メニュー3 スペアリプ
メニュー3 スペアリプ
ギルド対抗祭り。その名の通り年に1回行われるギルドによる祭りだ。中央都市「セントラルーズ」には複数のギルドが存在しているが、その中に4大ギルドと呼ばれるギルドがある
まず、サイクロプスのガイが率いる「カタストロズ」ガイがギルド長を務めている居る関係か、サイクロプスやオーガが数多く在籍している。暴力的な印象の強いサイクロプスやオーガだが、カタストロズのメンバーは正義感が強く民からの人気も厚い
次にハルピュイア「アーリッシュ」が率いる「シルバーウィンド」ハーピーやハルピュイアが多く属する翼人ギルドだ。種族的な事もあり女性メンバーが多く、男性ファンが多いギルドだ。軽戦士や弓兵が多く属し、アーリッシュ自身がセントラルーズに4人しか居ない「神弓」の称号を持つ弓兵でありつつ、軽戦士としても有能であり。年末のギルド成果では常に上位をキープしているギルドだ
そして「グローリー・オブ・キングダム」人間の「ローエン」がギルド長を務めるギルドだ。派手な戦果や武勲を持つわけではないが、質実剛健にして、困っている人間を見捨てないその精神面が高く評価されているギルドだ。ちなみにギルド名はローエンの息子命名である
最後に最強の名を欲しいままにし、そしてセントラルーズの政治にも強い発言力を持つギルド「金色の鱗」セントラルーズの市長「竜帝ゼド」がギルド長を務める竜人系のギルドだ。入団資格は当然「竜人」である事が最低条件だが、それともう1つゼドが指名したAランクの魔物を単独で刈る事が条件であり、人数は20人にも満たないがそれでもカタストロズ、シルバーウィンドを超える成果を上げ続けている
つまりギルド祭りもこの4ギルドが圧倒的人気……という訳ではなく。毎年カタストロズはプロレスや腕相撲大会を開催し、人気はあるのに祭りでは常に最下位なのだが、今年は違っていた
「いらしゃいませー!揚げたてコロッケとフライドポテト!それに冷たいラガーはいかがですかー!」
カタストロズでは数少ない女性メンバー。更にエルフやシルキーと言った美人所を接客に出し、食べ物で祭りに参加していたのだ
「コロッケ?聞いた事無い料理だな」
「芋を油で揚げてるのか。ちょっと興味が出るよな」
どうせ今年もプロレスか、腕相撲と思っていただけにそれは予想外であり、更に物珍しさも手伝い客がどんどん集まる。
「コロッケを1つくれ、それとラガー」
「はい!ありがとうございます!銅貨4枚です!それとカタストロズ拠点闘技場にて、飯処神埼店主の神崎さんによるスペシャルメニュー
も販売しております。どうぞそちらもよろしくお願いします」
油を使っているのに銅貨2枚と言う安価。そして冷たいラガーも単品で買うより銅貨が1枚安いという事もあり、人が集まる。
「うおっ!なんだこれ!こんな食感初めてだ!」
「芋料理なんてって思ったけど、こりゃうめえなぁ!」
「このフライドポテトってのも良いぞ!軽いし、それに塩胡椒が利いててラガーに合う!」
拠点周辺だけではなく、大通りや、入り口付近にも出店を出している。それにより、食べた人間の口コミが瞬く間に広がっていく……
「すいません、今揚げている最中です!暫くお待ちください!」
「押さないで!押さないでください!」
それはあっという間に用意した分の品切れを起こさせた。そしてそれは全て神崎の計算のうちだった
「闘技場ではまだコロッケをご用意しております。どうぞそちらへ!カタストロズと飯処神埼をよろしくお願いします!」
ギルド拠点にはまだ料理がある。そしてこの料理を用意したのは飯処神埼と言う聞き覚えの無い店……それは住民達の間に一気に噂となって駆け巡る
