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100 ミリエイラ商会本店

 いつもの時間に起きて、いつものように身嗜み。さあ、今日もがんばりましょう! ってところでふと思う。


 あれ? わたしの役目ってなにかしら?


 侍女にはそれぞれ役目がある。まあ、侍女の頂点は侍女長で、いくつかの役目にわかれて行動してるっぽい。


 そもそもとして、館の命令系統がどうなってるかもわからない。と言うか、未だに侍女名簿ができてないわ。


「ここにきて記憶があるのは入力とお風呂改築だけだわ」


 侍女とは? なんて思うのもバカらしくなってきたわね。


 朝食を摂り、このあと侍女長様のところにいけばいいのかしら? と考えてたら十六、七歳の侍女がやってきた。


 見た記憶はある。確か、食堂を担当している侍女のはずだ。名前は知らないけどね。


「シャルロット様。ライネーリと申します」


「あ、マイナ家の」


 昨日、奥様が言っていたマイナ家の男爵令嬢か。


「はい。侍女長様より今日のお供を言いつけられました」


「ライネーリ様が? マリッタはお留守番なの?」


 わたしの付き人的なマリッタは横にいる。お風呂改築のときは館の掃除にいってたらしいけどね。


「いえ。シャルロット様に付き合うよう侍女長様から指示を受けております」


 そうなの? まあ、わたしを一人にできない侍女長様のお目付けなんでしょうよ。


「わかりました。いつ出かけます?」


「用意が調いましたら館前にきてください。ミリャーダの店に向かう前にミリエイラ商会の本店に向かいます」


 ミリエイラ商会? マリッタの家に? またなぜに?


「ミリャーダの店は貴族でも上位の方が利用する店ですので、店に合った衣装にしなければなりません」


 やれやれ。服を買いにいくのに服を買わなくちゃならないとはなんの冗談かしらね? 貴族とはほとほと面倒だわ……。


 まあ、わたしに拒否権はないのだから素直に従うのみ。お出かけ用の服に着替え、館の前に向かった。


 ライネーリはすでにきており、護衛にか、アルジャードとナタージャ(だったかしら?)が立っていた。


「シャーリー様。今日はシャルロット・マルディック男爵令嬢です。それを忘れないでください」


 アルジャードからの念押し、いや、ダメ押しかしら? 昔のわたしを知るだけに信用がない。うん、まあ、しょうがないんだけどね……。


「わかりました。護衛、よろしくね」


「ハッ。お任せください」


 アルジャードが一礼し、馬車のドアを開けてくれた。


 まずわたしが乗り込み、ライネーリ、マリッタと続いた。


 護衛の二人は馬に跨がったみたいで、ナタージャが馬車の前に。アルジャードは後ろについた。


「出発します」


 御者の言葉に馬車が発車。ミリエイラ商会の本店へ向かった。


 外の光景を眺めることしかできないので大人しく流れる光景を眺めていたら、黒衣くろこではない影の者がいた。


 ……どこの手の者かしら……?


 襲ってくる気配はなく、ただこちらの様子を窺っているだけだった。ただ、見張られてるだけみたいね。


 魔力の糸を窓からから出してアルジャードへと繋いだ。


 ──アルジャード。外にいる影の者ってどこのかわかる?


『──姫様ですか!?』


 ──そうよ。魔力の糸をあなたに繋げて会話してるわ。影の者が何人かついてきてるわ。排除する?


『止めてください。どこの手ともわからないのですから。そのままなにもしないでミリエイラ商会へ向かってください。なにもしないでください』


 大事なことだから二度も注意されてしまった。わたし、そんなに信用ならないかしら?


 ──わかったわ。大人しくしてる。


 魔力の糸を外し、流れる光景を見て過ごした。


 三十分ほど馬車は走り、商業区みたいなところに入った。


「王都の中心部です。ここにはたくさんの商会が商売をしております」


 外に興味を持ったわたしにマリッタが教えてくれた。


「相変わらず活気に満ちたところね」


「きたことがあるので?」


 ずっと黙っていたライネーリが口を開いた。


「昔ね。子供の頃だから大した記憶は残ってないけれど」


 あの頃はそれほど興味はなく、ただおばあ様に付き添ってきただけ。なにしにきたのかも忘れちゃったわ。


 やがて馬車はミリエイラ商会の本店とやらに到着。アルジャードにドアを開けられ、最後に出る。


「いらっしゃいませ、シャルロット様。ミリエイラ商会の主、マイズ・ミリエイラと申します」


 主と名乗るマイズさんと、従業員一同に迎えられた。お、大袈裟じゃない?


「シャルロット・マルディックです。今日はよろしくお願いしますね」


 どう返していいかわからないから、当たり障りのない返しをしておく。


「はい。まずは中へご案内させていただきます」


「わかりました。ライネーリ。マリッタ。よろしくお願いしますね」


 わたしにはよくわからないから二人に対応をお願いします。


「はい。マリッタ、シャルロット様をご案内して」


「畏まりました。シャルロット様。こちらです」


 マリッタに先導してもらい、ミリエイラ商会の本店へ入った。

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