王城への道のり
市場から外れて裏路地に入ったので人通りが少なくなり、やっとユウキは少女に追いついた。
「はぁ~、やっと追いついた。少しくらい待っててくれてもいいじゃん。・・・・・そういや、名前まだ聞いてないんだけど聞いていい?」
「あなたが遅いからわざわざ市場から外れて人通りの少ない裏路地を通ってやってるのよ、感謝して欲しいわ。それに名前を聞くときはまず自分から名乗るべきでしょ。まぁ、あなたが名乗っても私は名乗らないけれど。分かったら黙ってついてきて」
少女はユウキと顔も合わせず、冷たく言い放った。ユウキは少女の機嫌がよろしくないのを察知し、言われた通り黙って少女についていくことにした。
異世界の裏路地には、
やはりヤバそうなチンピラが少なからずスタンバっているもので、
彼らは一様に、僕たちをか弱い子羊を狙うような目で見てくるので、
その度に僕は心の中で「メ、メェ~~・・・・・」と鳴(泣)いた。
しかし、チンピラたちは少女を見ると、いや、視線から察するに少女の着ている服装を見ると、途端に怯えて僕たちから目をそらした。
え? 襲ってこないの? ・・・・・フハハハハハ、雑魚共め、俺の連れに臆したか!!
裏路地を進むこと約20分、十字に交差する大通りに出た。交差する4本の大通りのうち、手前の3本は馬車が何十台も砂煙を上げながら走っているが、奥の大通りは馬車が数台しか走っておらず、人の数も少ない。その代わり、その大通りを20メートルほど行った先には立派な門と、強固な城壁や塔が築かれていた。門の前では門番が馬車や通行人を検閲をしている。そして門のさらに向こう側には、大きな白いお城が建っていた。
「・・・・・えっと、目的地ってあの門の向こう側じゃないよね?」
「いいえ、残念。門の向こう側よ。・・・・・さっき黙ってついてきてって言ったよね、なんで言うこと聞けないの? バカなの?」
「で、でもあの城、ぜったい王じょ――」
少女の殺気のこもった目は、最後までしゃべることを許してくれなかった。。
もともとキツい性格なのだろうが、ここまでくるとユウキも薄々気づく。
(嫌われてね、俺?)
「渡るわよ」
「え?」
ユウキが少女の方を振り向いた瞬間、少女は疾走する馬車の中に飛び込み、慣れたように間をすり抜けて向こうの通りに渡ってしまった。
そして、何事もなかったかのように門に向かって歩き出す。
「ちょーーーーーーーーい!!」
言っては何だが、ユウキは信号をちゃんと守るタイプの人間だ。他の人が赤信号で渡っていても、まったく車が来なくても、青信号になるまで待っている。そんなユウキに、何十台と走り抜ける馬車の猛攻をすり抜けて、向こうの通りに渡ることなど出来はしない。
(・・・・・まぁ、信号守らない人でも無理だろうけど)
少女はユウキのことなど気にも留めずにどんどん先に行ってしまう。
渡ろうとしたら絶対馬車に轢かれるし、ついて来いと言った少女は自分をおいて行っちゃうし、なんか少女に嫌われるし、正直、来た道を引き返したいとユウキは思った。
しかし、引き返したところで何もすることないし、そもそもこの世界について何も知らないからどうやって生きていけばいいのか分からない。
今は少女についていくしか道はない・・・・・。ユウキは馬車の群れに飛び込む決心をした。
馬車の列は4つあり、列の間にはちょうど人ひとり立てるくらいの隙間が空いていたので1列ずつ突破することにした。
馬車の猛攻の隙をついて最初の1列に飛び込み、ギリギリで列と列の隙間に入り込む。目の前を走り去る馬車たち、そしてタイミングを見計らって、また馬車の列に飛び込み隙間に逃げ込む。あと2列で渡り切れるところまで来た。
「よし!! あと半分!!」
しかし、次の馬車と馬車の間には、人が入り込むほどの隙間はなかった。これでは一気に駆け抜けるしかない。
少女は、すでに門に着いて門番と話をしている。
「チクショウ!! 行くしかねぇ!!」
馬車の列の隙間が重なった瞬間に、ユウキはその中に飛び込んだ。
最初の馬車はなんとか当たらずに済んだが、2つ目の最後の馬車はどうやら間に合いそうにない。
(クソッ!! ダメか・・・・・)
・・・・・時間が遅く感じる。
横を向くと、迫りくる馬車、馬を走らせている行商人っぽい人の驚いた顔が目に入った。
前を向くと、さっきまで門番と話をしていていた少女は、ユウキを見つめていた。
目が合う二人・・・・・今にも馬車に轢かれそうなユウキに、少女は微笑みかける。
初めて見た少女の微笑みは、他に比べるものがないほど端麗で、・・・・・そして驚くほど冷たかった。
(死ぬ!!)
ユウキは目をつぶった。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
「・・・・・あれ? 死んでない?」
目をゆっくり開けると、・・・・・・・ユウキは宙に浮いていた!!
「うおっ!! 浮いてる!!」
足の下を走って行く馬車たち、街行く人々の視線がユウキに集まる。
周りには風が渦巻いている。どうやら、この風のおかげで宙に浮くことができているようだ。
風は、ユウキを歩道の上まで運びいきなり消えた。
「ごふしっ!!」
浮力のなくなったユウキはそのまま地面に激突した。そのせいで、多少のかすり傷やあざができたが馬車に轢かれるよりは全然良い。できればそっと降ろしてほしかったが・・・・・。
「な、なんだったんだ今のは? ・・・・・もしかして俺の力!? キャッホーーーーーーイ!! やっぱり異世界召喚はこうでなくっ――」
「ちげーよ、頭大丈夫かお兄さん?」
「ファッ!?」
声のする方に振り向くと、少年が蔑みと苛立ちの視線を向けながらこちらに歩いてくる姿が目に入った。
見た目からして10代前半ぐらいの男の子で身長は145cmくらい、茶髪のストレートで深碧色の瞳を持っている。今は蔑んで鋭くなっているが、それでもけっこうパッチリした目でショタコンのお姉さんたちには人気がありそうだ。
黒い皮手袋を付け、赤い線で刺繍された黒いコートを着て、汚れ1つない白いズボンを穿いた姿は10代前半の少年には普通似合わないが、整った顔立ちをしたこの少年には自然とジャストフィットしている。
ただ少年の言葉遣いとは1ピコメートルも合ってはいないが・・・・・。
腰には金色で装飾された黒を基調としたレイピアを帯びている。
そして、背中からは鷲のような立派な翼が生えている。きっと、この少年は鳥の獣人なのだろう。
(鳥も獣の中に入るのかな・・・・・?)
感想とか貰えると嬉しいです。
『批判コメ書かれるより無反応の方がつらいって、それ底辺作家たちの中で一番言われてるから』
言われてるから!!