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レベマで駆け抜ける異世界転生!!  作者: 真理雪
第1章・レベマで異世界へ
5/51

#5,紅の符術士


「あっ…あのっ本当によろしいのですか…?一緒に探してもらって…」


「何度も言うておろう、大丈夫じゃ。それとももしやありがた迷惑か?」


「ちっ違います!迷惑なんて…そんなことありませんっ。その…こちらの事情なのに手伝ってもらうのが…その…申し訳なくて…」


 エルフの少女はおろおろと慌てながらコロコロと表情を変え忙しない。彼女には申し訳ないが俺にとってはそれが凄く可愛らしく写った。それはそうだ彼女は絶世の美少女と言うほかないほどの美形で今は深緑のローブなのが残念でならない。ドレスなどを着て着飾ればさぞや美しくなるだろうなと俺は独りで残念がる。


「なら、良いじゃろう。乗りかかった船じゃ。妾もそなたの妹を捜すぞ」


「うう…ありがとうございます…」


 彼女はうるうると涙をそのエメラルドのような瞳に溜め、懸命に泣くまいと我慢している。


「あうっ…」


 俺はそれを見て、つい彼女の頭を撫でてしまう。彼女は小さく呟いたがそれだけで俺のなすがままになっていた。


「心配無用じゃ。そなたの妹は妾が見つけてやる」


 俺は目を細め彼女を撫でながら、少し何故このようになったか思い返していた。





 時は少し遡る。俺とラタトスクが話に夢中で彼女に見つかってしまってからのことだ。


「わたくしの妹を見かけませんでしたでしょうか?」


 彼女は急いでいたようで慌てながらもしっかりとした口調でそう言った。


 (…………ラタトスク?フラグ回収が早くはないかのぅ?)


 (…………私のせいではありません…)


 俺は表情をひきつらせながらラタトスクに突っ込むがその仔竜はと言えばそっぽを向き無関係を決め込む。


「あっ…あの…」


「ああ、すまぬ。妹だったか??妾たちは見てぬな」


「そっ……そうですか…」


 彼女は見てわかるほどに気落ちし、悲しそうに目を伏せる。


「ふむ…。妾はかな…っとえーと…カエデじゃ。そなたはフィーナと言ったな?妹を探しておるのか?」


 俺は彼女にそう訪ねる。


「あ……。はい…その…実はわたくしと妹…フィーネは人族のギルドと言う場所に尋ねるために国から出てきたのです。ですが、少し目を離した所…フィーネがいなくなっておりまして…」


 彼女は心底悔しそうに唇を噛み、所々詰まりながらも事情を説明する。


 彼女の説明を要約するとこうだ。

 フィーナはエルフの国でやんごとない身分らしく。エルフの国の危機が迫っていることをギルドへ知らせに、と言うより助けを求めて来たらしい。何故なら今エルフの国には天魔の群れが列をなして迫ってきているらしいのだ。魔術に長けているエルフと言えども敵が天魔となれば部が悪く。渡り人がいればまだしもその存在はもう既にこの世界にはなく。今や天魔に対抗している者はギルドや騎士団のみで、それも決して対抗できているとは言えない。だが、今はそれにすがるしかない状況だった。天魔の群れは刻一刻と迫ってきている。もう猶予は少ないのだ。しかし…そのギルドへとの道筋で一緒にいた妹フィーネがいなくなってしまった。フィーナは大慌てで捜すが見つからず、たまたま見つけた俺たちにすがるように声をかけた───と言うことらしい。


 (え?何だか凄いことになっておらぬか?大丈夫なのか?)


