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レベマで駆け抜ける異世界転生!!  作者: 真理雪
第1章・レベマで異世界へ
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#8,紅の符術士 4

 はい!こんばんは真理雪です!こちらでは大分久々ですね!忘れられてそう…。では、どうぞ!


 森の中。いつもなら静かな緑豊かな森の中で響く鉄と鉄がぶつかり合う音。魔獣も少ない北の森。その開けた場所で交錯する二つの剣閃。


 一つは剣士のような出で立ちで長剣を振るう人族の男性。


 もう一つは赤い着物をはためかし、一本の刀を操る狐族の女性。


 一見、勝っているのは男性の様に見える。それもその筈、攻めているのは男性で女性の方はそれを受け流し、防戦一方になっているように見える為だ。しかし、それは大きな間違いだった。


「くっそ!舐めてるのかテメェ!!」


「ふむ?何がじゃ?ちゃんと戦っておるじゃろう?」


「糞が!」


 そう男性は吐き捨て、後ろへと一旦退避する。

 彼は肩で息をする、対して女性は涼しい顔で意地悪そうな笑みをその整った顔に張り付けていた。

 男性が苛立っている理由は凄く単純なものだった。攻撃が当たらない。自身が振るう剣を全て捌かれ掠りもしなかったのだ。そして───


「なんで攻撃してこねぇんだよっ」


 相手からの攻撃がなかったのだ。自身の攻撃を全て捌かれ、その上相手からの攻撃がないとすると馬鹿にしているようにか思えない。相手が余裕がなくて防戦一方になっているのならばまだいい。しかし相手は薄ら笑いをしながら何かを確認するように見回すだけ。反亜人論者の彼にとって屈辱的でしかなかった。


「いや、少し確認したいことがあったのじゃ。ああ、もしやそなたのプライドを傷つけてしまったかの。それはすまないことをしたのじゃ」


 彼女は言葉ではそう言うが態度は全くといって詫び入れておらず変わらず挑発的な笑みを湛えたまま男性を見据える。


「さぁ…続きをするぞそなたよ。大丈夫じゃ次からは本気でやってやるぞ。一瞬じゃがな」


 そう言って女性は刀を構える。刀の切っ先を相手に向け刃を自身の目線で水平にして構える。──霞の構え。それは剣技ではない刀技ならではの構え。


()くぞ。妾の本気…見せてやろう」




 ーーー




 俺は自身の愛刀を構える。


 “真眼”───


 自身の紅の瞳に仄かに輝きが宿る。スキルを発動させた俺は通常とは倍以上の回避率と加速力、そして攻撃の精度が上乗せされる。

 唐突に飛び出した俺のスピードに若干遅れながらも男性は剣を振りかぶる。上段の構え。男性は魔力を纏わせた剣を高々と上げ俺が近づくと同時に振り下ろす。このままでは俺の脳天に叩きつけられるであろう剣閃を見、彼は()ったと確信したのかほくそ笑む。しかし、そんなことは百も承知だった。

 俺は目の前で急停止し刀で剣を受ける。そのまま鎬の部分で滑らし斬る方向をちょうど俺から見て右側へ落ちるように変えてしまう。


「なっに───」


 男性が何かを言う前に俺は素早く彼の右腕を掴む。正しくは彼の手甲をだ。そうすると俺は刀をその場で放り出して強引に男性を振り回した。


「のわっ!?てっめっ!なにを───」


 強引にやり過ぎたせいか男が罵声を上げる前に腕の手甲がすっぽりと抜けてしまい男性だけが勢いが余り飛んでいってしまう。まさしくそれこそが俺の狙いだった。


「フィーナ!!今じゃ!」


 俺は高々と声を張り上げ号令する。


 突如、それは起こった。茂みを踏み潰し落下した男性の地面一帯に緑の魔方陣が描かれる。彼が気付き逃げようとしたところで遅かった。魔方陣から放たれた号風で彼の身体は簡単に上空へと持ち上げられ、その回りで光輝くいくつもの魔方陣から大きめの水の球が召喚される。


 ───“アクアパニッシュ”


 高いソプラノの美声が発される。瞬間、水の球は急激に膨張し爆発した。男性は逃げ場もないまま防御すら満足に出来ずに衝撃を受ける。彼の意識をその一瞬で刈り取るにはそれで十分だった。




「フィーネっフィーネ!よかった!よかったですー!」


「お姉ちゃん!うぇぇぇっ恐かったよぅーー!」


 抱き合い喜び合う彼女たちその傍ら様子を窺っていた俺は落ちていた刀を拾い上げ鞘に納める。


『どうにかなったようでよかったです。一時はどうなることかと思いましたが…』


「そうじゃな…魔術が効かないとか言われた時は少々焦ったのじゃが…。まあなんともなかったのぅ」


 俺は右手に持っていた手甲を見つめながら言う。それは赤い刻印が刻まれたもので明らかに魔術等の類いが施された物であった。

 初めはそれに警戒していた俺だったが鑑定眼で観察していく内にそこまで脅威的なものではないことが分かり、そして魔術のみにか効果を発揮しないスキルでは今の俺には無意味な代物であることに気付いた。それが分かれば話は早い。事前に決めていたフィーナの魔術を相手に喰らわすため手甲を強制的に外し、的になりやすいような場所に投げ飛ばす。その目論見が見事に収まり事なきを得た訳だ。


「ふぅ…。ラタトスクあの娘を助けに行ってあげるのじゃ。流石に一人じゃしんどいじゃろう」


『分かりました。では、少し失礼します』


 俺がラタトスクに頼むと軽く頷きパタパタと彼女らの元へと飛んでいく。

 それを見送るようにして見つめる俺は大きな溜め息を吐いた。


 ここまでずっと緊張しっぱなしだった。目が覚めると違う世界で性別まで変わり種族までも変わってしまった。全てが変化したこの状況で“落ち着く”と言うことの方が異常だと思える。


