27 女子会?
昼は小休憩で終わってしまいました。え、昼食は?
「日程が遅れているので、国境の町まで急ぎます」
とのことだった。旅の厳しさを毎日のように痛感させられます……。
お昼から休むことなく馬車は走り続け、夕方に国境の町へと到着した。こう言うのを強行軍って言うのね。
……トイレを我慢しても先を急ぐとか、奥様や侍女さんたちは大変ね……。
水分補給もしないから侍女さんたちの唇がカサカサ。これじゃ旅が終わる頃には髪も肌もカサカサになるわね。
町に入り、しばらく進むと、馬車が停止した。
「荷物は任せます」
そう言ってナタリーさんが馬車を出ていった。
「ナタリーさん、大丈夫かしら?」
回復魔法をかけたとは言え、精神までは回復されない。精神は自然に休ませてこそ回復するものなのよ。
「奥様の世話はわたしたちではできませんから」
なぜに?
「ナタリー様は上級侍女で、わたしたちは下級侍女なの」
なんでもナタリーさんも男爵家の生まれで、ミニオさんたちは商家の生まれだとのこと。侍女に上級とか下級とかあるんだ。初めて知ったわ。
しかし、奥様の世話を一人でって大変じゃない? 世話くらい上級とか下級とか関係ないと思うんだけどな~。まあ、貴族社会に口を出しても面倒なだけ。そうなんだ~と納得しておきましょう。
「ここは、どこなんですか?」
なにか物々しい造りのところね。石組みの砦みたいだわ。
「サンビレス王国の領事館です」
領事館? って、なんだったかしら? 前に聞いたような気はするけど、なんだったか思い出せないわ。
馬車から荷物は降ろさないみたいで、手ぶらで領事館へと入った。わたしは、鞄を持って入りました。
「シャーリー嬢。バタバタして申し訳ない。部屋は用意してあるのでゆっくり休んでください」
ガルズ様はゆっくりできないようで、そう言うと、どこかへといってしまった。
領事館の侍女さんと思われる女性がすぐに来て、部屋と案内された。
「なんだかな~」
わたしの立場がはっきりしないからのか、扱いもはっきりしない。わたしもどう動いていいかわからないわ……。
しょうがないので旅の服から部屋着へと着替え、お湯を沸かしてニケ茶をいただく。あー美味しい。
夕食ってどうなるのかな~? と、考えながらニケ茶を飲んでいると、部屋のドアがノックされた。
「は~い、どうぞ~」
ドアが開き、ミニオさんが現れた。
「シャーリー様。夕食です」
と言うので部屋を出て、ミニオさんに案内されたところは質素な部屋で、侍女さんたちがいた。
「すみません。こんな粗末な部屋で」
「いえ、全然構いませんよ。こうして雨風を凌げるんですから」
部屋も冒険者相手の宿屋より断然よかった。文句を言ったら罰が当たるわ。
「あと、いろいろと忙しいみたいで食事も粗末で申し訳ありません」
円卓を見れば野菜のスープとパンだけ。確かに粗末ね……。
「なら、少し足しましょうか」
旅はまだ続く。しっかり体力をつけないと途中で脱落してしまうわ。
「男爵様のところで作っておいてよかったです」
大したものは作れなかったけど、ダボアさんの御厚意で腐り──じゃなくて、熟成されたお肉(なんのお肉かは聞いてません)で肉団子を大量に作ったのです。
甘辛仕立てにしたのでパンに挟んで食べると、結構食べ応えがあるものになるでしょうよ。
「あと、トマトを切って砂糖をかけたものをっと」
これで夕食が華やかになったわ。
「……シャーリー様は、物語に出て来る魔法使いみたいですね……」
「ふふ。わたしなんてまだまだ未熟な魔法使いですよ」
物語に出て来る魔法使いはおばあ様だ。人をカエルに変えちゃったり、カボチャを馬車にしちゃったりと、もうメチャクチャな人だったわ。
……カボチャをなぜ馬車にしたかは未だに意味がわからないけどね……。
「魔法使いなのは否定しないんですね」
「まあ、魔法しか取り柄がないので」
おばあ様にいろいろ仕込まれたけど、それが取り柄かと言われたら首を傾げるしかないわ。積み重ねれば大抵の人はできるんだからね。
「さあ、夕食にしましょう。お昼を抜いたからお腹ペコペコです」
侍女さんたちに仕事がないのなら夕食を楽しみましょう。
皆さんもお昼がなかったので、出されたものをすべて平らげてしまいました。
お腹が満ちたお陰か、皆さんとの壁が少し低くなり、馬車内ではできなかったおしゃべりができた。
これが女子会と言うものかしら? なにか楽しいわ。うふふ。




