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異世界で飯屋やってます  作者: 混沌の魔法使い
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メニュー2 コロッケ


メニュー2 コロッケ


異世界に通じる飯屋を始めて3日……客は……1人だけだった。しかもガイ1人だけだ


「ほんとここの飯は美味いな!ちと小さいけどよ!」


サイクロプスのガイ。常連を獲得出来たのは大きいが、このままでは正直不味いだろうな……


「このままだと閉店だな」


「何でだ!?」


俺の呟きが聞こえたのか。何でだ!と叫ぶガイに俺はしょうが焼きのお代わりを皿に移しながら


「客がお前しかこないからだ」


毎日作っている味噌汁は殆ど廃棄。売り上げは日8000弱……これでは赤字も赤字。大赤字だ


「何?他に来てないのか?俺は知り合いには声を掛けたぞ?」


「それはありがたいが、来ていない」


客が来なければ利益が出ない、利益が出なければ店は続けられないのだ。何か問題があるんだろうか……


「やっぱりあれか、店が小さい」


人間サイズには十分なんだが、ガイも3M近い巨人だ……となると知り合いもそれくらいの大きさになるだろう。近くには来てくれたが、店の小ささに引き返したって言う可能性もあるな……


「だがそれはどうしようもならないぞ?」


今更店を大きくする事なんて出来ないぞ?とガイに言うと、それは判っているとガイは返事をしながら


「俺はこの店の料理が美味いのを知ってるから、多少出入りが苦しくても通う。だが所見だとなぁ……小さい店は面倒だと思うのかもしれない……だがここが潰れるのは駄目だ。これだけ美味い飯を食えなくなるのは損だ、だから俺に考えがある」


……なんかその台詞を聞くと凄い嫌な予感がするんだが……


「ギルド対抗祭りがあるんだが、お前協力してくれよ。そこでお前の飯を振舞えば、味が判るから客が増えるぞ」


「祭り……か」


祭りに参加するって言うのは良いアイデアかもしれないが、問題が1つ。俺が部外者と言う事だ


「大丈夫だろ?そんな細かい事を気にする奴はいないぜ」


「いや、細かく無いだろ?」


細かい細かい、大したこと無いぜと笑うガイはごちそーさんと笑って立ち上がり


「明日迎えに来るから一緒に俺らのギルド「カタストロズ」に行こうぜ」


名前からして不安なのだが、ガイが善意で言ってくれているのが判るから判ったと返事を返す


「ちなみに前のお前等のギルドの出し物ってなんだったんだ?」


「ん?プロレス。めちゃくちゃ不評でなあ……溢れる筋肉のどこが悪いんだ?」


……こいつらに協力して大丈夫か?と俺は思わずにはいられないのだった……






ギルド「カタストロズ」。サイクロプスのガイがギルドリーダーを務め、サイクロプスやオーガなどの種族が数多く所属するギルドだ。暴力的な印象の強いサイクロプスやオーガだが、カタストロズのオーガ達は弱き者を助ける正義感の強い連中が集まっており。同じく正義感の強いガイを筆頭に市民からの人気もあるギルドなのだ。ただ、強い者には敬意を払う種族としての特性でギルド祭りではプロレスや、腕相撲大会を開催する点だけは不評なのだが……


「なーに、そう心配するなよ、神埼。俺らのギルドには少ないが、エルフやドワーフもいるぜ」


俺の隣を歩いている神埼の背中を軽く叩く。どうせ客も来ないという事で休業にしてくれた神埼には正直感謝している、しかしやはり料理人の前は戦士だったのか、眉を顰めながらも俺の力に耐え真っ直ぐに立っていた


