておくのもシャルロットのためにはなりませんので」


 本音は館の仕事ではシャルロットを抑えられないからだ。


「……そうね。お使いをさせるのもいいわね」


 街での暮らしも学ばせ、一般常識を身につけさせるのが目的でしょう。


「はい。そのように調整します」


 シャルロットを外に出す不安はありますが、閉じ込めておくほうが不安です。お目付け役には申し訳ありませんがね。


 ……あとで、アルジャード様には謝罪しておきましょう……。


 奥様に一礼して、執務室を出ました。


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