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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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30 マッサージ

 う~ん。汚れが落ちないわね~。


 異世界の知識で泡と振動で汚れが落ちるはずなのに、二度やっても綺麗にならない。やり方が間違ってるのかしら?


「シャーリー様」


 と、ナタリーさんに呼ばれて我を取り戻した。いけないいけない。奥様のことを忘れてたわ。


「申し訳ありません。火照りが消えたらこちらに入ってください」


 バスローブを脱がせ、浸るようのお湯玉へと入れた。


「のぼせる前に声をかけてくださいね」


 まあ、立った状態で長いこと入ってられないでしょうが、念のために注意しておかないとね。


「ナタリーさん。奥様がのぼせないよう見ててくださいね」


 ナタリーさんに任せ、侍女さんを見る。


 今はササラさんがお湯玉に入り、タリオラさんがブラシで背中を洗ってあげていた。


「ミニオさん。これでミニーさんの髪を洗ってくださいな」


 新たにお湯玉を作り出す。侍女さんの髪も綺麗にしないとね。


 洗い終わったら声をかけてくれるよう頼み、三度目の洗濯に挑戦する。


 振動をさらに細かくしていくと、黄ばみ(なにかは察してください)が落ち始めた。この振動か。うん。覚えた。


 黄ばみが完全に落ちたらお湯を異空間に排出。脱水のために玉を回転させて熱風を送り込んだ。おっと。逃げ口も作らないとダメか。


 乾燥したら結果を解いて洗濯物を畳んで卓に置き、次に取りかかる。


 振動を覚えたので次の洗濯物は一回で綺麗にできた。


 ふふ。一発で綺麗になると気持ちいいわ~。


 一回覚えればあとは他にも意識を向けられるので、奥様の様子を見ることにした。


「湯加減はいかがですか?」


「……とってもいいわ……」


 とろけたような表情の奥様。お湯に浸かる抵抗はないようね。


「お風呂に慣れているんですね。毎日入る習慣はないと聞きましたが?」


「カルビラス王国にいくに当たってお風呂に入る習慣をつけたんです。貴族の間ではお風呂を造るのが流行っていると聞いたわ」


 あー。前におば様がそんなこと言ってたわね。


「そのようですね。あちらこちらで改築が行われて職人が不足していると聞いたことがあります」


 バスタブを設置して終わりじゃない。水の流れを造り、お湯を沸かす釜戸を築き、排水をしなければならない。器ができたら人を配置しなくちゃならず、お風呂好景気に沸いている(お風呂だけに?)そうよ。


「カルビラス王国は発展しているのね」


「お風呂に関しては進んでいますね。お風呂に入ると綺麗になれると噂になっているそうですから」


「そうなの?」


「毎日入っている人と入ってない人を比べると一目瞭然ですね。髪も毎日洗うことで輝きも違いますし」


 わたしの髪がいい証拠、とばかりに髪をすいてみせた。


「ただまあ、本当に輝かすには石鹸や髪専用の薬液を必要としますけど」


 こちらの世界のもので作ったものだから異次元屋のものには落ちるけど、安く手に入れられるわ。


「それらのものはわたしでも手に入れることはできるかしら?」


「おそらく、手に入れられると思いますよ。サンビレス王国の商人に尋ねてみるとよろしいかと。前に卸していると聞いたことがありますから」


 わたしは自分で作るから買ったことはない。流通していることもおば様とのおしゃべりで聞いた程度なのよね。


「わたしが持っているものをお譲りしてもいいのですが、肌に合わないとかぶれるときがあるのでお勧めはできませんね」


 まあ、使っておいて今さらなのだけれど、合わないときはすぐに反応が出る。三回使って反応がないのだから大丈夫でしょう。たぶん。


「次からは蜂蜜をお湯で溶かしたもので洗うといいですよ。あ、やるときは髪質や肌の具合で蜂蜜の量を変えてくださいね」


 エプロンの左ポケットから蜂蜜の瓶を出してナタリーさんに渡した。


「髪は強く洗うのではなく優しくほぐすように。頭皮は揉むように、です」


 わたしもたまにしかやらないから量がどのくらいとは言えないけど、やり方は教えておく。


「頬が赤くなって来ましたね。そろそろ出ましょうか」


 お湯玉を操り、奥様を出した。


「ナタリーさんは奥様の体を拭いてください。わたしは髪をやりますので」


 バスタオルをつかみ、奥様の髪を包んで水分を取る。


 ある程度水分が取れたら暖かい風を当てながらブラシをかける。


「少し、髪が傷んでますね。油以外なにかつけてますか?」


 まるでキューティクルがないわ。


「いえ、なにもつけてないわ」


「なら、回復させますね」


 髪が悪くなったとき考えた回復魔法を髪にかけた。


「こんなものかしらね?」


 あまり強くやりすぎると髪が抜けちゃうこともある。他人様の髪を回復するのは慎重に行わないとね。


「……凄い。サラサラだわ……」


 自分の髪を触る奥様が驚いている。


「わたしとしては納得できないんですけどね」


 何日かやらないと他人様の髪質は見抜けないわね~。


「では、体をマッサージしますね」


「マッサージとは?」


 あ、マッサージってなかったっけ。異世界用語に慣れすぎるとつい出ちゃうわよね。


「回復魔法の種類です」


 と、誤魔化しておこう。回復魔法も一般的じゃないしね。


 奥様をベッドにうつ伏せに寝かせてマッサージを開始した。


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