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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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46 魔銃とは?

 奥様を完璧──とまではいかなくても満足するくらいには仕上げられた。


「どうかしら?」


 自分で細かいところまで確認した奥様は、嬉しそうにガルズ様に尋ねた。


「ああ。とっても綺麗だよ」


 お世辞ではなく心からの言葉だとわかるくらい笑顔が輝いていた。


 見詰め合う二人にわたしは満足げに頷いてしまった。わたしの仕事を十二分に認められたと同義だもの。


 と、扉が叩かれた。


「ガルズ様。お時間です」


 時間? なんの?


「わかった。あとは頼んだ」


 そうガルズ様が言って奥様と騎士様を引き連れて部屋を出ていった。またなにかあるのかしら? 


「シャーリー様。これから出発します。荷物を纏めてください」


 そう言うのは早く言って欲しかったです。


 まあ、わたしは同乗者的立場。流れに身を任せましょう。


 一度、借りた部屋に戻り鞄を持ち、ミニオさんのあとに続いて外へと向かった。


 馬車は出発準備が調っており、なにか小綺麗になった兵士さんたちが馬上にいた。


 わたしたちも馬車に乗り込み、しばし待っているとラッパの音が鳴り響いた。


「出発します」


 御者さんの声で馬車が出発した。


 窓から見える光景が流れ、城の外に出た。


「表街道で旦那様たちと合流して次の町へ向かいます」


 と、ミニーさんが教えてくれた。


 ……町を見る暇もなかったわね……。


 ちょっと残念だけど、観光しているわけじゃないのだからしかたがないか。また今度にしましょう。


 あ、そう言えば、黒衣くろこやタダールン商会からの接触はなかったわね? なにかあったのかしら?


 まあ、なにかいろいろあるんでしょうと納得して忘れることにした。


 馬車は町を出て街道を進む。窓の外は田畑が広がり、農夫たちが一生懸命働いている。


 ……平和ね……。


 なんて思ったのが悪かったのかな? わたしの魔力感知に巨大な──いや、わたしから見たら大したことないけど、一般人には脅威になるくらいの魔力が物凄く速さでこちらに近づいて来るのを感じ取れた。


「はぁ~」


 強者は災いを呼びよせる。本人の意思とは関係なく。そう、よくおばあ様が言ってたっけ……。


 おばあ様からしたらわたしなんて微々たるものでしょうが、それでも強者の域に入る。それに合わせた災いはやってきた来るでしょう。


「シャーリー様?」


「大きな魔力が近づいて来ます。皆様にご報告をお願いします」


 信じてもらえるかな? と思う暇なくミニーさんが胸元からなにかを出して口につけた。


 ──ピィィィィィィッ!


 それは笛のようで、耳を塞ぐほどの音を馬車内に響き渡らせた。な、なに!?


 馬車の速度が弱まり、そして停車した。お見事です。


「皆さんは中にいてください。魔法で安全にしますので」


 馬車の外に出て馬車に結界を張った。並大抵の力では破られないでしょう。まあ、破ったものがいないのでどこまで耐えられるかはわからないけどね。


「シャーリー嬢! どうかなされましたか?」


 ルイドフィー様たち騎士様が駆けよって来た。


「鳥の魔物が襲って来ます」


「どちらからですか?」


 ルイドフィー様もわたしの言葉を疑ったりはせず、冷静に尋ねてきた。


「あちらです。あと少しで見えるかと。ルイドフィー様たちはガルズ様たちをお守りください。わたしが退治しますので」


「シャーリー嬢。我らは騎士。女性に守られたとあっては騎士の名折れ。我らが相手します」


 まあ、騎士の立場としてはそう言うしかないわね。


「タダの侍女ならお任せするのですが、生憎とタダの侍女ではありません。それに、魔物はわたしの魔力につられたのだと思います。その責任は果たしませんと」


 異次元屋で買った魔銃をホルスターから抜き、視界におさまった鳥の魔物──嵐鳥に向ける。


「あ、嵐鳥っ!?」


 視力のいい人がいたようで、嵐鳥を認識できたようだ。


「嵐鳥だと?! 本当が!?」


「間違いありません! 嵐鳥です!」


 ──嵐鳥。準災害級に分類される魔物とされ、ちょっとした町なら一時間もしないで破壊してしまうらしいわ。


 ……昔、一度だけ見たことあるけど、魔物の域を出てるよね……。


 嵐鳥にも個体差はあるけど、今回のは中くらいかしら? まあ、それでも家四軒くらいの大きさっぽいけどね。


「シャーリー嬢!」


「問題ありません」


 おばあ様のように爆裂魔法で骨まで残らない、とまではいかないまでもあのくらいなら許容範囲内だわ。それに、魔銃の試し撃ちもしたかったしね。


 魔銃に魔力を込め、トリガーと言うのを引く。


 ──ピシッ。


 と言う音がしたと思ったら、青白い線が嵐鳥に向けて駆けていった。


 一瞬にして青白い線は嵐鳥を貫いた。はあ?


 いやいやいやいや! はぁあ!? 嵐鳥を貫いたですって!! 準災害級の魔物よ?! そんな阿保な!!


 わたしの全力の爆裂魔法なら倒せるかも知れないけど、魔銃に込めた魔力は三十分の一にも満たないものよ。それで嵐鳥を貫くなんてどんな構造になってるのよこの魔銃は??


 ……さすが異世界で作られたもの。威力がとんでもないわ……。


 と言うか、完全に護身用じゃないよね? 攻城兵器と言われても納得いくものでしょう。


「うん。封印しよう」


 そりゃ、異次元屋で百年も埃を被ってるはずよ。わたしだって百年くらい倉庫に放り込んでおきたいわ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 某お兄様専用銃のような威力ですね。「さすじじょ」といったところでしうか。
[一言] 封印するんかいW
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