「こんな美味い料理を出す店があったのか、祭りの後に行って見るか」
「それよりコロッケだよ!コロッケ!!行こうぜ、俺まだ食べてないんだよ!」
美味い料理には人を引き寄せる引力がある。大通りと入り口付近のカタストロズのテントに料理が無いと判れば、我先にと闘技場へと向かっていく……そしてそんな人間達を見つめる金の瞳
「ふっ、ガイの奴め。面白い事を始めたな」
赤い翼と金色の鱗に覆われた皮膚を持つ人型の異形。ドラゴンロードにしてセントラルーズ市長。そして金色の鱗のギルド長でもある「ゼド」はにやりと笑い闘技場へ足を向ける。ガイが面白い事を始めたのか?それとも協力していると言う神埼とやらが提案したのか、どっちにせよ……
「今年の祭りは面白くなりそうだ」
毎回最下位のカタストロズが幸先の良いスタートを切った。これは面白そうだと呟き、ゼドもまたゆっくりと闘技場に足を向けるのだった……
す、すげえ……神埼に協力して貰えば今年の祭りはいけるんじゃないか?と思ったのと、神埼の名前を売ってやろうと言う気持ちで神崎に協力を頼んだ。そしてその成果は予想を遥かに超えていた
「メイ!リーン!大通りの屋台全滅よ!早く次の準備をして!」
「ええ!?嘘!?闘技場のでも手一杯なのに!?」
闘技場の前に3つのテント、大通りと入り口付近に1つずつ。正直そんなに場所を借りて大丈夫か?と思ったのだが、それでも足りないくらいだと言う
「ガイさん、人員が足りません!」
「マジかよ」
リーファの言葉に思わずそう呟いてしまった。料理班で10人用意したんだぞ!?それでも足りないって言うのか!
「今日休みの連中に声掛けろ!寝てても叩き起こせ!」
これだけ繁盛しているのに、客に料理を出せないんじゃ評判が下がる。非番の連中には悪いが、叩き起こして来いと命令する
「神埼。やっぱお前凄いぜ」
「そりゃどうも、だけどあくまで今来てるのは人間やエルフだ。本命じゃない」
神埼が何かのタレをタルの中で作りながらそう呟く。闘技場周辺は本来オーガやサイクロプスの居住エリアだ。そこにいる連中が出て来ていないのは気付いている。その連中を引きずり出すメニューだと言っていたが、正直俺にはそんな風には思えなかった
「なあ、本当にそんな屑肉で大丈夫か?」
昨日と一昨日と肉屋を回り集めた肉。肋骨の部位で肉が全然無い部位、そんな部位を集めて大丈夫なのか?と尋ねる。俺の自慢のグレートソードで切り分けたが、それでも骨を残して切れと言う意味不明な指示もまだ理解出来ていない。そもそももっと良い肉を使えば良いんじゃないかとさえ思っている
「神崎さん!そろそろ始めて貰わないと料理が間に合いませんよ!
神埼の指示では、コロッケとフライドポテトと言う揚げ物とラガー。これを販売し、売れた時に闘技場に来るように声掛けをしてくれとの事だった。大分人数が集まってきているのでそろそろ限界ですよとリーファが泣き言を言う、だが神埼はその声を完全に無視し
「判ってる。そう急くな、料理はな……丁寧に仕上げるもんなんだよ」
タレの味見をして、それが納得行く仕上がりだったのか良しと神埼は呟き立ち上がる。神埼が作ったタレのタルはこれで4つ……こんなに作ってどうするつもりなんだ?俺には神埼が何をしようとしているのか見当もつかない
「行こう。なーに心配するな、俺の計算通りならここから更に行けるぜ」
自信満々に言う神埼。その顔を見れば勝算があるのは明らかで、俺はここまで来たら行く所まで行くしかないか呟き。神埼が作っていたタレの入ったタルを持ち上げ、厨房から闘技場前に出る。そこでは若い衆が巨大な網を用意し、薪を割りまくっていた
