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レベマで駆け抜ける異世界転生!!  作者: 真理雪
第3章・森の旅人
25/51

#24,プロローグ

 サブタイトルが決まりませんでした…。


 俺は人混みの雑踏の中、歩みを進めていく。そうして見つけた比較的人の少ない路地裏に入り込み、俺は頭だけを角から出してそれを覗き見る。その姿はさながらスパイ映画の主役のように静かに華麗に優雅に陰の闇に隠れる。今の俺は…誰の目にも止まらないアサシンだ。


「………」


『………』


「…………何か言いたそうじゃな?」


『凄く目立ってますよ。カエデさん』


 俺の側でパタパタと可愛らしく翼を羽ばたかせる影が一つ。それは白い仔竜。実態は女神さまから遣わされた神の遣い。名前はラタトスク。大仰な名前に反して小さな身体を持つ俺のサポート役である。


『あと、スパイとアサシンは別の意味だと思いますが…』


「に、似たようなものじゃろっ。細かいことは気にするでない!」


 俺は親のお小言のように揚げ足を取ってくるラタトスクに小声で怒鳴ると言う器用なことをしてから、また同じ様に角から隠れるようにして顔を出す。

 俺はどうしたものか…と視線の先にあるある物(・・・)を凝視しながら悩んでいた。


 『掲示板』と言うものがある。日本でもよく見られる地域の貴重な情報源である。自分の住んでいた場所ではその一定の地域の情報のみしか載っておらず、よく選挙の広告などが貼ってあったりした。夏場になれば公園や小学校で夏祭りだとか花火大会だとかの広告なども増えたりして、その地域では確固たる一つの情報源となっていた筈だ。…俺はほぼ関係無かったけど…それはさておき。


 始まりの町“アルバ”ではその掲示板がいろいろな情報源となっている。例えば、アルバイトの募集や新しいニュース。落とし物の捜索願いだったり、迷子のペット探しなどである。落とし物やペット捜索などは冒険者ギルドの管轄ではないのかと思う人もいるだろうが、こういうギルド系に依頼するためには少なくない依頼金が必要となってくる。その為、依頼したくても頼めないと言う場合がままあるらしいのだ。ギルドも民間のために働くというのが社訓ではあるが決して優しい訳ではない。こうしなければギルドが運営できないと言うのもあるだろうし、お金が発生するからこそ確証がおけると言うのもあるのだ。冒険者に怪しい依頼を受けさせて、もし想定外の死人が出てしまったら…もし事件が起きてしまったら…そこのギルドの信用は地に落ちる。冒険者は魔獣討伐依頼などの危険を伴うものが大半ではあるが、危険度の低い依頼もたくさんある。その中で不審な死者が出たり、犯罪などの事件が絡んだりすれば…それはそのギルドが手回ししたのか、はたまた怠けて裏付けを取らなかったのかと叩かれ騒動の種となりかねない。冒険者ギルドは力のない民のために働くもの…決して犯罪を増長させることは許されない。その為にギルド側は冒険者に確証のない依頼を受けさせるわけにはいかないのである。


 話がそれてしまったが…。俺はまさしくその掲示板を離れた所から窺っているのだ。




 俺が“戦闘結界(バトルフィールド)”を破壊してから約2日が経過していた。

 

 北の森に降り立った俺は“アルバ”に翌朝になって、ようやく入ることが出来た。何故翌朝になったのかだが…理由は単純だ。普通に入口が開いてなかったからである。ラタトスクと連絡が取れた俺はそこで合流し、彼女からのお叱りとお小言と魔女事件の言及を同時に受けた。…途方もなく長かったのは言うまでもない。俺はどうにか“カエデ”のことは伏せて、突然“アイテム”が使えるようになったとだけを説明することにした。流石にアイテムのことを隠し通せるとは思わなかったからだ。俺のあたふたした誤魔化し方で隠し通せるとも思えなかったが…どうにか彼女を頷かせることには成功したのだ。…難しい顔をしながらだったが。多分、いや絶対納得はしていないだろうね。

 不幸中の幸いか、検問待ちが比較的少なく早朝から並べた俺たちは何度も(三度目)お世話(・・・)になっているオジサンに嫌そうな顔をされながらも入場することが出来たのだった。その際に言われた言葉はこうだ───


「嬢ちゃんは…一体何がしたいんだ?」


 ────明らかに呆れた様子のオジサンに俺は掠れた笑い声しか返せなかった。



 始まりの町は俺が来たときと少し様子が違っていた。ラタトスクに状況は大体聞かされた後だったが、それでも…一目で分かるほどには緊迫感が伝わってきたのだ。原因は町で徘徊する騎士団の多さ。警邏だろうか?巡回する騎士団が目につくほどには多くなっており、それが異様な緊張感を放つ要因になっていたようなのだ。町人たちも急に多くなった騎士団たちが気になる様子でチラチラと視線を送っていたのを覚えている。