 (いえっ…全然大丈夫ではありませんっ。ですが天魔の群れなんて…こちらの情報網では…)


 俺たちは彼女に聴こえないように小声で話す。なんと言うか…彼女の話が突拍子もなくて俄には信じがたいのだ。しかし…彼女が嘘を言っているようにも見えない。


「………。うむっそなたを信じるのじゃ。それで?そのフィーネとやらは何処で見失ったのじゃ?」


 俺は少し考えた末、結論を言葉にする。

 彼女は俺の言葉に驚き、幾度も瞳を瞬かせる。その仕草がいちいち可愛いのだが…それはさておき。まずは妹さんを捜すのが先だ。


「あっ…あのっそれってもしかして手伝ってくれると言う意味でしょうか…?」


「それ以外にないじゃろう」


 俺はにやっと笑顔を見せながら当然のごとく言い放つ。


「うあ…。あっありがとう…ございますっ」


 俺のその言葉を聞き、彼女は目に涙を溜めながらそう呟いたのだった。





 と、言うことがあり。俺たちは絶賛妹さんを捜索中なのである。

 一先ずフィーナが見失ったと思われる森の中まで戻って来てみたのだが…あまり芳しくはない。


「どうじゃ?何か思い出さんか?」


「すみません…」


「そうか…ふむ…」


 彼女は何も出来ないことに自身を責めているようで、その華奢な手で握り拳を作るっている。


 俺はと言えば少し気にかかっていたことがあった。


 (何だか凄く見られている気がするんじゃが…)


 そう、彼女と行動を共にしてからと言うもの何処からか視線が気になるようになったのだ。気配遮断スキルをしているのかは確認できないが何処かにその存在がいることは確かだ。


 (では、いい機会ですしスキルを使用してみてはどうですか?)


 (スキル…?ああ気配探知のことじゃな?)


 俺はラタトスクにそう言われて思い出す。

 そう言えばスキルと言うものをすっかり失念していた。この世界はゲームが現実になった世界。ゲームシステムと言うものが使えるのだ。


 (えーと…どう使うのじゃ…?)


 俺は使おうと思ったがそもそも使い方が分からないことに思い当たる。確かアイテムストレージの場合は名前を呟いたら出来たから───


 気配探知───


 俺は小さくそれを呟く。すると感覚が一気に広がり、周囲を見渡さなくても周りの様子が理解できるようになった。


「ほうっ!?」 


「えっ?どうかしましたかっ?」


「えっいやいや何でもない。何でもないぞ」


 咄嗟に出た俺の奇声にフィーナが驚きこちらを向く。俺は慌てて何でもないと手を振り否定するが彼女はその様子に疑問符を浮かべ首を傾げていた。


 (……ごほんっ。えーと…?…やはり誰かおるようじゃな)


 (その様ですね。今のところ殺気は感じられませんが…)


 気を取り直し俺は辺りに注意を向けてみる。するとやはりと言うか、俺の死角…俺の後方に何者かが陣取っているようだ。不自然に見えないよう少し自身の方向を変えてみるが、その者は音もなく動き死角を取ってくる。


 俺が狙われているのか…?いや…多分狙われているのはフィーナだろうなこれは…。俺は邪魔者と言うところかな…?


 俺は自分だけでそう結論付ける。

 理由はフィーナと出会ってから視線を感じるようになったことだ。気のせいかな?と思っていたのだが…ここまで露骨だとそうなのだろう。予想だが、フィーナと妹フィーネを捕らえるように言われていたがフィーナだけが捕らえられず偶然いた俺と言う邪魔者と出会い一緒に行動するようになった。結果、なかなか行動出来ずに今に至る。と言うところじゃないだろうか?


 (……相手はシーフじゃろうな。死角を取ってくるしの)


 (……流石カエデさん。馴れてらっしゃいますね)


 (……誉めても何も出ぬぞ…)


 俺はシーフの情報を思い出す。確かシーフには固有スキルでウィークアタッカーと言うものがあった筈だ。このスキルはその名の通り弱点を突く時に発動するスキルで弱点(ウィークポイント)に攻撃した際に攻撃が2倍になるものだ。弱点には属性による弱点と部位による弱点があり、シーフの固有スキルは後者に強くなるスキルであった。なので必然的にシーフの戦闘は初手で大体が決まることになる。すると今隠れながら死角を狙っているのはシーフしか居まい。

 実はウィークアタックと言う似たようなスキルも存在しているのだが、それは忍者のジョブしか習得出来ないものでそれは先ほど言った属性による弱点に強くなるスキルであった。


 (えーと…ラタトスク?)


 (はい、何でしょう)


 俺は仔竜の名を呼び、訪ねる。


 (そなたはこの辺りの地理に詳しいのか?)


