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王城にて 3

「もぉ~~~~~~、もっと遊びに来てくれてもいいのにぃ~~~~~~」


頭を胸の谷間に押し付けられる。とても気持ちいいが、とても苦しい。

これが『等価交換の法則』か。悪くないな錬金術・・・・・。


「ぶ、ぶみ・・・せん、アリ・・・じゃ・・・な・・・・でぶ (すみません、アリアじゃないです)」


「ん? ・・・・・ってアリアじゃない!? あなたは誰なの?」


少女は抱きしめているのがアリアではないと知ると、甘えたがりの子供のような口調から普通の女の子の口調に変え、ユウキを胸から解放した。・・・・・あぁ、行ってしまうのか俺のエデン。


たぶんこの少女がエリアーデ王女なのだろう。

アリアも美しかったがさすがは王女様といったところだろう、アリアに引けを取らない容姿を持っている。

長い金色の髪は三つ編みでまとめてあり、窓から指す日の光が艶やかな髪と白いきれいな首筋を照らしている。瞳の色はアリアと同じ青色だがアリアの鋭い目とは違い、優しそうな目尻が下がった大きな目をしている。

白にわずかに青みがかかった薄水色のドレスを着ていて、首からは銀と金色のペンダントを垂らしている。金色の太陽に銀色の三日月が合わさったペンダントだ。

身長もユウキほどではないが160後半くらいある。

そして、視線を引き付ける豊かな胸!! アリアにはない素晴らしいものを持っている。


「あ・・・・・えっと、私の名前は小松ユ――」


「しゃべんなって言ったわよね?」


「ヒッ!!」


ユウキの背後には、いつの間にかアリアが陣取っていた。

女の子とは思えないほどの低い声、後ろからビンビン殺意が伝わってくるので、正直ユウキは振り返りたくなかったが咄嗟に振り返ってしまった。

アリアの凍り付くような視線がユウキを射抜く。

先ほどと同じようにアリアは手のひらを前に出していたが、今度は青い『光』ではなく『水』が渦巻いていた。青い光は水を召喚するための魔力だったのだろう。


(見たらわかる、ヤバいやつやん!!)


「いやいやいや、王女様の質問に答えないのは無礼だとおも――」


「本当のことを言うと、しゃべるなっていうのは冗談だったわ。でも、最初の2つは本気よ。あと、瞬殺するのも・・・・・。あんた、『飢えた獣の目で見たり』、『いきなり襲い掛かったり』したわよね? というわけで、バイバイ」


アリアの手の上で渦巻いている水は、意思を持ったようにダガーの形になった。水でできているはずなのに、先端は鋭く尖っている。


(アカァァァァァァァン!! 殺される!!)


「誤解だ!! 王女様に下卑た目を向けるなんて不敬、紳士な俺がするわけないし、襲ってきたのは王女様の方だ!! 俺は無罪だ!!」


「そんなこと言って、クローゼットの後はタンスを開いて変なことしようとしてたでしょ?」


アリアはユウキに嘲笑を向けた。全てを見透かしたようなまなざし、この異世界には『人の心を読むスキル』でもあるのだろうか?


「クッ・・・・・なぜ分かった!?」


「え?」 (アリアとエリアーデ王女)


「え?」 (ユウキ)


「冗談で言っただけなんだけれど・・・・・」


アリアの冷酷な視線は、汚物を見るような蔑んだ視線に変わった。

ついでに言うと、さっきまで殺されそうなユウキを心配そうな目で見てくれていたエリアーデ王女様も、少し引いている。


「・・・・・読心術とか、なんかのスキルとか能力で当てたんじゃないの?」


「そんな便利な能力持ち合わせていないわよ・・・・・、まぁいいわ、サ・ヨ・ウ・ナ・ラ!!」


アリアの手の上で浮いている水のダガーに、光が灯りだした。

「ア〇ロ、いきます!!」といったところだろう。


「チクショウッッ!! これがかの有名な『孔明の罠』か!!」


ユウキがしゃべり終わった瞬間に、光り輝くダガーがユウキめがけて発射された。

ユウキも瞬間目を閉じた。


風を切るダガーの音、とても水が出しているとは思えないような鋭い音。

頭に当たれば脳みそにサクッ、首に当たればスパァァァァンッ・・・・・ボトッ、といったところだろう。

本日2度目の死の気配。


(死ぬッ!!)