 俺は空いていた左手を見ながら手を開けたり握ったりとを繰り返す。

 うん、しっかりと動く。これはまさしく自分の身体なのだと感覚が教えてくれる。手のひらだけで見てもスラッとした白く細い華奢な指。細い手首。男の時とは全然全くといって異なる身体の造形に心がざわめき落ち着かなくなる。こんな状態で、こんな心境で。俺はこの先やっていけるのか不安でしかなかった。


「か…か…で──カエデ様っ。大丈夫ですか?」 


 いつの間にか俯いていた顔を上げると目の前で綺麗なエメラルドの瞳が心配そうに見ていた。って近い近い!


「え…?あ、ごほんっ大丈夫じゃ!少し考え事をしていてな。すまぬのじゃ…」


 そんな状況に戸惑いつつも慌てて離れ謝罪を口にする。


「ああいえいえっ謝らないでください!こちらこそ申し訳ありませんっ。えっと…その…カエデ様…」


「??」


 彼女は急に指で髪を弄りだし少し頬を染めながら何かを言いづらそうにしている。そんな様子に首を傾げていると、決心がついたのか勢いよく顔を下げた。


「カエデ様!本当にありがとうございました!この御恩は一生忘れませんっ。返せるものがあれば返したいのですが…今はこんな粗末な身…ですので、この主命が終わった暁には一生を懸けてお返しいたします!」


「えっ…えっと…」


 彼女は真剣だった。それは当然だ。自身が守らなくてはいけない一人だけの妹を助けてもらったのだ。真面目な彼女の事だ。“一生を懸けて”と言う言葉は本気その物なのだろう。

 そんな真面目な彼女に俺は対してどうすれば言いか分からず仕舞いだった。えっと…と間を伸ばす言葉を呟きながら頬を少し掻く。そうして俺は極短時間で考え出した答えを口に出した。


「恩返し等、元より期待しておらぬのじゃ」


 俺の答えにえっと彼女は悲しそうな表情をする。


「ごほんっ。勘違いするでないぞ。妾は恩を返してもらうために助けたのではないと言っておるのじゃ。一生を懸けて返すなど妾がそなたの人生を潰してしまう事になるじゃろうが」


「えっそれは…ですが、わたくしがしたいことですから…」


「なるほど…。ならばそうじゃな…妾がもしエルフの国を訪ねた時に少し優遇してもらうと言うのはどうじゃ?」


 俺はいつもの強気な笑みを張り付け彼女にそう提案する。


「…妾は別にそなたに着いてきてもらいたい訳ではない。いや…えっと違うの…。妾は…そなたの人生も、そなたの妹の人生も潰したくなかったから助けたのじゃ。そなたの人生はそなただけのものであって誰のものでもない。だから、一生を懸けて返すなど言ってはならぬぞ」


 彼女は呆気に囚われたように呆然とし、目を瞬かせる。


「それに、恩返しと言うなら助けた妾が決めなければ意味がないじゃろう?別になくてもよかったのじゃが。無償の優しさ等怪しいだけじゃろうしな」


 そこまで言うと俺はその可愛らしい彼女の頭に手を乗せた。あうっと彼女は小さな声を漏らすが不満そうでもなく成すがままに撫でられる。何だろう撫でてるだけで自分も癒されそうだ。


「あの…カエデ様…」


 数分ほど撫でていると彼女は俺の名前を呼ぶ。


「カエデ様は優しい方なのですね…。そんなお方と出会えるなんて私は本当に幸せ者です」


「む…むう。そこまで言われるほど良い人間ではないのじゃが…」


「いえ…。そんなことはありません」


 彼女はしっかりとした口調で俺の言葉を否定すると、その澄んだ瞳で俺を見つめる。


「カエデ様はお優しい方です。強く美しく、そして何より誰かを助けるために動ける意志を持った素晴らしい方です」


 彼女は天使のような微笑みを湛え言葉を紡ぐ。


「ありがとうございます。カエデ様。改めてお礼を言わさせてもらいます。わたくしの命処か大切なフィーネをも助けて頂いて…本当にありがとうございました。エルフの国に訪れた際には誠心誠意優遇させてもらいますね。是非入らしてください♪」


 俺はその美しく可愛らしい彼女を見つめる。今度は俺が呆然とする番だった。


 助けられた命がここにあるではないか。俺の心の内で誰かがそう言った。不安でしかなかったこの状況で俺はこの力を使いきり彼女たちを助けられたのだ。


 世界を救うなんて今でも出来るか分からない。一般人だった俺が出来るなんて到底思えなかった。だけど───


「うむ。機会があれば是非、お邪魔させてもらうのじゃ」


 目の前の可愛らしい姉妹。その彼女らを救ったのは紛れもなく俺自信なのだと…微笑む彼女、フィーナはそう教えてくれた。それだけで俺の心はすっと軽くなったような気がした。

 鎬の部分で刃を滑らして回避するのって凄く格好いいと思いませんか?

 

 ……はい、読んでくれてありがとうございました!感想くれたら嬉しいです!いつでもお待ちしておりますよ?

 


 さて、投稿に関してですが…不定期更新ですね!次回のはもう書けてるのですが…ストーリー上で調整しないといけないところがあるので…多分まだ出せませんね…。いつも書いてたらいろいろと追加してしまう癖がありまして…書き上げないとどうなるか分からないんですよね…。


 今回もありがとうございました!次回も読んでくれたら嬉しいです!よろしくお願いいたします!

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