#10,始まりの町 2
こんばんは!真理雪です!
書くことないですねー…。
では、どうぞ!
冒険者──と呼ばれる者たちがいる。地球上では言葉はあるが空想にしか存在しないものだ。それは多種多様な依頼を請け負い、その依頼をこなすことで報酬を貰って生活する者達のことで。その者たちの集まりのことを冒険者ギルドと呼んでいた。
冒険者ギルドは出来た当初は民間の小さな集まりだったらしく、今でもその頃の風習が色濃く残っている。例えば…どんな種族、どんな経歴(犯罪経験以外)の者でも加入可能だったり、会社に良く決められているルールが薄かったり…。要は何かしても自己責任…ギルドでは守らないよと言うことであった。そういう経緯から冒険者ギルドは荒くれものが集まったりすることが多く世間から見て良いように思われていなかったのだ。しかし、その冒険者ギルドにも変化は起きた。そのギルドに目をつけた者がいたのである。それはまさかの初代帝国の皇帝…。皇帝は冒険者と言う者達が荒くれ者ばかりだが力はあることを見抜き、そしてそれを有効活用することにしたらしいのだ。皇帝は自身の名で出資し支援し、民間会社から公的機関へと姿を変えていった。それにより冒険者ギルドは瞬く間に成長し、今では何処にでもあり頼れる存在へと成り上がったのだ。
「よ!う!こそっ~~!冒険者ギルドへ!!このワ・タ・シ!マダムがギルドマスターですわよ~ん!!♪」
「「『……』」」
カエデ、フィーナ、ラタトスクは目の前で両手を振り上げ奇声を発している良く分からない人物と相対していた。
「あらあら?元気がないですわねぇお嬢さん方?ああっワタシはこんなにも美しい貴女方と出会えて幸福だと言うのに!」
カエデたちが白い目で見るのも構わず彼は叫ぶ。そう彼…目の前でそう叫ぶその人物は男性であり、その上…見た目も奇抜なものであったのだ。
その人物は服装だけ見れば普通の格好であった。スラッとした体型に西洋の正装…タキシード(と言えば良いのか)を着こなしており、それは紺色を基調としたもので落ち着きのある色合いをした真面目なものなのである。しかし、一度顔を上げると───
(アフロ…じゃなあれは…)
(はい、アフロですね異様に大きな…)
でっかいアフロだった…。しかも目立つオレンジ色だ。それだけなら百歩譲っていいだろう…いやいいのか…?それは置いておいてアフロだけなら未だしも、その顔には…まさかのきつめなメイクまでしてあったのだ。
それら全てをまとめて見ると“オレンジ色の大きなアフロにドきついメイクをしたオカマ口調の男性”と言うことだった。…はっきり言って──
「キツイのぅ…これは…」
「わわっ!カエデ様!?言ってはいけませんよっ」
カエデの苦渋の言葉にフィーナは慌てて止めにはいる。因みにフィーネは良く分かってないのか二人の間でちょこんと座り可愛らしく首を傾げていた。
カエデたちはあの後、初老の男性に案内して貰い、冒険者ギルドへと訪れていた。ギルドにはもう連絡していたようで待っていたのはこの人ではなく秘書のような眼鏡を掛けた美人さんがホールで既に待機しており、ギルドマスターの執務室まで案内してもらったのだ。そこまではよかった…よかったのだ。執務室は至って真面目な普通なものだった。少し大きめな部屋に窓の近くに執務机、その前に置かれた一対の黒のソファーに間に置かれたテーブル。しかし、執務室で…座って紅茶を飲んでいたその男性は…まさかまさかの…こんな人だったのである。
「何よぅ!ワタシのフゥゥッッファッション!!が分からないと言うのん!?!?」
「めっ面倒じゃ!こやつ面倒臭い奴じゃ!誰かヘルプミーじゃぁぁー!!」
カエデの言葉に憤慨する男性(?)に彼女は我慢ならず叫んでしまった。こんな人物に耐性がないカエデにとってそれは仕方がない様に思う。と言っても耐性がある人などいるかどうか分からないが…。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
見計らっていたようなよいタイミングでノックを鳴らし入ってくる女性。それはカエデたちを案内した美人さんでそれを見た彼女たち二人と一匹は少しほっと息をついた。
「あら!気が利くわね!タマちゃん!」
「今度その名を口にすると───縫いますから」
「…ごめんなのよ…」
タマちゃんと呼ばれた美人さんは何でもスパッと多々っ切れそうな鋭利な目付きで彼を睨み付け黙らせる。それを見たカエデたちは…この人も曲者だなと認識するに至った。
「この変態…いえギルドマスターに虐められはしませんでしたか?大丈夫でしたか?」
「タマちゃん!今変態って言わなかった!?言ったわよねぇ!?」
喚く男性の隣にさっと座った彼女は厳しそうな表情から一転し朗らかな優しい表情でカエデに尋ねる。
「む…ああ、そうじゃな。別に虐められはしておらぬのじゃ。驚きはしたがのぅ…」
「そうですか。それは良かった。では、話を始めまたい所ですが───」
『───“静かにしてください”』
彼女は雰囲気をまたもや一転させどす黒いオーラを出し何でも貫けそうな鋭い目付きで隣の男性を──脅す。
その一瞬で彼はしゅんと大人しくなった。
「こほんっ。落ち着いた所で。急ぎの用なのでしたね?簡潔にですが先に自己紹介をしておきましょう」