「まだ歩くのか?」


「いや、もう着くぜ。あれだ」


カタストロズのギルド拠点は元円形闘技場だ。と言うか、これくらいじゃないと、サイクロプスやオーガの連中には狭すぎるのだ


「あ、ガイさん。お疲れさんです!」


「お疲れ様です!!」


「おう!おめえらもな。おおー良い具合じゃねか」


闘技場に近づけば、俺に気付いた若いオーガ達が頭を下げる。祭りを明後日に控えているから闘技場の近くにはテントが設置され始めていた。中々仕事が早いじゃないかと感心する


「ガイさん!皆もう動いているんですよ!ギルド長がふらふらしててどうするんですか!」


俺に気付いて駆け寄ってきた緑の髪のエルフがそう怒鳴る。こいつの名前はリーファ、カタストロズのスケジュール調整から、給金の配布と言った頭を使う仕事を全て引き受けてくれている。だが事務職と侮るなかれ、こいつはセントラルズでも有数のアーチャーで神弓と呼ばれるほどの腕前なのだ。まぁそれ以上に戦闘に特化してる連中が多いので、滅多に戦闘に出ることは無いんだがな!


「がーはははっ!!リーファ!俺にそんな事が出来ると思うか?」


「出来るできないじゃなくて……ってあら?人間?」


俺に怒鳴っていたリーファが神埼に気付く、俺はにやりと笑いながら神崎の背を押して


「前に言っていた飛び切り美味い飯屋の店主だ。助っ人で連れて来た」


「またそんなことしてッ!すいません!すいません!!ガイさんは考えるより行動の人ですから、お店があるなら戻ってくれても大丈夫ですよ」


ぺこぺこと頭を下げるリーファ。なんだよ、その言い方だと俺がまるで馬鹿みてえじゃねえか……睨むと逆に睨み返してくる。来たばっかは俺を見て怯えてたくせに……生意気に……俺とリーファが睨みあっていると、神埼が手を叩く


「どうせ客の来ない店だ。ここで協力して、俺の名前と顔を売っておきたいって打算がある。だから気にしないでくれ」


自分で言っていて空しいのか、小さく笑う神埼。だがこのギルド祭りで名前と料理の腕が知られれば間違いなく繁盛する、俺はそう確信していた。だからこそこうして助っ人として連れて来たんだ


「神埼の飯は美味いのに、客が来ないのは名前と顔が売れて無いからだ。だからギルド祭りで顔を売ってやるのさ」


それに神埼が協力してくれれば、アローの奴のギルド「シルバーウィンド」よりも繁盛すると断言する


「じゃあリーファ、神埼を厨房に案内してやってくれ。俺はこいつらと協力してテントを組むからよ」


まぁ馬鹿ってのは認める。考えるよりも動く方が好きだからな、だからメニュー決めとかは神崎に任せたと笑い。俺はテントの骨組みが置いてある区画へ足を向けるのだった……無論その途中で


「おい、神埼の飯屋教えてやったろ?なんで行ってないんだ?」


「ガイさん、勘弁してくださいよ。あの店小さすぎますって」


「うっせ!俺にだって小さいわ!!だけどな、あの店の料理は美味いんだよ!食ってから文句を言いやがれ!!」


折角店を教えてやったのに、行かなかった若い衆の頭に1発ずつ拳骨を落としたのは言うまでも無い






尖った耳に染めているのとは違う美しい光沢を持つ緑の髪……正にファンタジーの世界の住人と言わんばかりのエルフの少女に案内され、闘技場の中を進む


「本当ガイさんがすいません。あの人は考えるより行動って人なので」


よほど振り回されているのか疲れたように呟くリーファ。まぁ確かに人の話を聞かないのは困るが、あれくらいサバサバしているとあんまり嫌悪感が無いのも事実なんだよな。むしろ俺が困ってるから助けてくれようとしているんだ、それで文句を言うのは筋違いって物だと思う


