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レベマで駆け抜ける異世界転生!!  作者: 真理雪
第2章・【始まりの町】アルバ
17/51

#17,冒険者ギルド 3

 投稿!


 始まりの町アルバは帝国と王国の国境にあり、そこだけが中立となっている町だ。帝国でもなく王国でもないアルバはどんな種族の者でも受け入れることで大きく発展してきた。一昔前には“渡り人”と言われる特殊な者たちが降り立つ地としても有名になり、その“渡り人”の知識を元に大きく成長した部分も多くあった。

 二つの大国に挟み込まれ、一方でどちらの国にも属せない。そんな特殊な情勢から辺境と馬鹿にされていたこの町も今や物流の中心となり、なくてはならない町へと発展していた。


 中立と謳うアルバは帝国と王国両名の騎士団を保有していた。と言うより強制的に配置されたと言った方がしっくりくるだろうが…。アルバは位置関係から両国に属することが出来なかった。その為この町は中立と認められるには両国の勢力となる騎士団を受け入れるしか道がなかったのだ。


 帝国と王国はもともとはいがみ合う敵対国だった──軽く戦争を起こすほどには。しかし、一度世界が危機に瀕した時に手を取り合ったことでその仲は緩和したのだ。まあ、それが俺の言う非現実(ゲーム)時代のことなのだけど…現在は比較的に仲は良い方だった。

 なら、何故両軍の騎士団がアルバにあるのか?と考えるかもしれない。権威の誇示と見せしめ。と言えばいいのだろうか…?どんな大国だろうと潰れない国はない。ましてや戦争までしていた大国が隣にいるのだ。誰だって警戒はする筈だった。その為の騎士団であり、勝手なことをすると軍を動かすぞと言うアルバへの脅し。それと、もう一つ王国と帝国は警戒するものがあった。それは──アルバを牛耳る“冒険者ギルド”だった。

 冒険者ギルドと言えば帝国の支配下ではないのか?と思われがちだが実はそうではない。確かに初代帝国の皇帝が自ら冒険者ギルドに目を付け、大きくしたと言うのは本当の話だ。今でもその名残で冒険者ギルドの本部は帝国にあり、帝国とも強固な繋がりがある。だが、今では冒険者ギルドも世界を股にかけるような巨大な組織となっている。そんなものを帝国のみで押さえ付けることは出来ず、中立と謳う物流の中心地“アルバ”になんの対策もなしに置いておくことは出来なかった。そうして出来上がったのが“帝国の騎士団”と“王国の騎士団”、そして“冒険者ギルド”と言う三つの大きな勢力が集まる特殊な町アルバなのだった。


 さて本題をもとに戻そう。冒険者ギルドは世界各国に支部を持つ大きな組織だが、一番大きな支部はやはり帝国にある本部だった。それに次いで大きいのがなんと言ってもアルバ支部なのだ。戦争(ゲーム)時代では均衡を保っていた三つの勢力だったが世界が比較的平和になったことで騎士団もそれに比例するように規模が縮小されてきていた。天魔の影響でまたもとの規模に戻そうと動いてはいるようだが…天魔はアルバ以外にも出現する神出鬼没の敵だ。騎士団はどうしても本国の方を優先するしかなく上手くいっていないのが現状だった。しかし、冒険者ギルドはまた違う。冒険者は日に日に多くなる一方で、その上冒険者の本分は戦闘だけではない為民衆の信頼を得やすい。どんな場所でもどんな者でも金さえ払えば護衛してもらえたり、迷宮化した場所の探索や依頼物の捜索などなど。騎士団よりもはるかに順応した仕事ができるのだ。それだけにアルバ市民からは冒険者たちに多くの信頼を寄せていた。


 俺が知っている五百年前のギルド。もともと大きいアルバ支部。ゲームに入り浸っていた俺でもこんがらがる迷路のようなギルド内。今では見る影もないほど拡張されたギルド内はある種の迷宮(ダンジョン)のようで───



『──いつまで言い訳をしているのですか?』


「うぐっ」



 ラタトスクからの抗議の視線が突き刺さる。痛い痛い!この身体になってから恥ずかしいのに耐性が低下してるのだから止めて欲しい。


『だからあれほど真っ直ぐ進んだ方が言いと…』


「むむむむむ……──わっ…分かった分かったのじゃ!降参じゃ!降参じゃ!それはもう言うなラタトスク!妾が悪かったのじゃぁ!」


 俺は観念して彼女に謝る。と言うか今回は確実に俺が悪かった。ラタトスクの言葉を聞かず、俺はゲームの記憶を頼りに自信満々に突き進んだ。その結果が…これなのだ。


「まっまさかこんなに変わっているとは思わなくてじゃな…」


『はぁっ…五百年も経過しているのですよ?変わっていて当然ではありませんか』


 ぐうの音も出ないとはこの事だろう。ラタトスクはこれ見よがしに溜め息をつく。うぐぐ…やはり俺に当たりが強くなってる気がする…。


 気を取り直し、俺たちは一度来た道を戻ることにした。これ以上進んでも余計に分からなくなるような気がしたのだ。何故こんなにいりくんでいるのだろうか…もしや防犯対策??

