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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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38 我が道をいくわたし

 ガルズ様や奥様が戻って来るまで時間があると言うので、異次元屋に剃刀とハサミを通販した。


 わたしは見て買い物したい主義だけど、決まったものは通販──スマホで買い物しているわ。


「やっぱり高いわ~」


 男性用剃刀と女性用剃刀、ハサミ二つ、眉毛用ハサミ、手動バリカン、専用の泡石鹸、それらを入れるケース。合わせて八万ポイントが飛んでしまった。はぁ~。


「早く同じくらいの文化になって欲しいわ」


 まあ、負の文化も生まれてしまうことは理解してるけど、それが発展と言うもの。あると知っているだけ進んだ世界よりは恵まれている。なるべく負の文化が生まれないよう利用させていただきます。


 準備と偽って借りた部屋から皆さんがいる控室へと向かった。


「奥様たちはまだお戻りならないので?」


 通販していたのは三十分くらい。なにかしらの反応はあると思うのだけれど。


「もう少しで下がって来るそうです」


 侍女って本当に凄い人たちよね。いったいどう言う連絡方法をとってるのかしら。謎だわ。


「同行相手に手伝わせて申し訳ありません」


 休憩しましょうと席を勧められてお茶をもらうと、ミニーさんにそんなことを言われた。


「いえいえ。他家の仕事を見れるなんてなかなかありません。見れてとても勉強になりますわ。逆に他家の侍女が口出しして申し訳ないくらいです」


 おば様との関係を鑑みて自由にさせてくれてるのでしょうけど、それでも自由にやらせてもらってるな~と思えるくらい自由にさせてもらってるわ。


 申し訳ないと言いながら勝手に紅茶を淹れて皆さんに配るわたし、自由人よね~。


「なんだかシャーリー様に乗っ取られた感じですね」


 なんて冗談を口にするミニオさんにドキッとする。


 他家どころか外国の、それも大使の侍女の仕事を奪うのはさすがにやりすぎなみたい。これ、おば様に怒られる案件かも……。


「わたしの悪い癖ですね。侯爵夫人からも協調性がないとよく怒られます」


 あなたは我が道をいきすぎると。自分では興味のあることを追求してるだけなんだけどね……。


「だから単独で行動してるんですか?」


「え、ええ、まあ、そんな感じですね。オホホ」


 なんだか侍女仕事に不安になってきたわね。わたし、ちゃんと集団行動できるのかしら……?


 まあ、考えてもしょうがないか。なるようになる。流れるままに生きましょう、よ。


 何気ないおしゃべりをしながら休憩していると、どこからか鈴の音が流れて来た。なに?


「──奥様たちが戻られるわ!」


 ミニーさん以下、二人が席を立った。鈴の音で知らせる仕組みなの?


 バタバタと騒がしくなり、ハールメイヤ伯爵家側の侍女さんもどこからかワラワラと出て来た。


 ……侍女、どれだけいるのよ……?


 ハールメイヤ伯爵家の建物の大きさからして侍女の数が多いような気がする。どこからか応援を呼んだのかしら?


 皆さんの連携を邪魔しちゃ悪いと、わたしはカップなどを片付け、席に座って待つことにする。


 しばらくしてミニオさんだけが戻って来た。


「シャーリー様。お手伝い願いますか?」


 笑顔でもちろんですと答えてミニオさんのあとに続いて控室を出た。


 部屋の外にはハールメイヤ伯爵家側の侍女さんがいて、わたしたちのあとに続いた。なに?


 ミニオさんは、表に出て三階へと上がった。


 三階にはカルビラス王国側の騎士様が等間隔に並んでいる。厳重だこと。


 ガルズ様たちがいるだろう部屋に入ると、中はサンビレス王国側の騎士様が壁側に立っている。なにを警戒してるのかしら?


「シャーリー嬢、忙しくさせて申し訳ありません」


「いいえ。なにかしてるほうが落ち着きますから、お手伝いできることがあればなんでもおっしゃってください」


 ただ座ってるのも暇ですしね。


「そう言ってもらえると助かります」


「旦那様。時間もないのでシャーリー嬢にお髭を整えていただきましょう」


「あ、ああ。シャーリー嬢、よろしいのか?」


「はい。お任せください」


 きっちりばっちり仕上げてみせますよ。


 ガルズ様はなにか複雑そうな表情をするけど、断ることはしないので、ハールメイヤ伯爵家側の侍女さんが用意してくれた安楽椅子に座ってもらった。


 物置台に異次元屋で買った道具を並べる。


 フフ。新しい道具を使うってなぜか心が躍るわよね。しかも、あちらの刃物は芸術性があって切れ味が素晴らしいと来ている。この輝きを見たら試したくなるわ~。


「せっかくですから髪も整えましょうか」


 散髪用ハサミの切れ味を試したいので。と、わたしの私情全開で申し訳ありませんが、この輝きの前では自制が利かないのです。


「あ、ああ。よろしく頼むよ」


「はい。お任せください」


 と、満面の笑みで答えた。

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