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レベマで駆け抜ける異世界転生!!  作者: 真理雪
第2章・【始まりの町】アルバ
21/51

#20,邂逅

 セーフ!セーフですよねっ。土曜日ですけどっ。



  ─────ハッキング□□成功□□□□侵入□開始□□■■■■■────




 ──■■侵入成功■■■───■■指令暗号(コード)■■■凍結(フリーズ)■■───





 唐突な違和感。それに気づいた俺は閉じていた目を開ける。


「───は?」


 頓狂な声が出た。何故なら、普通の常識では説明できないような情景が目の前に広がっていたためだ。


 

 目前にまで迫っていた雷撃は直前でそのままの状態で停止し、衝撃で巻き上げられていた石屑はその場で縫い止められたように静止している。下方を覗き見てみるとウルフどもは遠吠えを上げたり威嚇したりと中途半端なところで止まっているし。まるで時間そのものをそのまま止められたかのような…そんな状況。動くものは自分以外におらず、そんな状況に違和感しか抱けない。



 (???───って今考えたら俺はなんで浮いてるんだ??)



 そんな中で俺はふと思い出す──自身の今の状況を。確か魔女に足場のない外へと吹っ飛ばされ、空中で成す術もなく足掻いていた俺は、このどうしようもない状況にバカみたいに開き直り、目の前から直に攻撃を受け止めようとしていたのではなかったのか?…今思い返せばなかなか無茶なことをするなと自分でも思う。

 俺はそれの確認をするため下へ視線を向ける…そこには───この頃良く見る青いホログラム。


「おっと、とっ!?」


 それを見た瞬間。俺の身体が思い出したかのように重力に引かれ、その上に慌てながらも着地する。



「───えっ?なっなんだ!?」



 突然のこと。俺がそこに立った瞬間、自身の回りにいくつもの画面(ウインドウ)が現れては消えていく。そこに書いてあったのはよく分からない多くの文字列。運良く一瞬読めたそれは───



 (───ハッキング…?凍結…??)



 ハッキングって…もしかしてラタトスクかっ!??

 

 俺は驚く。神の使いたるラタトスクがバトルシステムに介入したのかもしれない。確かに想定していたことではあるが、自身の予想よりも遥かに早い介入だったのだ。


 移りゆく画面を見ていると、突如目の前に一筋の“ノイズ”が走る。

 空間に縦のノイズが瞬く間に入ったと思えば、それはすぐに横に広がり、それは縦長の楕円形に変化する。大きさとしてはちょうど(カエデ)と同じぐらいの高さで俺がゆうに通れそうな程の広さだった。


 まるで空間にぽっかりと空いた穴のようで…それはどこかSF映画のワープホールのような…見た目だった。


 (…ん?──ワープホール??)


 もしや…ここからラタトスクが出てくる?と気づいた俺は緊張していた頬を緩ます。


「ラタト───」



「ご主人───────────────っっ!!!!」


「ぶほっ!?!?」



 俺は勢いよく出てきた人物に抱きつかれる。それは一瞬の出来事。俺はそれになんだか分からずに目を白黒させる。


「はっ!?えっ?───なにごと!?」


「ご主人!!会いたかったのじゃ!!会いたかったのじゃー!!ご主人─────っっ♪♪♪」


 (え?目の前が真っ暗で分からないんだけどっホント何っ!?)


 俺は誰かに頭から抱きつかれているようで何か柔い感触が顔全体を覆っている。それは触れたこともない未知なる感覚で…癖になりそう…と言うか苦しい苦しいって!!