 “戦闘結界”の一件で王国と帝国はアルバ駐屯中の騎士団を先に増強することに決めたようだった。平和続きで予算と規模を削減されていた騎士団はこの事件でまた勢力を取り戻しつつあるようだった。


 まあ…それはいいや。俺にはあまり関係ないし。騎士団に世話になることなどそうそうないだろう。それこそ犯罪に手を染めるぐらいしなければ…ね。騎士団は日本で言うと警察に当てはまる。厳密には違うらしいけど…警察のような権威を持っているのだ。


 また話がそれたか…。えーゴホンッ。


 アルバに入れた俺はその足で冒険者ギルドへと向かった。お腹ペコペコの状態である。お金もなかった俺はその選択肢しか残念ながら残されていなかった。

 冒険者ギルドでは職員たちが忙しく駆け回っていた。俺はタマネさんを捜そうとしたが、彼女は彼女で俺を捜していたらしく、すぐに俺が捕まる形になった。

 彼女は凄くくたびれた表情ではあったが無事そうな俺を見て安心したらしく笑顔を見せてくれた。彼女には大分心配をかけたようで申し訳ない…。


 タマネさんは俺がすぐに冒険者登録できるよう取り計らってくれていたらしく、冒険者の証と関連書類を渡してくれた。書類の方は自身の名前とジョブ、性別と種族を記入するもので問題なく通ることが出来た。そこで少し疑問が残る。レベルを記入しなかったことだ。ラタトスクによると“レベル”と言う概念事態がそこまで広まっていないらしいのだ。五百年前、プレイヤーが存在したころはよく聞かれる言葉だったようだが、消えてからは使うものがいなくなり五百年の年月で徐々に使われなくなったようなのだ。そもそも自身のステータスは自身のみでしか見ることが出来ず、この世界の住人はレベル事態が見ることが出来ないらしい。見れるのは名前や種族にジョブに性別など一度決めたら変えられないものばかり、増える一方のスキルや魔術などは見ることが出来ない。それでは不便なのでは?と俺が聞くと、ここの住人はプレイヤーほどスキルや魔術を習得できないらしいのだ。いや…習得はできるらしいのだが、そこまで成長できないといえばいいの…かな。ともかく、詳しいことは省くが、“渡り人(プレイヤー)”は原住民とは多少異なるようだった。


 タマネさんから渡された“冒険者の証”はここでは“ギルドプレート”と呼ばれているらしく、小さな青緑色の金属製プレートが組み込まれたブレスレットだった。それはブロンズプレートと呼ばれ、冒険者で初級ランクを示すもの。要は駆け出しである。このプレートは下から青銅(ブロンズ)(アイアン)(カッパー)(シルバー)(ゴールド)白金(プラチナ)と言う様にランク付けされ、上に行くほど上級者となる。上に行けば信用も勝ち取る事ができ、ギルド内の情報開示も多くなるようだ。一番多いのが中級者と言われる銅と鉄。銅も上がりにくいらしいが、コツコツと依頼をこなすことで昇格は可能だ。塵も積もれば山となると言うことか…え?違う?そして、銀からは余程のことがない限り上がることが出来ないようだ。例えば一人で盗賊のアジトを潰しただとか危険指定魔獣を一人で討伐しただとか…普通に考えたら確かに化物だよね。中でも白金、プラチナプレートは片手で数えられるくらいしかいないらしく、そこまで行くと国からのオファーも来ると言うのだから驚きだ。


 まあそれは俺には関係ないだろうね。目立っちゃダメ出し。俺はこの時ようやく冒険者になることが出来たのだった。


 その後はタマネさんに融通してもらった報酬(魔女撃退の)で安い宿屋を探してお腹一杯食事を食べてから寝ましたとさ。


 


 眩しい太陽の日が照りつけるお昼過ぎ。レベルマックスの恩恵か、寝たら元気を取り戻した俺は朝からある事情(・・)で出掛け、お昼を少し回ったところで、ここに隠れて陣取っていた。先ほど言った通り俺が見つめているのは皆の情報源…掲示板である。そんなに見たいなら近づけば?と思うだろうが…俺には少々近づけない理由があった。


 “戦闘結界”の破壊の折、俺は意図せずある騎士団と接触してしまった。そう飛竜を駆る騎士団──“聖竜騎士団”である。教国所属のそれは“魔女”を追う騎士団。その騎士団に“魔女”と勘違いされた可能性があるのだ。俺はそれを確かめるべく掲示板へ近づこうとしているのだ。


 (うーむ…。意外と人が多いな。仕方がない───アレを使うか)