・・・・・


・・・・・


・・・・・


(あれ? またセーフ?)


チラッと目を開けてみると、水のダガーは跡形もなく消えていた。

見えるのは豪華な王宮の一室と、悔しそうというか不満そうな表情のアリアが見えるだけだった。

・・・・・いや、よく見るとユウキの周りにとても小さな水滴が光り輝いて散らばっている。


「まぁまぁ、アリアちゃん落ち着いてぇ」


後ろにいたエリアーデ王女がアリアをなだめる。

ユウキはエリアーデ王女を、・・・・・救世主をその目に焼き付けるために後ろを振り向いた。


エリアーデ王女は掌をアリアの方に向けていた、その掌にはアリアと同じように青い光が集まっている。

目を瞑っていたせいで、どうやったかは分からないがアリアの魔法を防いでくれたか相殺してくれたのだろう。

目が合うとエリアーデ王女様はユウキに微笑みかけてくれた、まさに女神だ。


(あぁ・・・・・私は一生あなたについていきます!!)


エリアーデ王女はユウキから目をそらし、アリアの方を向いた。


「血で絨毯が汚れちゃうじゃないぃ、殺すなら王城に設置された処刑場でやってよぉ」


「悲報!! この国の王女様は女神の皮をかぶった性格破綻者だった!!」


窓から差し込む昼下がりの日の光が、王女の無垢な笑顔を煌びやかに照らす、その美しさは女神と言っても差支えがないのに、彼女の口から出たワードはすべてを台無しにした。

ユウキが心の中で王女様に捧げた忠誠は、数秒でもろく崩れ去った。


「あ、ごめんなさい!! 私ってアリアにはついつい本音を話してしまうの、気を落とさないで!!」


「わざと俺を傷つけようとしてるよね!? ゼッタイ!!」


(まぁ、でもアリアに打ち解けているのは本当だろうな。俺とアリアでは口調が全然違う)


ユウキに対しては公用であろうしっかりとした口調だが、アリアに対しては甘えるような子猫ちゃん的口調だ。もちろん表情を一瞬で変わる、もう・・・・・本当に一瞬だ。


「それでぇ、今日は何しに来たのぉ?」


(俺との会話はもう終わりなんだンネ・・・・・)


エリアーデの質問を境に場の雰囲気が変わった。

ミジンコを見るような目でユウキを見ていたアリアは、真剣な表情でエリアーデを見つめた。エリアーデも何かを察して、アリアを見る瞳に力が入る。


ユウキはというと、


(はぁ・・・・・早く魔法覚えて自分を守れるようにしないと、このままだとそう遠くないうちに違う異世界行きになってしまう・・・・・)


「・・・・・・・・見つかったわ」


アリアは目を閉じ、数秒の間なにか自分の感情を押し殺すように少し下唇を噛んだ後、目を力強く見開いた。


「見つかったのよ・・・・・・・、32代目の『賢者』が」


アリアとエリアーデの視線は、ユウキの手にはめられた指輪に集まっている。

公園でダン〇ルドア先生似のおじいさんに貰った指輪に付いている赤い小さな宝石は、いつの間にか何色にも染められていない透明な宝石に変わっていた。


「でも魔法の前に衣食住なんだよなぁ、この少女2人は助けてくれるどころか嘲笑いながら俺を荒野に放り出すだろうし・・・・・。優しくてかわいいメインヒロインか、設定画面と難易度変更ボタンはよ・・・・・って『賢者』?」


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