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わたしはタダの侍女ではありません  作者: タカハシあん


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17 お風呂

 お腹が膨れたので一旦部屋へと戻った。


 本当なら片付けもしたかったのだけれど、片付けは見習いさんの仕事とかで、厨房に入れてもらえなかったのだ。


「外は大変なのね」


 料理人には下積み期間があるのは聞いてたけど、料理をするまで何年もかかるとか、わたしにはちょっと理解できないわね。上手くなるには作るしかないと思うんだけどな~。


 まあ、そこにはそこのやり方や決まりがある。立ち寄っただけのわたしが口を出すことじゃないわね。


「さて。お酒を買いにいく前に買ったものを整理しますか」


 ライヤード商会で買ったものをまず並べ……るけど、こうして見るとなかなかの量よね。本当に旅に必要だったかしら……?


 旅のほとんどは馬車の中のはず。わたしがどの馬車に乗せてもらうかわからないけど、大半は座ってるしかないわよね? お茶をするのもできないか。


 おば様の馬車なら装備が充実してるからこの量でも馬車に入れられるんだけどな~。


「いっそのこと馬車を改造しちゃう?」


 いや、出発は明日だから無理か。時間がなさすぎるわ。


「う~ん。やっぱり召喚しかないかな~」


 召喚には何種類かあり、わたしがよく使うのはある場所から引き寄せるものだ。けど、それには保管しておく場所が必要で、追い出された身としては……あ。


「……わたしってバカすぎる……」


 思わず頭を抱えて悶絶してしまった。


「そうよ。なに忘れてるのよ。物置場から取り寄せられるじゃないのよ!」


 城は広い。広い故に持ち物を運ぶのは大変だし、取りにいくのも面倒臭い。たった一個忘れたがために一時間も歩く悔しさ。行き場のない怒りをどこにぶつけていいかわからなかったわ。


「わたしはドジっ娘か」


 おっちょこちょいなところがあるのは認めるけど、ドジ娘ではない、と信じたい。はぁ~。もっとしっかりしないと。


「物置、なにを置いてたかしら?」


 物置場、と言っても、いつも使うもの、ときどき使うもの、重要なものの三ヶ所に分けてある。


 いつも使うものと重要なものは覚えているけど、ときどき使うものは記憶が曖昧なのよね。


「って、今はそんなことどうでもいいのよ! 買ったものをなんとかしなさいよ!」


 まったくもー! 追い出されてから調子が狂ってばかりだわ!


「──いや、落ち着きなさい、わたし。慌てたところで事態は変わらないんだから!」


 とりあえず、個別封印魔法陣を描き、茶器類、布類、食料を封印。残りを鞄に入れた。あと、旅用の服のポケットに収納魔法をかけた。


「ついでだから水の指輪と火の指輪を召喚しておきますか」


 重要なものを置いておく物置場には、外に出してはいけない魔法の指輪とかも置いてある。その中で外に出してもいい魔法の指輪を召喚する。


「旅なら火と水は必要でしょう」


 ざっくりした想像でしかないけど、焚き火とか食事とかに火と水は必須でしょう。


 火の指輪を右手の中指に。水の指輪は左の中指に嵌めた。


「あーお風呂入りたい」


 城なら一日中入れるのにな~。外って本当に不便だわ。


「……これじゃ明日まで用意するのは無理っぽいわね……」


 城の外は不便なだけじゃなく面倒でもあるのね。はぁ~。


 部屋を出ると、ミナリーさんと年配の侍女さんがいた。


 ……ずっと待ってたのかしら……? 


「お出かけになられますか?」


「いえ。時間もないので諦めます。すみませんが、湯浴みをしたいのでお風呂をお貸し願いますか?」


 お菓子作りにお酒が欲しかったけど、今は汗を流したい。髪も洗いたい。下着を交換したいわ。


「では、すぐに湯を沸かします」


「あ、お湯は大丈夫ですよ。場所さえ貸していただければ」


 不思議そうな顔をしたが、なぜとは問わず、年配の侍女さんがお風呂場へと案内してくれた。あ、お風呂道具を用意してからね。


 男爵家のお風呂は……小さかった。造りからして、どこかで湯を沸かして湯箱に移すみたいね。


「この地域はお風呂に入らないのですか?」


 おばあ様の影響か、カルビラス王国ではお風呂の文化が根づき始めており、貴族の間では毎日入っているとおば様が言ってたわ。


「いえ、三日に一度は入ります」


 と、年配の侍女さん。感じからして三日に一度はこまめに入ってるほうみたいね。


「では、使わせていただきますね」


 水の指輪から湯箱に入るくらいの水球を作り出し、火の指輪から拳大の火球を水球に突っ込ませる。


 一瞬にしてお湯と……ちょっと火が強すぎたかしら? 


 まあ、足せばいいか。たくさんあって困ることないしね。


「……一緒に入ります?」


 服を脱ごうとして、未だにいる二人に尋ねてみる。


 同性に裸を見られて恥ずかしい年齢でもないし、お湯はたくさんある。狭いけど、三人で入るには問題ないでしょうしね。


「あ、いえ。申し訳ありませんでした。背中を流しますか?」


「いえ、大丈夫ですよ」


 異次元屋で背中を洗うブラシを買ってある。ボディソープやシャンプーもね。


 二人が下がったので、服を脱いで体や髪をしっかりと洗った。


「ボディソープはいいけど、シャンプーは自作のがいいわね」


 汚れは落ちたけど、なんだか艶がいまいちだわ。


 リュージさんの話では髪質が違うのだろうとのこと。わたしの髪の色をした者はあちらの世界にいないそうだからね。


「おば様のところにいったら作らないとな~」


 旅の間は異次元屋のシャンプーで我慢するしかないわね。蜂蜜でトリートメントすれば髪は守られるでしょう。


 いい湯加減になった湯箱に入り、ゆったりまったり溜まりに溜まった疲れを癒した。


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