「────苦しいんだけどっ!!?」


「む??──あ。す、すまぬのじゃご主人っ。ご主人にやっと会えると思うとつい気持ちが昂ってじゃな。よいしょっとっ」


 柔らかい感触が顔から離れる。その感触に苦しめられはしたが、何故かやけに名残惜しく感じる俺自身だった。無意識に残念そうな表情をしていた俺は慌てて表情を取り繕って前を見やる。

 俺に抱きついていたその当の人物は目の前にひらりと降り立つ。その人物を見た瞬間、俺の表情は凍りついた。


「───え、え?どっどうなって…??」


「む?なんじゃ?…そっそんなにまじまじと見られると…て、照れるのじゃが…」


 その人物は茶色の尻尾をブンブンと振り、頬を朱に染める。その華奢な指先同士をもじもじと弄くり、恥ずかしそうに視線を逸らす様子はなんとも言えない…グッとくる可愛らしさがあった。


 その美人とも、美少女とも、取れるその整った(かんばせ)は俺の好みにどストライクだ。そしてその人物が纏っている露出度の高い赤い着物は、彼女に合わせて作られたかのように様になっており、長い質のよい茶髪を大きなリボンで結った髪型は彼女の凛々しさを助長させている。

 彼女はその深紅の瞳を俺に向け、嬉しそうに微笑んだ。それは本当に嬉しそうな…心の底からこの出会い(・・・)を楽しみにしていたかのような。そんな───純粋な美しい笑顔。




「────か、“カエデ”…なのか?」




 ようやく俺はその名前を口にする。彼女はそれを聞き、嬉しそうに耳をぴんっと立たせて元気よくこう答えた。


「うむっ!──妾の名は“カエデ”。ご主人の娘のカエデじゃぞ♪ようやく名を呼んでくれたなっ。会えて凄く嬉しいぞっご主人っ」


 それは正真正銘…目の前にいるその人物は俺の作ったマイキャラ。“カエデ”その人だったのだ。





 ーーー





 頭がこんがらがってよく分からない。目の前にいるのはどこからどう見ても“カエデ”であって、そして俺自身も今は“カエデ”となっている筈だ。…筈なのだ。


 俺はばっと自身の身体を見回してみるが茶色の髪に動く尻尾にヒラヒラと靡く赤い着物。この世界に来て数日しかたってないが、それは慣れない身体に四苦八苦しながらも…ずっと見てきたものだった。それなのに───何故、目の前にもう一人いるんだ?



「……ちょっと待った。───ご主人の娘って何っ!?!?」



 思い返した言葉に俺は声を張り上げる。なんかいとも簡単にさらっと凄いことを言われた気がするんだけどっ!?娘って何!?


「む?ご主人が妾を創造してくれたのじゃろう?ならば妾はそなたの娘じゃっ」


「えっ!?いやいや待って待ってっ何その論理!?確かに作りはしたけどねっ!?」


 確かにゲームで何時間もかけてキャラメイクして設定を弄って作り出したキャラではあるけどっ。娘って…言い過ぎではっ!?


「むう…。そんなに嫌かのぅ。ならば恋人でも良いぞ?」


「なお悪いわ!!娘でよろしいっ!」


 うん。娘が一番しっくりくるから娘でもういいや。作り出したことには違いないし。…まだ俺は童貞だったけどねっ。と言うか恋人すらいなかったけどね。と言うか彼女いない歴=年齢だし…ぐふっ。自分で言って自分で悲しくなってきたわ…あれ?目からポ〇リスエットが。


「さて、もっとスキンシップをしたいところなのじゃが…残念ながら時間はそれほどない。凍結しているとは言え長々と話する時間はないじゃろう。じゃから肝心なところだけ説明するぞ?」


 うだうだと自身の不甲斐なさを噛み締めていると、彼女は表情を一転させその瞳に真剣な色を写す。


 その言葉で俺は今の状況をようやく思い出した。


「はっ!そ、そうだっ。今凄いヤバい状況でっ!」


「うむ、分かっておるのじゃ。今の状況は…はっきり言えば絶望的…絶体絶命じゃな。百人に聴いたら百人が諦めると答えそうなこんな状況で諦めないとは…。我がご主人はほとほと困ったものじゃ。…諦めの悪さは一人前じゃな?」