「さっきも言ったが、俺自身にも打算があるから気にしないでくれ」


1日店を休んだ損失と、ガイに協力して顔を売る事で今後の利益の見込みを秤にかけて、協力した方が特になると判断したのだから俺はここにいる


「飯屋と言ってましたが、どんな物を作るつもりなのですか?」


「祭りって聞いてるから食べ歩き出来る物で考えてる」


本当はたこ焼きとか良いと思うんだが、蛸やイカはファンタジーでは不評の可能性があるので見送り。片手で食べれる揚げ物などで行こうと思っている


「食べ歩きですか……それは面白いと思いますが、売れる物ですか?利益が出なければこっちも困るんです」


見た目はぽわぽわしてるが、頭の切れは悪くないようだ。とは言え、それは当然の事だ。俺にだけ利益が出るのでは文句が出るのは当然だ


「心配ないさ。ま、まずは試食で作ってみるからそれで売れるか判断してくれ」


まずは俺の腕を見て貰うべきだろうしな、調味料の類とお玉などは勿論持って来ているし、揚げ油も持ってきてるから場所さえ貸して貰えば早速調理に入れる


「自信がおありのようですね。ではこちらの厨房を好きにお使いください、食材は余り使い過ぎないようにしてくださいね」


案内された厨房は想像していたよりずっと綺麗だった。エルフやドワーフがいると聞いているが、そういう人達が綺麗にしているのだろう


「さてと……何を使うかな」


食べ歩きだとやっぱりコロッケとかが丁度良いよな。置いてある食材に目を通す、籠に入れられたじゃがいもや玉葱。それに金属の箱……これはもしかしてっと思い開けると、そこはやはり冷蔵庫で肉や卵が収められていた


「肉は少し使っても良いのか?」


余り大量でなければ大丈夫ですと言う返事を聞き、豚肉っぽいのと卵を取り出し、山積みされたじゃがいもと玉葱を手に取る


(むっちゃ観察してるな)


口を開く事は無いが、こっちを観察しているリーファにやっぱり部外者だからなあっと苦笑しながら、俺は鞄から布にまいた包丁を取り出し調理を始めるのだった


(見た目は日本と同じか……)


見た目に変わりは無い。普通の感覚で使えるだろう、ただ水道は無いので水瓶から水を汲んでじゃがいもを手早く洗い。包丁で皮を剥く……皮を剥いて中身を見たが、やはり普通のじゃがいもと変わりは無いな……皮を剥いたじゃがいもを8等分にカットし、水を入れた鍋にじゃがいもをほり込んだ所で


「火ってどうすれば良い?」


茹でる段階で火はどうすれば良い?と尋ねるとリーファは竃の前に来て何かを呟くと薪に火がつく……


「魔法は使えないのですね?」


日本人だから使えないに決まってるだろと苦笑する。それともこの世界では人間でも魔法が使えるのか?と思う


「料理人だからな、俺が出来るのは料理だけだ」


そうですかと呟きながら、後に下がり再び俺を観察するリーファ。背中に鋭い視線が向けるリーファ。そんなになんで警戒されてるんだろうな?と思いながら、先ほどじゃがいもを洗った桶で玉葱をさっと洗い土を落とし皮を剥く


(む、これは少し硬めだな)


皮が少しばかり硬い。外見は同じでも少しずつ違いはあるのか?そんなことを考えながら玉葱を手早く微塵切りにする。ひき肉が無いので、これも肉の塊を包丁で切り、やや荒い挽肉に仕上げる


「リーファ。もう一個火をつけてくれ、じゃがいもを茹でながら調理を進めたい」


「判りました」


一々火をつけて貰うのはめんどくさいな……ここで以下に日本の技術が優れているのかと思い知らされたな。リーファが火をつけてくれている間にフライパンに似た形状の菱形の鍋に油を引かず、直接先ほど作った挽肉と玉葱を入れ炒める。


(食べ歩きだから……濃い目にしておくか)


食べ歩きではソースなどを使うのは無理、だからこの段階でしっかりと味を付けておくべきだ。鞄から塩・胡椒の瓶を取り出しやや多めに鍋の中に入れる。背後で塩と胡椒をそんなに!?と叫ぶリーファの声が聞こえる、塩胡椒は稀少品なのか?料理が終わったら聞いてみることにしよう


