#30,エルフの地へ
遅れて申し訳ありません…。もういっそのこと次の日曜日に投稿してやろうかと思っていたのですが…。まあ切りの良いところまで書けたのでまあいいか投稿しておこうと。文字数少な目ですが。たぶんそろそろ多くなるかも…?
始まりの町“アルバ”は地形として細長い土地を持つ。もともとは帝国と王国の中継地点として発展した町であり、今でこそ唯一の中立地域として成り立っている町だがここまでになるのには幾度となく小競り合いがあり、戦時代では占領されたことも一度や二度ではなかった。それだけに何故今はここまでの権力があるかと言えば、理由の一つに“冒険者”と言う言葉が挙げられるだろう。
“冒険者”はこの町には切っても切れない存在であり、その存在は断ち切るには大きすぎるものである。
そんな冒険者を纏めるギルドの一つである“アルバ支部”。町の中央を陣取るように建てられた大きな建物は何度も何度も行われた増築と改築で内装は迷路のようになってしまっていた。帝国にあるギルド本部に次いで大きな建物であり、複数の場所にある冒険者のギルド支部では一番の大きさを持つギルドであった。
そんな冒険者が一番集うであろう、集会所で一際目立つ一団がいた。
怪しい深緑の外套を被り、素顔を隠す大小異なる四人組と世にも珍しい白の仔竜を従えた、露出度の高い赤の着物を着た狐の女性。
まだその四人組は良かった。見た目は怪しさ満点の格好ではあれど、旅人なら素性を秘匿することは無くはない。しかしだ。その先頭に歩く、少女とも女性とも取れる彼女は目立つ服装に負けず劣らず存在感のあるファッションをしていたのだ。そう…狐の仮面である。
「なんだアイツらは…」「どこかの道化師か?」「いや知らん」「怪しいな…」「─────
視線としては困惑に疑惑、そして少なくない欲情の視線。まあそれは恥ずかしげもなくスタイルの良さを見せつけている狐の女性に向けられているのがほとんどではあったが。
そんな視線を一点に集める彼女らは人の合間を通って受付へと進んでいく。
「よ、ようこそ冒険者ギルドへっ。えっと…ご用件は…」
「そう畏まらなくてもよい。妾は冒険者じゃ」
戸惑いを見せるまだ若い受付嬢に左腕につけたブロンズプレートを見せながらカエデは言う。
「え?なんじゃ。そんなに妾は怖いかのぅ?」
「そっそういう訳ではっ」
口調は独特だが軽い調子で話しかけてくるカエデに受付嬢は両手を振って慌てて否定する。
「まあ良い。タマネを呼んでくれるかの?カエデが来たと言えばわかる筈じゃ」
カエデの発した言葉に一瞬、受付嬢はポカンとしてからはっと気付いたように返してきた。
「…もしかして副ギルド長のことですか?」
冒険者で副ギルド長のことを名前で呼び捨てる者はそうはいない。何故なら彼女は規律には厳しい性格だからである。元やり手の冒険者であったことも有名な話であり、優しくほっとけない性格ではあるが基本的に真面目で自身にも皆にも厳しいクールビューティーと言うイメージが染み付いているため、この少女はタマネと本名で呼ばれても副ギルドマスターのことだと当てはまらなかったのだ。
「そうじゃが…他に誰かおるのか?」
「いえいえ違いますっ。えっと…副ギルド長を名前で呼んでいらしたのが珍しくて…」
「む、そうなのか?」
「はい。呼んでいるのはギルド長のマダムさんぐらいで…」
と、話をしていると横から手のひらをパンパンっと叩く音が聞こえた。振り替えればそこには件の女性が。
「話はそこまでです。後がつっかえていますので貴女は仕事に戻ってください。こちらは私が受け持ちますので」
キラッと眼鏡を反射させ、その若い受付嬢に指示する彼女。受付嬢は慌てて元気よく返事をすると待っていた人たちの案内を始める。
横で見ていたカエデたちにタマネは声をかける。
「では、ご案内いたします。お客様方」
ーーー
俺たちはタマネさんに連れられある一つの部屋に招かれた。そこは広めに作られた仕事部屋のようで一つの事務机と来客用のテーブルにそれを挟むように置かれた黒のソファ。本棚が壁際に複数並び、整理整頓された資料と本が整列している。綺麗に整理された部屋の主は既に準備していたらしい給仕セットを使って飲み物を用意していた。
「どうぞお掛けになって下さいエルフの方々。そう用心されなくても大方の経緯はカエデさんに聞き及んでおります。あ、カエデさんはこちらへどうぞ」
“エルフ”と言葉が出た瞬間、当の四人に緊張が走ったようだが、それを見越した彼女は先回りして労る言葉を返す。その様子に俺は流石手慣れてるなと自然に感心してしまった。