場が落ち着いた所で美人な彼女が進行役を買って出る。
「こちらがここ始まりの町アルバのギルドマスター、マダムです」
彼女は言葉を一旦止め男性を紹介する。
「んっんー。少し調子に乗りすぎたようね。そうっこのワタシっマダムがこの冒険者ギルドのマスターよぅ!」
ビシッと右手を上げ左手を胸に添える男性。決まった…と思っているのか自慢気な顔が凄くイライラしてくる。
「そして、私が副ギルドマスターのタマネ・アクアリウスです。気軽にタマネとお呼びください。以後お見知りおきを」
丁寧に挨拶する彼女にカエデたちも簡潔に自己紹介をする。そして、ここまで来た経緯を伝えられる要点だけをピックアップし伝えた。流石にカエデが渡り人だとは言えないのでそれに関することは除いたがそれでも重要な情報はあったようで彼女とふざけていた男性…までもが真剣に聞き入っていた。
「なるほどねん…。天魔の襲撃に、闇ギルドのメンバー…。これは偶然なのかしら?」
「いえ…。偶然ではないでしょう。彼女らの言葉では彼らはエルフの国から二人が出ることを分かっていたと思われます。ですよね?カエデさん」
「うむ…。そうじゃな。奴はそう言っていたと思うぞ」
カエデは彼女からの質問に答えるとそれより…と話題を変える。
「フィーナ?」
「はっはい。…確かに闇ギルドのことは重要なことですがわたくしたちがここを訪ねた理由は他ありません。───わたくし三王家連なる第一王女フィーナ・フィオーレ・アストリアが告げます。エルフの国を助けてもらえませんでしょうか?」
彼女は真剣な眼差しで言葉を紡ぐ。それこそが今回危険を冒してまで人族のギルドまで訪ねてきた理由だった。それを言いきったこの部屋に少し沈黙が降りる。果たしてその沈黙を破ったのは男性だった。
「それは…難しいわねぇ…」
「なっ!?そんなっ何故ですか!?」
「…ヘルメス条約…王女殿下なら聞いたことあるんじゃな~い?」
「!…それは…」
フィーナは苦虫を噛み潰したような難しい表情をする。
ヘルメス条約──それにはカエデ自身も聞き覚えがあった。それは人族とエルフ族の間に結ばれた条約のことでお互いに貿易は最小限にし、お互いの文化文明には干渉しないこと。
五百年前の大戦の時は手を貸したエルフ族だったがそれよりも大昔に作られた古い条約でまだ王国も帝国も影も形もなかった時代だ。今はそれほどでもないにしろ人族とエルフ族がいがみ合っていた時期があったようだ。それほど古い条約なら消えていても可笑しくないのでは?と思うかもしれないが…考えても見てほしい。エルフ族は長寿の種族だ。そして新たな文化よりも古き文化を重視する種族でもあった。人族がそうでなくてもエルフ族は当然覚えており、歴史によって埋もれてしまいそうだったその条約も消えるというより逆に強固になっていってしまったのだ。因みに冒険者ギルドがエルフの国にないのもこの条約があったからだった。
「そっそれでも!エルフの国の危機なのです!協力していだけませんかっ??」
諦めきれずに頼み込むフィーナに渋い顔をする二人。
「ワタシたちの一存じゃ決められないわねぇ…」
「そうですね…。少なくとも本部には話を通しておかないと…」
「本部…か。確か冒険者ギルドの本部は帝国じゃったな」
「はい。その通りです。ですが本部に話を通したところで許可されるとは思いません。これは人族とエルフ族…国と国との問題です。皇帝自ら許可されない限りはこちらは動けないでしょうね…」
申し訳なさそうに言う彼女…タマネは力なく首を振る。
「そっそんな…」
彼女は悔しそうに唇を噛み、拳に力を込める。今にも泣き出しそうな彼女にカエデは何も言ってやれず不甲斐ないなと自身で自分を責めることしか出来なかった。
「……余り賢い選択ではないけどねぇ…今から皇帝に直接会いに行くってのもあるけど…?」
再び沈黙が舞い降りた部屋に唐突に提案するマダム。
「え!?よいのですか!?」
マダムの言葉にフィーナは身を乗り出すほど飛び付き何度も頷く。
「所詮は悪足掻きみたいなものよ?それでもいいのかしらん?」
「はっはい!お願いいたします!このまま指を咥えて見ていることなんて出来ません!」
マダムの提案は今から馬車に乗り全速力で帝国へ。そして、フィーナ自らが皇帝と謁見して許可を貰うと言うもの。要は直談判であった。まさかそんなに上手く行く筈がない。マダムの言う“所詮は悪足掻き”と言う言葉は現実的に考えると的を射ている様に思えた。それに───
「ここから最短ルートで全速力で行っても丸1日はかかるわ。もう少しで日没…。はっきり言って…間に合わないわよ?」
マダムは似合わない鋭い視線で彼女を見つめる。現状…もう間に合う筈がないものだった。天魔はもうすぐそこまで来ている。それを彼は敢えて伝え、彼女の様子を探る。
彼女はふぅ…と一呼吸置き息を整え、そして──
「はい、承知の上です。これはわたくしの受けた主命。例え間に合わなくとも戦っている同胞の為…諦めるわけにはいきません」
はっきりとそう答えた。
何でも感謝お待ちしております。誤字脱字矛盾点とかもありましたら言っていただければ嬉しいです!
ではでは今回はこの辺で~ありがとうございました!(ビシッ)