「よし、これでOKっと」


玉葱と挽肉の色が変わったので火からどかし調理台の上で冷ます。挽肉と玉葱を炒めている間にじゃがいもが茹で上がった様なので水を全て捨て、少しの間火にかけておく、これはじゃがいもの水気を飛ばす為だ。水気が飛ぶまでの間に持ち込んだ3つのトレーにそれぞれ、小麦粉・卵・パン粉を入れておく


(本当は冷ますんだが。そんな時間も無さそうだしな)


ゆでたじゃがいもと挽肉と玉葱を混ぜ合わせ、成型したら少し冷やすのだが……あいにくそんな時間は無さそうなのでそのまま揚げる準備をする。


「ん、良い具合だな」


じゃがいもの水気が飛んだのを確認し、お玉で潰す。だが完全に潰すのではなく、茹でる前に切ってあるのでやや形が残る程度に留める。そうすればじゃがいもの食感が残るからだ


「よっと、ほっと」


潰したじゃがいもをボウルに移し、炒めておいた挽肉と玉葱を混ぜ合わせる。ここまで来たらもう完成したも同然だ、種を俵型に成型しトレーの上に積んでおく


「さてと……こいつの出番だ」


鞄から取り出したサラダ油のボトル。それをやや深めの鍋に並々と注ぎ、先ほど挽肉を炒めるのを使った竃の上に乗せる


「そ、そんなに油を使うのですか!?」


今まで殆ど観察していただけのリーファが始めて声を荒げ、俺にそう尋ねた。これは明らかに油を見た反応だなと確信する


「俺の持ち物だから大丈夫だろ?それよりもう直ぐ仕上げだ。味見よろしく頼むぞ」


やっぱり油は稀少品だったか……持ってきて正解だったな。ただ竃では火の調整が出来ないので、そこが揚げ物をする上では気掛かりか

……だがここまで来たらやるしかない。菜箸をいれ、その周辺に気泡が付いたのを確認する。これで温度も万全だ


「小麦粉、卵、パン粉の順番で塗してっと」


コロッケを先ほど用意しておいたトレーにその順で塗し、俺は油が跳ねないように気を付けながらコロッケを鍋の中に滑り込ませるのだった……






ガイさんが連れてきた人間……神埼さんに対して私は最初不信感を持っていた。言ったら悪いが、ガイさんは……あれだ。大概の物は美味いと言う。そんなガイさんが連れてきた料理人、しかもオーガと見間違うほどに屈強な体格をしているのを見て、ガイさんが売れてない料理人を助けようとしていると思ったのですが……


(凄い……)


カタストロズの料理人でさえ、ここまで手早く料理を作る物はいない。そう言うのに特化しているシルキーさん達でもここまで手際よく料理を進める人はいないと思う……複数調理をしているので色々作っていると思っていたのですが、まさかそれが1つの料理の準備とは思っても見なかった。しかし私が驚いたのは、その料理の腕もそうだが、鞄から次々と取り出す調味料にあった


(塩も胡椒もあんなに使って!?)


稀少な香辛料を惜しげもなく使う。しかもそれを全然気にした素振りも見せない……鼻歌交じりでそれが当然だと言わんばかりだ。海辺の方から来た人なのだろうか?それなら塩や胡椒も持っていてもおかしくない……そう思ったのですが、次に出された物に私は思わず声を荒げた


「そ、そんなに油を使うのですか!?」


大きな鍋に並々と注がれた油。それも透明度の高い油なんてどれだけ安くても金貨2枚はする、それだけの稀少品をあれだけ使うなんて正気とは思えなかった


「俺の持ち物だから大丈夫だろ?それよりもう直ぐ仕上げだ。味見よろしく頼むぞ」


油なんてどうでもいいと言わんばかりで、それよりも料理の味見だと言う神埼さん。塩、胡椒に油、そして卓越した料理の腕……私は彼が何者なのか検討もつかず。料理が揚げられる音を聞きながら、ただただ判りましたと返事を返すのがやっとだった……


「揚げたてだからめちゃくちゃ熱いからな?気をつけて食べてくれ」


狐色に揚げられた丸い何かが差し出される。作る工程をずっと見ていたのに、味の想像がまるでつかない……


「これはなんですか?」


「ん?コロッケ。知らないか?


