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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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51/107

51 楽しみましょう

 城を放り出されてから数日。久しぶりにゆったりしたときを過ごしている。


「平和ね」


 天気もいいし風も穏やか。この年齢になってなにもしない幸せと言うものがわかったわ。


「……シャーリー様。本当に大人になられて……」


「もー! それはもう止めてちょうだい。わたしも成長してるのよ」


 おじ様、わたしを抑えるためにアルジャードを寄越したのね。まったく、やりずらくてしょうがないわ……。


 まあ、アルジャードはうるさくない性格だからと納得させて異世界の本を読んでいると、わたしの魔力探知範囲に複数の魔力が入って来た。


「来ましたか?」


 わたしの気配の動きを察知してアルジャードとナターシャが近寄って来た。


「来ましたか?」


「そうみたいね。四、五十人はいそう」


 嵐鳥に挑むには少ない数だけど、後始末するには充分な数でしょうよ。


「対応はお願いね」


「はい。ですが、ロバート様への報告はお願いしますよ」


 それは毎日おば様に報告してある。返信の半分以上はお小言だけどね……。


 しばらくして身なりのよい男性を先頭に兵士さんたちが現れた。


「アルベイグ要塞の兵士です。ナターシャ。シャーリー様の側にいろ」


 わたしはナターシャと下がり、サンビレス王国の兵士さんたちの元に向かった。


「すみません。下手な刺激を与えたくないので纏まってください」


 教育がいいのか、兵士さんたちは素直に従ってくれ、剣も一ヶ所に纏めてくれた。


「ありがとうございます。この礼はさせていただきますね」


「いえ、ガルズ様よりシャーリー様に従えと厳命されておりますのでお気になさらず」


 そつがない人よね。いや、そつがあるから大使に任命されるのね。また再会したいものだわ。ミニオさんを無事送り届けないとならないしね。


「皆さんは呼ばれるまでゆっくりしててください。ミニオさん。お茶をお願いします」


 兵士さんは各自野営の道具を持っており、木の杯どころか鍋まで持っている人もいた。侍女さんたちしか目がいってなかったけど、よくよく見ると兵士さんの道具もおもしろいわよね。


 騒がしいのを横目に夕食を作っていると、アルジャードと体格のよい男性がやって来た。あと、副官らしき男性も。


「シャーリー様。こちら八十六大隊隊長のゴルタル殿です」


「ゴルタルと申します。お見知り置きを」


 昔気質の武人って感じね。見た感じ三十半ばだけどね。


「ザンバドリ侯爵家で侍女をしておりますシャルロット・マルディックです。どうかお見知り置きを」


 アルジャードがどう説明したかわからないけど、一応、侍女なので貴人に対する礼を見せた。


「シャーリー様。嵐鳥をゴルタル殿にお任せする話はつけました。よろしいでしょうか?」


「はい。ゴルタル様にお任せいたします」


 副官らしき男性が鞄から紙を出した。なに?


「受け取りの署名をお願いします」


 サラッと読むと、甲が乙に譲るうんぬんと書かれていた。いつの間に用意してたのかしら?


 まあ、わたしに異存はないので羽根筆を借りて名前を署名した。


「ありがとうございます。嵐鳥は解体して王都に運びます」


 右拳を胸に当てて副官らしき男性と下がった。


「おじ様と違う派閥の人?」


 同じ派閥ならもっと親しみのあるやり取りだったはずだ。


「はい。軍閥派ですね」


 軍閥派、ね。なにか大変そう。わたしはかかわらないようにしようっと。


「とにかく、もう任せていいのよね?」


「はい。あとは軍部にお任せしましょう」


 ふぅ~。やっと解放される。面倒事にならなくて本当によかったわ。


「では、出発は明日にしましょうか。おば様が出してくれた馬車がそろそろ到着しそうだからね」


 おば様が使う馬車はおばあ様が作った特別なもの。一日あれば百里も駆けられるものだ。


 ……まあ、それは非常時だけで、普段はゆっくり走るけどね……。


「はい。サンビレス王国の方々も一緒で?」


「ええ。ガルズ様からお預かりした兵士と侍女ですからね。怪我一つさせずにお返しするわ」


「畏まりました。そのように手配します」


 さすがアルジャード。わたしが言えたことじゃないけど大人になったよね。おじ様が近くに置くのもわかるわ。


「ミニオさん。兵士の方々にお酒を配ってください。今日はゆっくり休んで、出発は明日にしますので」


 付き合ってくれたお礼にお酒でも振舞いましょう。このくらいの役得がないとやってられないでしょうしね。


「シャーリー様、ありがとうございます!」


「ありがとうございます!」


「やったぜ!」


 兵士さんたちが大盛り上がり。やはりお酒の力は偉大ね。わたしはまだお酒のよさはわからないけどね。


「シャーリー様。わたしもお願いします! 最近、ロバート様からいただけないので飢えてたんですよ」


 そりゃ異次元屋から買うお酒は高い。侯爵のおじ様でもそうたくさんは買えないわ。よほどのことがなければ他に与えたりしないでしょうよ。


「安いお酒よ」


 異次元屋で売っているものの中で安いものだ。まあ、こちらの世界では上質になるみたいだけどね。


「安い酒でもいただけるならこれに勝る至福はありません」


 はいはい。口が上手くなったこと。


 五リットルのウイスキーを四本出してあげる。これで一万ポイントなんだから魔石を仕入れて売らないとすぐポイントがなくなっちゃうわ。


「うひょ~! ウイスキーとは豪勢な。ありがとうございます!」


「皆とちゃんと分けるのよ」


 酒飲みどもはアルジャードに任せ、わたしたち女性陣は甘いもので楽しみましょう。


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