「うっし!始めるぜ!!全員集合!!!」
ジャイアントポークの肉はでかいので神埼では持ち上げられない。だから料理をするのは俺らの仕事だ
「神埼。指示を頼むぜ」
「「「神崎さん!よろしくお願いします!!」」」」
昨日の夜。神埼の飯を食った若い衆達は、最初こそ人間の指示に?と首を傾げていたが、その味を知り。その美味さを知れば、驚くほど恭順になった
「OK!始めよう!」
バンダナを頭に巻いた神埼が手をパンパンっと叩き、注目と若い衆に声を掛ける
「お前とお前とお前!熱いと思うが、どんどん薪を燃やしてくれ。肉を焼くのに、温度が低いのは駄目だからな!」
「「「おう!!!」」」
神埼の言葉に力強く返事をし、薪をどんどん燃やしていく。煙が立ちこめ、集まっていた住人達が何だ何だ?と騒ぎ始める
「次!このタレの中に切り分けた肉を4本ずつ入れてくれ、あんまり勢い良く入れるなよ!タレが減るからな!ガイは厨房から後3つタレを運んできてくれ!」
朝から茹でていた肋骨をタレの中に漬けてくれと指示を出し、俺にはタレを持って来てくれと言うので判ったと返事を返し、若い衆を2人連れて厨房に戻る
「ガイさん、あんな屑肉でどうするつもりなんですかね?」
「知らん。だがここまで来たらやるしかないだろ」
肋骨の部分なんて骨だらけで大して美味くない。なんでそんな部位を選らんだのか?だがここまで来たらやるしかない
「なーに神埼なら信じても大丈夫だぜ、昨日の飯も美味かったろ。だから心配なんて無い」
ちゃっちゃっと作ってくれた生姜焼き。残念ながら飯は無いのでパンだったが、それでも十分に美味かった筈だ。だから今回も大丈夫だと若いオーガ2人に声を掛け、厨房からタルを持って闘技場の外に戻ると……強烈な匂いが周囲に満ちている事に気付いた
「うお……なんだぁ!?この匂いは!?」
匂いを嗅いでいるだけで腹が空いて来る。それは俺だけではなく、今まで姿を見せなかったオーガやトロールまで闘技場の近くに姿を見せている。今闘技場周辺に満ちている香りがどれだけ刺激的なのかを物語っていた
「来たか。どんどん肉をタルの中に漬けてくれ、俺が合図したら網の上の上で焼いてくれ。俺じゃあ、こいつは引っくり返せない」
そう笑う神埼に初めて神埼がこの料理を選択した意図が判った。俺達でも調理出来、尚且つ人を呼び寄せる料理として神埼はこれを選んだのだと……
ガイ達がタレの中に巨大スペアリブを漬け込むのを横目に、俺は自分で買ってきた普通のスペアリプを焼きながら
「さー!巨大スペアリブはまだだが、普通のスペアリプは焼き上がったぞー!銅貨3枚!特製タレに漬け込んだ柔らかいスペアリブはどうだー!」
コロッケを食いに来た連中がこぞって俺のテントに集まってくる。闘技場に満ちた香りを嗅いでコロッケやフライドポテトで満足出来る訳が無い
「1つくれ!」
「はいよ!少し待ってくれよ!」
銅貨を3枚受け取り、プラスチックの皿の上に乗せてスペアリブを渡す。こいつは1度下茹でをし、醤油、酒、はちみつ、砂糖、マーマレード、そして摩り下ろしたにんにくのタレに漬け込んである。この世界ではスペアリプは人気が無いみたいだが、それは調理の技術が未熟だからだと俺は思った。だからこれで勝負に出たのだ
「なんだ、これ肋骨か?匂いに騙されたな」
肉を手にして騙されたと残念そうにしている男。だがそれは食べてから言って欲しい物だな
「そうだぜ。けど騙されたと思って食ってみろよ」
後悔はさせないぜ?と言うと男はホントかなあ?と呟きながらスペアリブに齧りつき……