コロッケなんて料理は聞いた事が無い。フォークで小さく切ると、湯気が立ち込める。それがこのコロッケの熱さを私に教えていた……芋と肉を使った揚げ物……一体どんな味がするのか?私は怯え半分好奇心半分でコロッケを口に運んだ


「あふっ……あつ……ッ!」


サクリと言う小気味の良い音の後に口の中に広がる旨味。いもが持つ甘みと肉の脂、そして玉葱の甘さが塩胡椒で引き立っている。揚げたてだから物凄く熱い、だけどその熱さがあってこそこの料理は美味しいのだと思った


「ふーっ!ふーっ!ん……良い仕上がりだな。どうだ?これなら祭りでも出せるんじゃないか?」


自分もコロッケを頬張り、その味に納得したのか。祭りで出せるか?と尋ねてくる神崎さん


「だ、出せますよ!これ美味しい……」


油と塩胡椒はやや割り高だと思いますが、材料自体は非常に安価だ。しかも高価な分は神埼さんが見てくれるなら私が反対する理由は無い

材料分だけで考えれば銀貨3枚ほどで全て仕入れる事が出来るだろう。料理として完成した後は銅貨2枚ほどで販売すれば十分に元は取れるはず……コロッケを頬張りながら利益と支出を計算しているとふと気になることがあった


「あふっ……これをどうやって食べ歩きに使うおつもりですか?」


歯応えの良い衣に包まれた熱々のじゃがいも……僅かに入っている肉のかさましではなく、肉がこの料理のおまけなのだ。この料理はじゃがいもがメインだろう、ほくほくのじゃがいもは歯応えを残す程度に潰されており、そこに僅かに入っている肉の歯応えと脂がコロッケの味わいをより深い物にしている。だがこの料理は熱い、熱すぎる。食べ歩きをするには少々問題が残っていると思う


「それはこれをこうしてっと」


鞄から紙を取り出し、コロッケを器用に包む神崎さん。彼はそれを私に差し出しながら


「これでどうだ?持ちやすいし、そんなに熱くないだろ?」


「た、確かに!」


紙で包むという発想はありませんでした。これなら食べ終われば捨てることも出来ますし、片手で食べれる。祭りを見ながら食べるのに相応しい。それにしてもなんて独創的なアイデアなのでしょう……料理だけではなく、機転も利く。ガイさんの言うとおり、彼の店が潰れるのは惜しいと私も思った。紙で包まれているコロッケを頬張る、同じ料理のはずなのに、こっちの方が妙に美味しく感じるのは何故なんでしょうか……?私が首を傾げていると野太い声が厨房に響く


「お、神埼。出来たのか、味見に来てやったぜ」


ガイさんが巨体を小さくして厨房に入って来て、机の上のコロッケを見つめる


「神埼よお?お前の料理は美味いが、どれもこれも小さすぎるぜ」


お前がでかいんだよっと笑う神埼さんにガイさんは人間と比べれば俺はでかいかと笑いながらコロッケを3個頬張る


「あふっ!?あちつつっ!!!」


その熱さに1つしかない目を白黒させ、足踏みするガイさん。行儀悪く、3個もいっぺんに食べるからですよと笑い。私は息を吹きかけ、冷ましながらコロッケを味わうのだった……