 一先ず戻ることにした俺たちだがあまり状況は変わらなかった。うーん、なんだが同じところばかり回ってる気がする。


『カエデさん…スキルをお忘れではありませんか…?』


「む…?おお!“気配探知”かっ。忘れてたのじゃ!」


 素で忘れていた俺はラタトスクの言葉に両手を打つ。符術が主体のマイキャラ(カエデ)だがそれは戦闘での話。他のサポート的なものはスキルによって賄っていた。

 実際、符術士は霊符と魔力が必要でどちらが欠けても発動できなかった。それを補う為には霊符を馬鹿みたいに集め、魔力をどれだけ途切れさせないか。あとは、どちらか一方が切れた時にどうスキルで対処できるか──であった。


 サポートスキルである“気配探知”は戦闘向きのものではない。それは一定範囲の生物の気配を探知するもので、使った瞬間は動けないと言う制限があった。その上、気配探知はスキルレベルが低いとその制度は下がる。自身のプレイヤーレベルが低くてもそれは同様だ。そしてこのスキルに忘れてはならないことは──隠れている相手方がもしプレイヤーだった場合…探知に抵抗され打ち消されてしまう危険があった。

 各プレイヤーにはステータスで『 STR, VIT, DEX, INT, AGI, MND, LUK 』とが決められている訳だが、その中のMND, LUK が作用しているようで相手方がそれに秀でている場合、気配探知が打ち消され逆に逆探知(・・・)されてしまうと言うデメリットがあるのだ。その為、プレイヤーたちがパーティーを組んだ場合──気配探知はプレイヤーレベルが一番高くその上スキルレベルが一番育っている者が使用できると言う暗黙の了解が出来上がってしまったのだ。まあ…それはPvPの時だけではあったのだが…。苦労してレベルを上げた記憶がつい昨日のように甦ってくる…。どれだけ逆探知されぶっ倒されたことか…。


 だが、この世界にはプレイヤーは俺一人だけだと聞いている。気配遮断スキルを使われる場合はあるだろうが、レベルもMAXな俺が逆探知される心配はない筈だ。これを使えば──人が集まる場所=エントランスとなる筈なので大まかだが場所が特定出来る筈…。



 “気配探知”───



 俺は脳内で唱えスキルを発動させる。


 感覚が広がった様に感じられ、いろんな方向から人の…生物の気配が手に取るように感じられる。うーん…初めて使った時もそうだったが、この奇妙な感覚は慣れられそうもない。


 (お、人が密集している場所があるぞ。多分…そこがエントランスだろうな)


 俺はほっと胸を撫で下ろす。自身とは真逆の方向にある場所だったが…見つかっただけでも良しとしよう。

 満足のいく結果に俺はスキルを打ち切ろうとする。しかしその直前──何か異様なモノが探知に引っ掛かってしまった。


「──む?」


 その異様さに俺は声を上げる。ラタトスクはその声に首をかしげてこちらを見やった。



 それはなんと言うか──異質(・・)なものだった。生物ではない何か。



 俺は咄嗟にそれがいた方向へ目を向ける。しかし、そこは只の壁。通路の木製の壁が遮り肉眼で見えることはない。だが──それは確実にこちらを見たように感じたのだ。近くはない遠くもない。通路に仕切られたその先で…そいつの視線と俺の視線が合わさった。俺の全身の毛と言う毛が逆立ったような気がした。


「っ!───ラタトスク!!」


 俺は唐突に名前を叫ぶ。彼女はそれだけで何かを感じ取ったのかすぐさま俺の肩へとまる。そして俺は飛び出すように駆け出した。木で出来た廊下を風のように駆け一階へと目指す。


 そいつは一階…否、多分だが地下にいた。これだけ大きいギルドだ。地下ぐらい普通にあるのだろう。しかし、そこに行くにはどうすればいいのか。

 

『まずはタマネさんを探しましょう!ここでは彼女の力が必要です!』


「そうじゃな!で、タマネは一階にいると言っておったのじゃな!?」


『分かりません!』


「なぬ!?」


『彼女は一階に声をかけてと仰っていただけですので!』


「なんじゃっ!使えんやつじゃな!」


『ぶっ倒れた貴女に言われたくありませんが!?』


「なんじゃと!!?」


 勢い余ってつい出てしまった言葉を革切りに俺とラタトスクは走りながらもギャーギャーと文句ばかり言い合ってしまう。


 そんなことを言い合いながら俺たちはいりくんだ廊下を抜け、エントランスに続く曲線を描いた幅広な階段を降る。ここはいつでも人が多い。俺は人を避けながら一目散に受付へと向かって行った。


