47 ガルズたちと別れ
まあ、封印は城に帰ってからとするとして、今は嵐鳥をなんとかしないとね。
嵐鳥は準災害魔物。誰にも知られずここまで来れるはずもないし、この国の監視が緩いとも思えない。きっと追跡隊とかいるかもしれないわ。
「シャーリー嬢!」
どうするかと考えていたらガルズ様までやって来てしまった。
まったく、身分があるのだから来ちゃダメですよ。なにかあったらカルビラス王国の責任になるんだからさ。
「た、倒したのかね?」
「はい。倒しちゃいましたね」
わたしが、と言うより魔銃の性能が、ですけど。
「しかし、嵐鳥に襲われるとは……」
「おそらく、わたしの魔力に反応したのでしょう。災害級の魔物は縄張り意識が高いですからね」
そもそも災害級の魔物は縄張りから滅多に動いたりしない。一生会わない人のほうが多いわ。
「ガルズ様。速やかに出発してください。巻き込まれたら時間をとられるかと思いますから」
嵐鳥をこのままにしておくわけにもいかないし、ガルズ様たちに付き合わせるのも悪い。
「だが──」
「ここで時間をとられたら王都にいくのがさらに遅れますよ」
ただでさえ遅れている。さらに遅れたら国の威信にもかかわるんじゃないですか?
「これまでありがとうございました。ザンバドリ侯爵様を通してお礼に参ります」
優雅に一礼する。おじ様の名前を出せば引き下がらずにはいられないでしょうよ。
「では、兵士を何人か置いていかせて欲しい。さすがにシャーリー嬢を一人で残したとあってはザンバドリ侯爵に申し訳ないからな」
「はい。ありがとうございます」
さすがに放置はできないでしょうから了承した。
「また王都で」
「はい。皆様と再会できる日を楽しみにしております」
三人の兵士さんとなぜかミニオさんとで見送った。え?
「男性だけを残すわけにはいきません。シャーリー様の名を汚すわけにはいきませんので」
わたしの名を汚す? なぜに? 意味がわからないのですけど……。
「女性を男性と一緒にいさせられません」
ん? ん? 男性と一緒にいさせられない?
「──あっ! はいはい! そう言うことですね!」
わたしには関係ないから忘れてたけど、そんな作法がありましたね。貴族社会に。密室でもないからすぐにわからなかったわ。
「シャーリー様は、もっと身を案じたほうがよろしいのでは?」
「ふふ。わたしを害する者がいたら会ってみたいものですね」
この世界にも人外の域に入った者はいるわ。でも、そう言う人は滅多なことでは出て来ない。災害級の魔物より遭遇率は低いわ。
「……シャーリー様……」
「あ、すみません。怖がらせてしまいましたか? わたしは、敵対しなければなにもしませんし、平和が一番だと思ってますから」
戦いとか汚れることはしたくないわ。血とか臭くてたまらないもの。
……昔は解体とか平気だったのに、今は進んではやりたくないわ……。
「兵士さんたちは枯れ枝を集めてください。カルビラス王国の者がすぐに来るかわかりませんから野営の準備をしておきましょう」
そうすぐに来るとは思わないけど、遅れることもないでしょう。嵐鳥が通れば大騒ぎになるでしょうからぬ。
「ミニオさんは、わたしから離れないでください。嵐鳥の臭いに魔物がよって来るかも知れませんから」
魔物は死肉に敏感だ。街道沿いでもよって来るでしょうよ。
見た感じ、この辺は牧草地のようだけど、血に酔った魔物は関係なしにやって来て、見境なしに食い散らかすでしょうね。
「は、はい! 側にいます!」
「ミニオさんのことは傷一つつけず奥様の元に帰すとお約束します。安心してわたしの側にいてください」
傷でもつけたら奥様に申し訳が立たないし、女性を傷つけるなどわたしが許さない。女性の肌は万金にも勝る価値があるのだからね。
「ふふ。シャーリー様は騎士のように頼もしいですね」
「そうであれば誇らしいです。わたし、昔は騎士に憧れていたんですよ」
今はなる気はないけど、昔のわたしはとにかくお転婆だった。バカなことばかりしていた。まったく、わたしの恥ずかしい歴史だわ。
「しかし、嵐鳥が人の世界に出て来るとはなにかあったのかしら?」
霧の森にも嵐鳥は住んでいるけど、知性と理性を持った嵐鳥だ。外に出るにしても人の目が届かない高度で飛ぶ。こんな低いところなんて飛ぶはずもないわ。
「羽根の艶からして若鳥かしら? いい色してるわね」
災害級の魔物の素材は高額で取引され、嵐鳥の羽根は飾り羽根として使われるときもある。これだけ艶がいいなら引く手数多ね。
誰も見てないならいただきたいけど、目撃されてたらそれもできない。一応、この国の者としては国に渡すのが筋でしょう。
腐敗しないよう嵐鳥に結界を張る。これなら一月は問題ないわ。
「ミニオさん。わたしたちは食事の用意でもしましょうか。カルビラス王国の者が来てからだと忙しくなるでしょうし」
「はい。ですが、道具や食材が……」
「問題ありませんよ」
ミニオさんがわたしの鞄を持って来てくれましたからね。
ほんと、できる侍女を残していただきありがとうございました。