 (はい。…と言っても地理に詳しい訳ではありません。私は一定の範囲の地形を検索出来るので詳しいと言ってしまえば語弊があるかもしれませんね)


 (ふむ…なるほど。なら、この辺りに開けた場所はあるかの?)


 (分かりました。検索します)


 ラタトスクは俺の提案に頷き、フィーナに見えないよう俺の背後で検索しだす。

 俺はと言うと少し離れた所にいた彼女に近づいてゆき声をかけた。


「フィーナ。少し良いかの?」


「はい、何でしょう?」


 俺は不思議そうに見つめる彼女をひょいっと持ち上げる。お姫様抱っこと言うやつだね。


「ええっ!?かっカエデ様!?なにをっ?」


「む?やっと名前を呼んでくれたなフィーナ」


「あ、その…えっと…」


「まあそれは良いの。先に謝っておくぞ。フィーナよすまぬ。少し強引じゃが…これしか方法が思い付かなかったのじゃ。もっとスマートにいければ良かったのじゃがの…」


「えっ…えっと??それはどういう…」


 彼女は恥ずかしいのかテンパりながら顔を赤くし言葉を口にする。しかし、それに俺は答えることはなかった。


 (検索できました。私が先導します)


 (うむ。任せたのじゃラタトスク!)


 ラタトスクが羽ばたいたと同時にドッと俺は地面を蹴る。予想だにしないほど速度が出た。はっや!?!?


「ひっ!?ひゃぁぁぁぁ!?はっ早いです!早いですぅ!!??」


「黙っておるのじゃ!舌を噛むぞ!」


 俺は腕の中で縮こまる彼女を一層抱き締め木々の合間を縫って尋常じゃないスピードで駆け抜ける。

 走り出した時に俺自信もこの速度にビックリしたのだが、何故か身体がついてきていた。何処に着地すれば良いのかとかあれぐらいなら飛び越えられるとか、文字通り手に取るように理解できるのだ。これが俗に言う"身体が覚えている"と言うことなのだろう。


 案の定、俺達を狙っていたであろう気配は慌てたようにこちらへ着いてくる。よし、今のところは思惑通りだ。


 (もう少しで森を抜けます!)


 木々の合間を駆け抜けていく俺はラタトスクの言葉に最小限で頷き返すと、目線を前方へ戻す。確かに木々で少し薄暗かった森でそこだけが出口のように日光が差している場所がある。あれが例の場所だろう。


 俺はうだうだと考えていた思考を打ち切り、一直線にそこを抜ける。

 突然の日差しに少し目が眩むがそれに関係なく身体は動く。開けた場所に出た瞬間、俺は急停止し地面に一直線に痕跡を残しながら静止する。


「うきゅぅ……」


 腕の中を見れば彼女は目を回しており、俺にしがみついた体勢で意識を飛ばしていた。


「あ、意識を失っておるのぅ…。仕方ないかの…」


 俺は彼女をそっとその場に寝かせ、後ろを振り返る。


「そこに居るのじゃろう?出てこないならこちらから行くが?」


 今しがた出てきた森の出口に向けて俺は言葉をかける。出てこないならなら自分から行くつもりではあったが、少し待っていると気配が動き出した。


「あらら…まさか嬢ちゃんに俺の気配を探知されるとはねぇ…。いやはや、おじさんも歳をとったもんだ」


 聞こえたのは男性の声だ。へらへらとしたにやけ顔をしながら頭をかき、木々の間から歩み出てくる中年の男性。


 その男に俺はあるスキルを使う。



【名称】レイス・エトワール

【レベル】63

【性別】男性

【ジョブ】シーフ

【職業】闇ギルド冒険者

【種族】人族



 鑑定眼のスキルだ。これは鑑定したものの情報を見ることが出来るものでプレイヤーなら誰でも持っている必須スキルであった。


 やっぱりシーフか、レベルは63……?


