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-プロローグ-
――七つの祈りと 七つの罪
◇ ◇ ◇
月のきれいな夜だった。
時刻は深夜二時過ぎ――まさに、草木も眠る丑三つ時。
人気のない道で、私はその姿を見た。
不定形の怪物。蠢く暗闇。形ある影。
現代から忘れ去られてしまった噂話の中だけに棲息しているような異形。
誰かが深淵を覗き込む時、深淵もまた、その者を覗いている。永遠の暗黒に私の視線は吸い込まれ、飲み込まれそうになっていた。
瞬間。その影に、光が差し込んだ。
――影を祓う、一条の光。
記憶の中の光は、少女の姿を模していた。