コロッケは思ったよりも好評だった。試しに作った12個のうち8個はガイの胃袋に、3個はリーファの胃袋に消えた。これだけ好評なら祭りでも良い結果が出るだろう


「うっめえなあ!本当お前の料理は最高だぜ!小さいけどな」


「人間サイズでは大きいんだよ」


俺の背中を叩きながら笑うガイ。サイクロプスやオーガサイズで作るは少し面倒だな……祭り当日までに缶でサラダ油を用意しておくべきかもしれない。あと塩胡椒も


「だけどこれは正直俺には物足りん。肉だ、肉が良い」


肉が食べたいと言うガイに判ってるよと返事を返す、正直コロッケはエルフやドワーフと言った人間と同じ大きさの人に向けて用意したつもりだ。元よりサイクロプスやオーガは前提にしていない、一応大きめのサイズで揚げることも計算している。だが、それでも余り売れないだろうと思っているからだ


「ガイよ。市場に案内してくれ、お前達が普段食べてる肉を見たい」


俺の手持ちではどう足掻いても小さい。だから肉はこの世界で仕入れるべきだと思っていたのだ


「任せろ。カタストロズがひいきにしてる市場がある、そこに案内してやるよ。リーファ、コロッケの材料の発注頼むぞ?後祭り当日までに料理が出来る人員にレシピを覚えさせる、そいつらの人選もな」


口早にリーファに指示を出し、こっちだと言うガイの背中を追って歩き出すのだった……


「どうだ?何か気に入った食材はあるか?」


市場の中を歩きながら尋ねてくるガイに少し待ってくれと呟く、サイクロプスやオーガの経営する市場だけあり、肉が塊で販売されている。だがこれだと思う肉は無い


(安くて、祭りの見世物になるような……)


祭りの雰囲気を生かすには、バーベキューのような形式で焼いている所を見せるほうが良い。コロッケを販売してるテントでギルド拠点でイベントをやりますよとでも言ってもらい、客寄せする形がベストだ


(シシカバブ……ケバブ)


駄目だな。祭り向けだが、この巨体連中にはどう考えても不評だ。と言うか材料費が高くついて、利益が出ない……何か無いかと市場の中を歩いているとある肉に目が止った


「ガイ。あれは何の肉なんだ?」


牛肉と言う感じではない、白い脂の部位が大きい肉を見つけ何の肉だ?とガイに尋ねる。見た感じでは豚肉のように見えるが……


「あん?ああ、ジャイアントポークだ。でかいだけのモンスターだが肉が多く取れる」


ジャイアントポークか……ずらりと並べられている肉はかなり上質だが、俺の興味を引いたのはそれではない。その奥に雑多に積み上げられている肋骨にだ。肉がごっそりとついているように見えるが、売り物として並べられているようには見えない


「店員さんよ。あの肉はいくらだ?」


「ん?あ、あれか。あれは骨ばっかで人気がないからな、買ってくれるなら銅貨2枚で良いぜ?」


その言葉に笑みを零した。まさかあれほど良さそうな素材が銅貨2枚とは……いや、むしろ食が発展していない異世界だからこの値段なのか?と思う


「もっと良い肉あるぜ?あんな骨ばっかの肉じゃなくてよ」


「いや、アレが良い。あれを買おう」


骨ばっかりと言うが、この距離でも十分に肉が骨についているのが見える。十分に食材として活用できる


「まぁ良いがな。おい、銅貨4つだす。2ブロック貰うぜ」


「あいよ!ガイさん!どうせ捨てる部位だから、おまけで1個付けときますよ」


ガイの顔で1ブロック増えた、これは嬉しい誤算だな。俺はガイが背中に背負った巨大な豚バラ……俗に言うスペアリブを見てにやりと笑みを浮かべるのだった……



メニュー3 スペアリプ



次回は祭り当日となります。食べているオーガやエルフの視点とかも書いていけたらと思っています、そして次のメニューはスペアリプ。どかんと焼いていくのを書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします


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