 俺はそこまで確認してからある一点で視線が止まる。


 "闇ギルド"冒険者───聞いたことのない言葉だった。


「なあ、嬢ちゃん。ちょっと俺はそこのエルフに用事があるんだよ。大人しくおじさんに渡してくれないもんかね?」


 俺が沈黙していると相手が先に口を開いた。俺はラタトスクに闇ギルドの詳細を聞こうと思ったが…そんな無駄話しは出来なさそうだ。これは非現実(ゲーム)ではなく現実(リアル)なのだ。そう思い出した俺は一層気合いを入れ直す。


「おいおい、そんなに睨まないでくれよ。渡してくれ際してくれたら嬢ちゃんには手を出さないからよ。おじさんも手荒な真似はしたくないのよ」


 彼は相変わらずへらへらとしながら言葉を紡ぐ。この男、へらへらとしてはいるが全然隙がない。相当な経験者のようだ。


「…。断ると言ったらどうするのじゃ?」


「うん…そうだねぇ。その時は痛い目をみてもらうしかないだろうね」


 俺の質問に律儀に答える男性。不真面目のような雰囲気を出してはいるが意外と律儀な性格なのかもしれない。


「そうか。なら残念じゃったな。その提案、断らせてもらおう」


「あらら…交渉決裂かぁ。だろうと思ったよ。仕方ねぇなぁ」


 俺の言葉に彼はめんどくさそうにため息をつき、腰から二振りの小剣を抜き放つ。



 それは唐突だった。


 男性は5メートルほどの距離を一瞬で詰め、風の如く剣を振るう。その剣線は狙い違わず俺の首を狙っており、そのままだと一撃で致命傷を受け絶命する攻撃だ。尋常じゃない速度の剣撃。それを俺は───ひょいっと一歩下がるだけで避けた。


「!?」


 男はその予想外の出来事に若干目を見張る。普通ならばこの一撃で終わる筈のものがそこに生きてあることに驚愕し、舌打ちをしながら飛びすさる。が───


「逃がす訳ないじゃろぅ?」


 俺は相手から飛び込んできたこの好機に右足を踏み込む。


 真眼────


 そのスキルを発動した俺の瞳は仄かに光を宿し、腰の刀を抜き打ちで放つ。


 迅速の居合い斬り。胴を薙ぐその一閃は男を捕らえ切り裂く。しかし、男はその剣線を二つの剣で紙一重で受け止めその衝撃のまま後ろへ飛ばされる。

 

 案の定、受け止めた小剣は腹から二つに別れ四散し、想定外の攻撃を受けた男性は空中で状態を安定させるために躍起になる。

 それを俺が狙わない筈がない。


 このゲームはアクションバトルでも有名なものだった。奥深いゲームシステム、シンプルな操作性。それらをうまく組み合わせ両立させたのがこのゲームであった。特に対人戦では色々な戦略が存在し、その戦略の中で相手の隙を作り出しそこを狙うのはもはや常套手段と言うべき戦い方だった。


 俺は地面を蹴り、自身のスピードだけで男に追い付く。


「くっそっ!!」


「相手が悪かったのぅ?」


 吐き捨てるように悪態を吐く男性に対して俺は相手を挑発するようにニヤッと笑みを見せる。


 たぶんそれが男性の最後の光景だっただろう。

 俺はその勢いのまま力任せに左手を突き出す。もはやレベルの暴力とも言えなくもない、自身のステータスだけの腕力(パワー)だけの掌底打ち。


 男性は咄嗟に防御行動をとるがそれに関係なく衝撃は放たれ、先ほど出てきた森の中へ再び飛んで戻って行く。何本もの木々を押し倒しながら飛び、遂には大きな大木にぶち当たり止まった。


『やり過ぎじゃないですか?』


「…わっ…妾のせいではないのじゃ…」


 冷ややかに言うラタトスクの言葉に、俺は苦し紛れにそう言うしかなかった。


 まとめて放出!!


 ここまで読んでくれてありがとうございました!どうでしたでしょうか?面白かったですか?楽しかったでしょうか?はたまたしょうもなかったでしょうか…?


 誤字脱字があれば言って下されば助かります!


 投稿に関しては貯めてから放出するという感じになるかと思います。切りのいいところで終わらせたいので。なのでペースはやはり遅めになりますが、思い出したら見てくれると嬉しいです!

 

 では、また次回!よろしくお願いいたします!

 

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