プロローグ
時代の流れと共に、人々は栄え、文明も機器も発展を遂げてきた。
自転車、車や電車、船や飛行機など多様に増えた交通機関。
その恩恵から、国から国へ移動するにも数時間程度で移動出来るようにもなった。
交通機関だけでなく、通信機器も進化し続け、更にはその通信機器を1人複数持つなんて事もザラな現代社会。
食文化も多様化し、多文化の食が簡単に食べられるようになった。
冷凍やフリーズドライ、無水調理や長期保存食なんて物もあり、 包丁や調理器具無しでも電子レンジ一つで数分で食事が簡単に作れてしまう。
災害時に向け、温めずに食べられる上に、長期の保存が可能なものまである。
買い物も通信機器を使用すれば、端末一つで注文でき、自宅まで配達をしてくれるから家を出る必要すらなくなってしまう。
また、キャッシュレスシステムが開発されたからお金を持ち歩く必要性もない。
魔法や、魔法使い、魔女なんてものはお伽話の中だけだと言われているこんな世の中で、誰が本当に魔女なんて存在していると信じるだろうか?
子供であれば可愛らしいとされるが、大人が言っていれば心配どころか、冷めた目で見られる事もあるだろう。
それでも、魔女は生きにくくなった現代社会で、ひっそりと、そのなりを潜め存在していたのだ。
いつしか黒猫に黒服は、猫にセーラー服と化していた。
制服と言えば今や学生の代名詞。
魔女は現代社会でセーラー服を着た学生として、暮らしているのでした。
「…なんて、今の世の中誰が信じるだろうね……」
そう、誰に聞かれるでもなく呟いた私こそ、そんな魔女なのである。
いつしか存在している魔女を御伽話の中だけだと言い始めたこの世の中で、魔女の血を受け継ぎ、しかしその存在を隠し生き長らえてきた。
誰に知られる事も、知らせる事もなく、現代社会に溶け込み、ただの人と同じように生活をし暮らして来た。
魔女の血が人とは違う色なわけでもなく、血に魔女の力が混ざっていると言うだけ。
そのために誰しも彼女が魔女だとは思わない、いやそんな事すら考えないであろう…
「ふと、急にどうしてこんな事を考えたのかすら忘れたいわ〜……」
目の前に並ぶ複数人の、世間で言う残念な部類に入る性格の彼らを見て事の始まりを思い出してしまうのだった。
始まりはいつも通りの何気ない日常。
魔女と人と、変化もなくごくありふれた普段通りの日常のはずだった…
「魔女の血筋」だと、しかしそれは「誰にも他言してはいけない」と物心つく頃から何度も言われ、耳にタコだと思うほどで、それ以上の何も周りの人と違いもなく、同じ日々を送ってきた。
そんな私、円月まこの普通にしたくて、普通じゃない日常。
それが始まるのは、高校に入学すると同時なのでした。