 俺はうむと一つ頷き、ストレージからある物を取り出す。それは今朝用意した必殺技であった。


「じゃじゃーんっ!なのじゃ!!」


『ストップ。ストップですカエデさん』


 唐突に入る制止の声。


「なんじゃラタトスク。横槍を入れるでない」


『いや、横槍も何も…。それは何ですか?』


「これか?これは───仮面じゃ!!」


 俺はラタトスクの言葉に胸を張って宣言する。それはある物を型どった青色のお面。


『…何の仮面ですか?』


「ドラ〇もんじゃな!!」


『却下です』


「何故じゃ!!?」


 にべもなく否定した言葉には怖いほど何の感情も籠ってないものだった。


「な、なら…このアン〇ンマンの…」


『却下』


「……むむう…」


 冷たい視線で言われたそれは最早凶器。俺は渋々それらをストレージにしまうしかなかった。


『はぁ…カエデさんに任せたらこれです。もう少しマシなものはないのですか?あれでは逆に目立つだけです』


「…そ、そうか…?この世界では存在しないキャラじゃし。大丈夫では…」


『カ・エ・デ・さん???』


「うむっ。妾も同意見じゃ!次じゃな次っ!!」


 慌てて取り繕った俺はストレージを開いて複数ある仮面から吟味する。そうして恐る恐る出したそれは──



「──般若面!!」


『(尻尾を)がぶっ!!』


「ぴゃあ━━━━っっ!?!?!?尻尾を噛むでないっ!!!!」



『───いい加減にしてください』



「はい…なのじゃ…」



 しゅんと俺は素直に謝る事しか出来なかった。


 結局、俺はストレージからラタトスクに勝手に選ばれた狐の面を被ってその場を出ていった。そもそも…仮面を着けている時点で目立つのでは?と気付いたのは、人が集まっている掲示板の前に辿り着いてからだった。







 ◇◇◇






 深い緑色をした外套を被り、メインストリートを歩く者たちがいた。人数は四人。その者たちはちょうど菱形のような陣形を取りその付かず離れずの距離を保ちながら歩いていく。一見、怪しそうなその者たちはしっかりとした堂々とした歩みで歩を進めていく。それは訓練され、洗練された無駄のない動き。ただ歩いているように見えて、実は周りの警戒も怠らず、どんな事態になっても対処できるように神経を研ぎ澄ましているのだ。


「ふむ…。ここが人族の町か」


 一番先頭にいた者がポツリと呟く。それに続くように後ろの者たちも辺りを見回しながら口々に呟いていく。


「賑わっていますね。目新しいものがたくさんあります」


「何だかごちゃごちゃしてるなぁ。気持ち悪くなってきたぞおぇ…」


「真面目にやりなさいガルド。ここは敵国ではありませんが、異国の地。何があるか分からないのですから」


「ハイハイ。わかってら。別に気を抜いてる訳じゃねぇさ」


 それを横目で見る先頭に立っていたリーダーのような人物は話が途切れたところで口を開く。


「で、だ。これでは姫様が言っていた”冒険者ギルド“と言うものがどこにあるか分からない。どうするか」


「そんなもん誰かに聴くしかないんじゃねえか?オレたちがここに詳しい分けねぇんだし?」


「ガルドっいつも言っているでしょう!師団長にそんな口の聞き方しないっ」


「イテェッ!叩かなくてもいいだろうがソーラっ!」


 そう言うと急に二人は喧嘩を始めてしまう。


「お前はいつもいつもごちゃごちゃと!オレのお母さんかよっ!」


「何ですか?貴方が聞かないからでしょう?これは社会のルールとして当然の───」


「だからそれが───」



「───いい加減にしろお前たち」


 二人はリーダーの鶴の一声でピタッと静止する。そして、気まずそうにお互いそっぽを向いてしまった。


「はぁ…。お前たちはこれが極秘だと分かっているのか?今でも鎧を着た者たちに注意深く見られていると言うのに」


「…わかってらそんなこと」


「…承知しております」


 言葉とは裏腹に納得できなさそうな様子の二人。


「仕方がない。アドス。この二人を見ておいてくれ。わたし一人で聞きに行こう」


「は、はい。お気をつけて!」


 若干気にはなるが…ここで躓いていては先に進めない。リーダーは道を聞けそうな人を探し人混みの中へ一人で入っていく。その姿はすぐに人混みに紛れ見えなくなってしまった。

 

 いつでもご感想お待ちしております。


 あの二人ふざけて終わりましたね…。もう少し動かす予定だったのですが…まあこれはこれで。


 次話はいつもの日曜日予定です。予定ですよ予定。予定ですからね。


 今回も読んでくれてありがとうございました!誤字脱字気になる矛盾点など言ってくれると助かります!


 よろしかったら次回もお会いしましょう!では!

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