「タマネは何処におる!?」


「はっはい?」


 勢いの余りカウンターの上に乗り上げながら俺は受付嬢に問いかける。彼女は驚いたように戸惑いながらもそれに対応してくれた。


「えっ…えーと。副ギルドマスター…ですよね?少々お待ちください」


 彼女はそう言うと奥へと入っていく。その場で少し待っていると入れ替わるように出てくる女性が一人。


「あ、カエデさん。よかった。目を覚まされたのですね」


 タマネさんはそう言って笑顔を向ける。


「タマネ!地下に何がいるのじゃ!?」


「え?ちっ地下ですか?…地下には地下牢があるだけですが…」


「地下牢…?」


「はい。えーと…少々こちらへ…」


 彼女はそう言うと声のボリュームを下げ、人目につきにくい場所へと移動していく。


「地下牢にはですね。捕まえた犯罪者や犯罪を犯した冒険者をその処遇が決まるまで捕らえておくためのもので…今は貴女方が捕らえてくださった闇ギルド冒険者が入れられています」


 それだ──。“闇ギルド冒険者”──それを口封じに殺しに来た。そう考えれば辻褄が合う。ならば…もしやあいつの正体は…?


「タマネ。その闇ギルドの者なのじゃが…命が危ないかもしれん」


「え?…どっどういうことですか?」


「先ほど気配探知した時にな。妙な気配が地下からしたのじゃ」


「妙な気配…ですか…?」


「うむ。それはなんじゃ…確証はないが。人でも生物でもない何かじゃ」


 そこまで言うと彼女の表情が変わり、すぐさま動き出す。

 タマネさんは何やら書かれた扉の前に行きそれを開けようとする。が、何やら様子がおかしい。


「どうしたのじゃ?」


「すっすみませんカエデさん。何故かこの扉が開かなくて…」


 彼女は自身が持っていた一つの鍵を差し込み扉を開けようとするが何故かそれはぴくりとも動かない。


 (これは…“魔術障壁”ですね)


 (魔術障壁じゃと…?)


 (はい。魔術障壁で固定されているようです)


 “魔術障壁”──それは名前から分かる通り魔術で生成した魔力の壁のことを言う。魔術士がよく使用する防御系の魔術で、最下級に位置する術だ。しかし、最下級と言えど魔力消費が少なく、待機時間も少ない為コストパフォーマンスが良く、魔術士なら誰もがお世話になる魔術だった。


 魔術を使うならあれは魔術士なのだろうか…?いや、魔術を使うだけならまだ違う方法もある。相手が何者か分からない内はそれに固執しない方がいいだろう。


 俺は彼女を見やった。しかし、扉は依然として開かないばかりか紫色の光をうっすらと放ち、その光が魔方陣を描いている。


「開かないっ。誰か!魔術士の方を呼んでください!」


 タマネさんはドアノブを何度も回し開けようと必死だが開かず、自身では無理だと悟ったのか魔術を解除させる為に助けを呼ぶ。


 …時間はない。闇ギルド冒険者は正直どちらでも構わないが…あいつを逃したくはなかった。



「タマネよ。少し下がっておれ」


「──え?かっカエデさん?」



 俺はその場で愛刀を抜き放ち、彼女に述べる。雰囲気が変わった俺に彼女は戸惑いつつも場所を空けた。


 俺の愛刀には特殊能力がある。仲間(パーティー)の奴らには良くチートだと嫌味のようにもてはやされたものだ。


()くぞ。圧斬(へしき)り」


 俺は赤く輝く刀を上段に構える。そして──振り下ろした。


 ヒュッと空気を切る音と共に目の前に展開された魔方陣に切れ込みが走る。


「──はぁっ!!」


 それに間髪入れず俺は蹴りを放つ。縦一線に切り裂かれた扉は障壁もろとも蹴り飛ばされ奥の通路へと成す統べなく飛ばされていった。


「よしっ。さっさと行くぞ!」


 と俺はその出来栄えに満足そうに頷く。


「え?…ええっ!?」


 その状況に放心状態な彼女。そんな彼女に俺は容赦なく声をかけ手を引っ張る。


「ほらっタマネ!さっさと行くのじゃ!」


「あっ…ちょ!?カエデさん!!?」


 俺は回りに集まってきていた野次馬たちをほって中へと駆け出していく。また目立つことをしてしまったが…まあそれは仕方ないと割り切ろう。


 後ろから追いかけてくる仔竜さんから盛大な溜め息が漏れたような気がした。


 



 どうでしたでしょうか?いつでもご感想お待ちしております。


 少し補足を。アルバには三つの勢力があると書きましたが…実は影に教会もあります。なので実は四勢力が集まった地がアルバなのです。書こうと思ったのですが…どう入れ込もうか分からなくなってしまったのでここで補足しておきます。まあ…出てくるんですけどね……教会が。あ、ヤバいネタばれに……───


 誤字脱字などありましたら言っていただけると助かります。

 今回もありがとうございました。また次回も読んでくれると嬉しいです。ではまた!

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