「な、なんだこれ!?や、柔らかい!」
下茹でをしたスペアリプは焼いても柔らかい、更に俺はフォークで骨と肉の間に穴を開けているので骨から簡単に肉が外れるのだ
「美味いだろ?」
「ああ!美味い!!この味付けは何だ!?食べた事が無いぞ!……甘いのに、辛い……なんて言えば良いのか判らない!ただ……とにかく美味い!もう1本くれ!」
「毎度!」
男の手にしている皿にもう1本スペアリブを入れてやる。両手にスペアリブを持ち美味い美味いと良いながら食べる男を見て、離れかけて客が戻ってくる
「そんなに柔らかいのか?」
「ああ。柔らかいぜ、今まで食べた事が無い味って事を自信を持って言える。まずは食ってみろよ、後悔はさせないぜ」
それならと言って銅貨を3枚差し出す長身の男にもスペアリブを渡す。骨を持って齧りついた男も最初の男と同じように目を開いた
「や、柔らかい!こんなに簡単に噛み切れるなんて!?」
マーマレードで甘みが追加され、そして柔らかくなる。安い部位でも、丁寧に調理すれば、それは高級な部位に負けない味になる
「後は頼む。肉はどんどん焼いてくれて構わないからな。焼き方は覚えてるな?」
20分ほど焼き、竹串を刺し濁った肉汁が出れば追加で焼いてくれれば良い。簡単な料理だから覚えやすいはず、不安要素は時間の事だが……そこは時々見に戻る事で対応するしかないだろう
「は、はい!判りました!」
若い少女にこの場を任せる。スペアリブは焼くだけの料理だ、店で出すには相応しくないメニューだが、こういう開放的な場所で食べればその美味さは格別な物になる。キャンプなどで食べるカレーが格別に美味しく感じるのと同じ理由だ
「ガイ!そろそろ引っくり返してくれ!」
「お、おう!判った!」
あちちと騒ぎながらスペアリブを引っくり返すガイ。滴り落ちる脂が焚き火に当たり音を立てる、タレの焦げる香りが周囲に満ちる。そしてその香りに吊られ人が寄ってくる
「な、なあ!まだ焼けないのか!?」
「もう良いんじゃないか!?」
客の巨人達がもう良いだろ!?と言うが、まだだまだ片面を焼いただけだ
「まだまだ、まだ片面を焼いただけじゃないか、もう少しさ」
早く食いたいと騒ぐ巨人達。その声で外に出た連中が匂いを嗅いで外に出てくる、それは計算通りなのだが……
(やばい、多すぎる)
集まってくる人間が多すぎる。これでは調理が間に合わない、そう思った時。闘技場周りがざわめいた
「騒がしいな、料理人を焦らせるんじゃない。大人しく待て、小僧共」
角と翼を持つ男性のその一言で騒いでいたトロール達が静かになった。なんだ?あの男性は何者なんだ
「ガイ。ずいぶんと面白いことをしているな」
「……竜帝ゼド。あんたまで来るなんてな」
「ドラゴンロードともなると日々退屈でな。これほど面白そうな催し物を見逃さない訳には行かないだろう?」
竜帝……なんか名前からして凄いVIPが来たって雰囲気なんだが……
「初めまして人間。私はゼド、竜帝などと呼ばれている若輩者さ。お前の名前を聞かせてくれないか?」
若輩者なんて嘘だろ、この威圧感……只者じゃない。ガイの反応を見れば、この人がどれだけ規格外の存在なのかが判る
「神埼、神崎雄也」
「ほう、面白い名前だな。覚えておこう、それで?その肉はまだ焼けないのかな?」
焼ける肉を見てそろそろだと思うのだが?と問いかけてくる。俺は肉に竹串を刺す……だが溢れ出る肉汁はまだ濁っていた
「もう少しです」
なるほど、ではもう少し待つとしよう。ガイの所の若い連中が持ってきた椅子に腰掛けるゼドを見ながら
(おい、ガイ。なんだ、あの人。威圧感が半端じゃないんだが!)