 彼女はやれやれと困ったように肩をすくめながらそう言った。

 

「なにこれ…ディスられてる?」


「誉めておるのじゃ」


 俺のツッコミに彼女はにべもなく否定する。


「それでじゃな。何故ここまで絶望的な状況になったかなのじゃが…それはズバリ──アイテムがなかったからじゃろう?」


「 ! 」


 彼女は口角を上げ、どこか見たことのある挑発的な笑みを作りながらウインクする。


「アイテム…。確かに俺の貯めたアイテムがあれば符術も使えるし奥の手だって使える…。でも、それはエラーで送れないんじゃなかったのか?」


 俺は疑問を口にする。以前、ラタトスクが俺にアイテムを送信しようとした時があった。その時は何故か原因不明のエラーが起こり、送信不可となったことがあったのだ。その為、俺にはアイテムが一つもなく…無一文の状態から始めるはめになってしまった。


 彼女は少し悩むように顎に手をやり、


「“エラー”か…」


 と噛み締めるように小さく呟く。


 俺はその様子に少し怪訝な顔をするが、それに気づいた彼女は笑みを見せて大きく頷いた。


「大丈夫じゃっ。ならば、妾の記憶から復元(リストア)しよう。これならばご主人にも使える筈じゃっ」


「そんなことが…できるのか?」


「うむ、出来るのじゃ。まあ…一時的なものじゃがな…。じゃがこれならば切り抜けられるじゃろうて」


 心配そうな俺をよそに彼女は笑みを浮かべながら自信満々に頷く。どこからそんな自信が出てくるのだろうか…。そこが疑問ではあるが、その様子に少しは不安が安らぎそうだ。


「少し待っておれ」


 彼女はそう言うと一つ深呼吸し、瞳を閉じる。すると───


「うおっ!?」


 唐突に俺と彼女の回りに大量の画面が現れる。それには全て幾何学的な文字列が刻まれ、PCでイメージするなら…いくつものウインドウが得たいのしれないウイルスに侵されたように、何度も何度も同じようなウインドウが現れては消えていく…そんな感じだ。それは彼女の出現時の比ではなく、それよりも遥かに多いホログラム群が光の塵となる。




 ───■■■記憶領域からの復元完了■■■全アイテム■インストールしました■■■───




 俺の目の前に大きめのホログラムが現れる。それにはそんな文字がありありと刻まれていた。


「これでアイテムが使える筈じゃ。試しにアイテムストレージを開いてみるが良い」


 彼女はそう言って俺を見やる。それに俺は頷いてストレージを開いた。前はそこに“エラー”の文字のみが書かれ、空白になっていた画面であったが…。


「! これはっ」


 そこにはずらっと並ぶアイテムの名前。スクロールするとどんどん見慣れた文字が流れていく。


「後はご主人次第じゃ。妾はそなたなら乗りきれると…信じておるぞ」


 カエデはにっこりと微笑む。と、その姿がうっすらと白みかかった。


「か、カエデ!?」


「むう…少し力を使いすぎたかのぅ…。妾にできることは残念ながらこれだけなのじゃ。“ラタ”のようなサポートは出来ぬぞ。ここからはご主人だけが頼みじゃ。──そろそろ戦闘再開じゃな」


「 ! 」


 彼女はそう言うとスッと移動して俺の隣に立つ。『凍結が解除されます』と目の前の画面にはそんな文字。

 いつもの挑発的で、それでいて憎めない悪魔のような微笑みをたたえた彼女はこう言う。




「構えよご主人っ!──来るぞ!!」




 そう叫んだその瞬間────時は…動き出した。



 

 凄い中途半端な時間に投稿しちゃいましたね…。本当は正午ちょうどにしようと思ってたのですが…。


 次回も来週投稿予定…曜日は決められませんがっ。


 今回も読んでくれてありがとうございました。また読んでくれたら嬉しいです。

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