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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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56 初仕事

 気持ち、肩を落とした侍女長様に連れられて館を案内してもらう。


 大体の配置は記憶してるけど、その部屋がなにに使うまでは知らなかった。結構、意味があって部屋が多かったのね。


「ここは、下位貴族を招いたときに使う会場です」


 下位、中位、高位と三つも用意しなくちゃならないとか、付き合いも大変なのね。


「侍女や下女が多いわけです。維持するだけで一苦労ですね」


 立場が変わると見方も変わるっては言うけど、確かに客としてここに来たときにはわからなかったわ。


「あなたのそう言う理解力があるところは頼もしいですが、それを口にすることは控えなさい。沈黙が侍女としての美徳ですよ」


「はい。失礼しました」


 いけないいけない。今のわたしは侍女。侍女としての立場で物事を見ないとね。


「はぁ。理解力があるのも問題ね」


 大丈夫ですよ。理解しても沈黙しますから。


 大方の説明が終わると、なぜか秘密のドアを通り地下へとやって来た。


 ……地下があるのは知ってたけど、なにがあるかまではわからなかったのね……。


「ここは、魔法の練習場です」


「なるほど。おばあ様の結界が施されてますね。あまりにも自然だったので気がつくのに時間がかかりました」


 おばあ様は世界最強の聖賢者。その魔法を見破れる者はなかなかいない。よく見ていたわたしでもじっくり見なければ魔法の練習場としか思わないでしょうね。


「ここは、魔法の練習場です。いいですね?」


「はい。魔法の練習場ですね。畏まりました」


 つまり、胸のうちに秘めて、いざと言うときに、ってことですね。了解ですとも。


 地下から今度は屋根裏部屋へ。なにか生活感があった。


「ここは、黒鳥を飼っています」


 黒鳥? あ、ああ、黒衣ってことね。館では黒衣が隠語なのか。


「今は外に放っているのですか?」


 隠し部屋がいくつかあるけど、魔力反応はない。下のおじ様の部屋からも感じないわ。


「……黒鳥は旦那様が飼育しています。見ても手を出してはダメですよ」


 見て見ぬ振りをしろと言うことかしら?


「はい。畏まりました」


 次は外に移動し、噴水へと来た。


「ときどき噴水を掃除する者がいますが、仕事の邪魔をしてはいけませんよ」


 秘密の出入口、ってことか。侯爵ともなるといろいろ隠すものがあるって大変よね。それを守る人たちも、だけど。


「はい。畏まりました」


 そのあと、また館の中に入り、廊下に飾られている絵画の価値や意味などを教えられた。


「館には館の者だけしかわからない合図、言葉があります。それらは決して外に漏らしてはいけません。漏らした場合は親類縁者まで害を与えることになります。注意しなさい」


 わたしに注意、と言うよりはそう言う者がいないか注意しろ、ってことでしょうね。ってことは、黒衣みたいなことをしろってことかな?


「不届き者がいると?」


 おじ様やおば様、侍女長様の目があって不届き者が入る隙などないと思うけど、侍女長様が口にするのだからいると見ていいでしょう。


「……いないと、断言できないのが辛いところです……」


 苦悩を見せると言うことは、不届き者は巧妙と言うことか。


「洗脳魔法とかかけられてる、と言うことかしら?」


 外道魔法として位置付けされてるけど、心を病んだ人を癒すことできる治療魔法でもある。使える者は少なくないでしょうよ。


「……解くことはできるのですか?」


「ちょっと難しいですね。洗脳魔法もいくつかに分けられてますから。強制ならば可能ですが、教育としてされてたら解くことは無理ですね。逆に洗脳魔法をかけたほうが早いです」


 わたしは洗脳魔法に興味がなかったから専門知識はないけど、対抗法はおばあ様から教えられたわ。


「割り出すなら罠に嵌めたほうが早いと思いますよ。偽情報を流して選別して、あとは旦那様に対処していただければよいかと」


 不届き者を割り出すことができたらおじ様がなんとかしてくれるでしょうよ。


「……そう、奥様に伝えておきます……」


 まあ、不届き者の割り出しは侍女長様やおば様に任せればいいでしょう。わたしが口を出すとなにか大きくなりそうだしね。


「あなたは、薬物にも長けてましたわね?」


「それなりには知っております」


 霧の森には毒を持つものが多いし、この世界の動植物を異次元屋で調べたりもしてくれる。その効果もね。


「探し出せますか?」


「よほど珍しいものでなければ。あと、呪いも探し出しておきますか?」


「呪い?」


「はい。絵画の裏に呪素を感じました。小さかったので放置しましたが」


 箪笥の角に小指を当てるくらいの小さなものだったわね。呪いとしては小さいけど、嫌がらせとしたら地味に嫌なものね。


「そう言うことは早く言いなさい!」


 あ、わざと放置していたんじゃなかったんだ。


「申し訳ありません。配慮が足りませんでした」


 ダメね、わたし。まだ思慮が浅はかだったわ。


「シャルロット。仕事です。毒と呪いを排除しなさい」


「畏まりました」


 ここでの初仕事。がんばらないと。


 侍女長様に一礼して、仕事に取りかかった。


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