エルフの四人は一度視線を合わせると隊長らしき人物と背の低い人物がソファに座る。それ以外の二人はその背後に陣取るように立った。
俺はと言うとタマネさんに言われた通り向かいの席に座り、彼女は彼らが座った後に飲み物を置いてから自身の隣へと座った。
「エルフの方々は何をお飲みになるのか分かりませんでしたので、ご勝手ながらここで一番良い紅茶を用意致しました」
「お心遣い感謝する」
「いえ当然のことをしたまでです。それで本題に入る前に確認したいことが二点ほどあります」
タマネさんは一度言葉を切ると四人を見回してから何故か俺を見た。
「せめてお顔を見せてもらえませんか、皆さま」
そう言われて気づいた。確かに四人はフードで顔を隠し、俺は仮面を被っている。それが異様な雰囲気を醸し出していた。
「申し訳ない。貴女方にここまでしてもらって素顔を見せないのは失礼ですね」
先に動いたのは彼らだった。謝罪をした彼が確認するように仲間を見回し、右手を意味深に振ると彼らはそれにすぐに従う。
ほう…とつい口に出てしまうほどにそれは壮観だった。エルフとは主に精霊を崇める種族だ。ゲームの設定では精霊に一番近い種がエルフだと載っていた。それ故に美男美女が多い。いや…それが多い理由なのかは定かではないのだが…エルフ族は整った容姿の者たちが殆どなのは確からしい。人族とエルフ族が争ったのはそれも大きな一因であったようだ。
そんな彼らが一斉に素顔を見せたらどうなるか。
隣のタマネさんも息を飲んだ様子で黙り混む。
四人は耳が長い共通する特徴を持ちながら全て違う美しさを持っていた。
隊長だろうと思わしき彼は優しそうな瞳に闘志を宿らせ、長い金の髪を後ろで一つに纏めている。イケメンの優男と言うのは誉め言葉だろうか。
その隣に座る一番幼そうな少年は少し伸びた髪を左右に分けた清潔感のある美少年だ。そのマリンブルーの双眸には強い意志が宿っている。
そのすぐ後ろには大柄な男性。四人の中では一番大きく一番筋肉質な男だ。短く刈り上げた金髪に鬱陶しげな視線を放つ彼。恐らくだがこの中で一番の変わり者と見た。
そして最後。男性の隣で隊長の後ろで静かに立っている女性。手入れされた金糸のような長い髪をサイドアップに纏め、その髪が肩を流れる様はある種の麻薬のように艶美である。決して言い過ぎではない筈。線の細そうな見た目とは裏腹に少しつり上がった翡翠の瞳には強気そうな色が垣間見える。その双眸は用心深くタマネさんではなく…俺を見据えていた。
「カエデさん?」
「む?ああ…妾もか仕方ないのぅ」
タマネさんはこちらへ何か言いたげな視線を向ける。その理由は聞かなくても予想はつく。
別に顔見知りなのだから良いのではないかとも思ったがそう言う問題ではないのだろう。あちらが素顔を見せたのだからこちらも見せなければ失礼か。
俺は仮面を外すとストレージに投げ入れる。近くに投げ捨てた仮面は白い光に包まれて消えていく。始めの内は慣れなかった“アイテムストレージ”だが今ではそこそこ上手く使えているのではないだろうか。その何もない空間に鞄のようなイメージを浮かべてそこへ投げ入れる。出す時も同様で袋の口から何かを取り出すようにイメージしながら手を引き抜くとアイテムを取り出せる。今思えばつくづく便利なシステムだなぁと感心する。ここまで上手くなったのは恐らく“魔女”との戦いでアイテムを出し入れしたからだろう。コツを掴めば簡単である。
ふと、仮面を外した瞬間…四人の視線がこちらに向いた気がした。ん?俺の顔に何かついているだろうか───と思った俺はペタペタと頬を触り確かめる。
そんなことをしている間にタマネさんは本題を切り出していた。
「皆さんがエルフ族だと聞いたときは驚きましたが…今はこのギルドの客人です。ここまで訪ねてきた理由…お聞かせ願えますか?」
それを聞いた隊長格の彼は頷いてこう返す。
「分かりました。では、この第二師団団長のアリウス・ローレンツが僭越ながらご説明させてもらいます」
ギルド長とギルドマスターは同じ意味で捉えてください。ギルドマスターギルドマスターと連呼していると読みにくくなりそうなので…。正式名称はギルドマスターで略称がギルド長と言うことで。
あと、ラタトスクはどこ行ったと思われるかも知れませんが。人目があるところでは基本喋りません。小声でカエデと喋ることはあるかもですが。大体カエデの近くにいると考えておいてくれると良いと思います。
いつもお読み頂きありがとうございます。誤字脱字矛盾点など気になる箇所があれば言っていただけると助かります。
では、次回も会えることを楽しみにしております。