そこまででかいという訳では無い。だがその威圧感はガイ以上だ、特にあの金の瞳に見つめられると体が震える。自分よりも遥かに巨大な生き物に見つめられている気がするのだ
(竜帝ゼド、この街の市長にして、NO.1ギルド金色の鱗の長だ。今は人間形態だが、本来は山ほどの巨体を持つドラゴンだ、怒りを買えば、俺のギルドは消し飛ぶ)
ま、マジかよ……つうかなんでそんなVIPがこんな所に来るんだよ……俺は冷や汗を流しながら早く肉が焼けろと心の中で呟くのだった……
「お待たせしました。スペアリブになります」
神埼と言う人間が差し出した肉の塊。それは肋骨周りの肉だった……肉は多いのだが骨が多く、そして尚且つ肉も硬い。そんな不人気の部位だ……だがその分安価と言うメリットがあるだけなのだが
(ほう、これはこれは……)
飴色に焼かれ、食欲をそそる香り。それはとても安価な肋骨とは思えない
「では頂こうか」
ずっしりと重い肉を片手で掴み、思い切り牙を突き立て……さほど力を込めなくても骨から肉が外れた。柔らかく骨から簡単に外れるのに、歯を跳ね返す食感は肋骨の部位特有の食感だ
(これはなんだ……味わった事が無い)
今まで色んな料理を食べたが、こんな味は食べた事が無い。甘いのに、辛い、辛いのに、甘いという不可思議な味わい。だがそれは決して不快ではない、むしろ肉の味わいをより良い物にしている。それに味付けの中に隠れている果実の香り……これはオレンジか?
(まさかこんな料理を出す人間が居るとは……)
長い時を生きて暇だと思っていたが……まだまだこの世界には面白い物があるではないか、1口めより大きく口を開き肉を噛み千切る。3回齧っただけで私の手には骨だけが残された
「美味であった。神埼と言ったな、お前は飯屋をやっているそうだが……この味で繁盛していないと言うのか」
コロッケを売っている娘が言っていた、飯処神埼と……この味ならば繁盛していてもおかしくないのだが
「開店したばかりなので、客が来ないんですよ。だからガイに協力したんです」
「そうか、そうか……」
これだけの味が知られずに埋もれていくのは勿体無い。余りにも勿体無い……今回は考え無しのガイにしては良い仕事をしたと褒めてやろう。これだけの才能が人知れず埋もれるのを防いだのだからな
「1つ聞くが、お前の店でこのスペアリブと言う肉は毎回出るのか?」
「……すいません。これは祭りの特別メニューでして……しかし、その代わりもっと美味い物をご提供出来ます」
ほう……これよりも美味い料理。良く考えるとこれは焼いただけの肉……料理人からすればそれは料理と呼ぶにもおこがましい雑な物と言うことか……
「はは!ハーッハハハハハッ!!!良いぞ、気に入った」
この私を前にして動じる事無く、もっと美味い料理を出せると言い切った。その豪胆さ、悪くない。私は椅子から立ち上がり
「近い内にお前の店に赴こう。私を失望させるなよ」
失望させればお前の店は消えるぞ?そう言外に告げる、これだけの啖呵を切ったのだ。私が今食べた肉よりも美味い物を出せよと告げる……確かにこれだけの才能が潰えるのは惜しいと思う。だが男である以上口にした言葉に責任を持たねばならない
「ご来店お待ちしております。竜帝ゼド様」
俺の脅しにも屈せず丁寧に頭を下げる神埼。人間にしては肝が据わっている、こういう男は嫌いじゃない
「ガイ!また尋ねてくる。そのときに店まで案内してくれ」
「……判った」
不機嫌そうに返事を返すガイ。よほどこの男の料理が気に入ったのか、それとも男の性格か、はたまた両方か……面白い人間と言うのは私も感じているので恐らく両方だろう
「ではな、楽しみにしている。落胆させてくれるなよ」
銀貨1枚を神埼に向かって弾き、私は闘技場を後にした。私が消えた事で歓声を上げて肉をくれと叫んでいるオーガ達……あの味が銀貨1枚ならば安すぎるくらいだ
「これは今回のギルド祭りはカタストロズの圧勝だな」
あれだけの味を提供する男が協力している。これはシルバーウィンドも金色の鱗も、グローリー・オブ・キングダムも目ではない
「まだまだ面白い事もあるものだ」
長い竜生に飽きが出て来ていたが、いやいや面白い人間が居たものだ。神埼がどんな料理を出してくれるのか?そんな期待をしながら、金色の鱗の拠点へ足を向けるのだった……
そして私の予想通り。今年のギルド対抗祭りは2位のシルバーウィンドに2倍近い大差をつけ、カタストロズが勝利を収めるのだった……
メニュー4 鶏南蛮
竜帝ゼドと他のギルドとギルド名が判明しました。ゼドの再登場までに、他のギルドリーダーと神埼の遭遇を書いて行きたいですね。
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします