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31話「面接・後編」

「ふう……面接って案外疲れるもんなんだなぁ」

「ハジメ殿、よかったのか? シーフがいるだけでパーティの安全性は向上し、稼ぎも随分と変わってくるんだぞ?」

「まあ、そうなんだろうけど、今回は魔城温泉の従業員の募集だし、接客向きって気がしなかったんだよなぁ……」

「なるほど。今回の募集の趣旨とは違うってことなのだな」

「じゃあ、次はウサ耳の子を呼んできてもらえるかな?」

「あい、わかった」


 次に現れたのは、うさ耳がペコンと垂れてるウサギ族の少女だ。

 雪のように白い髪にモフモフした垂れた耳は、ぬいぐるみにも見えなくはない。

 獣族と言っても顔は人間とさほど違いもないし、尻尾があるぐらいだ。


「ウサギ族のンンなのん。よろしくなのん」


 ぱっと見の印象はおとなしそうで、緊張してモジモジしてる姿にハジメは好感を抱いた。白いワンピースも清涼感があって素敵だ。

 うん。今度は真面目そうな子だ。


 応募用紙には。

 

 名前:ンン

 種族:ウザギ族

 年齢:14歳

 クラス:パティシエール

 自己ピーアール:料理全般。特にお菓子作りが得意なのん♪


「えっと……料理が得意と書いてあるけど、そうなの?」

「あ、はいっ! 料理は得意なのん」


 緊張しながらもンンは明るく返答した。


「えっと志望の動機も聞いていいかな?」

「はいなのん……らくそうで銀貨30枚に惹かれたのん!」

「あはは、そうなんだ」


 苦笑いしながら随分と直球なんだなぁと思った。

 この場合、得意な料理を活かしたいとか、掃除や洗濯も得意なんですと言いそうなものなんだが。


「採用となると勤務地は魔城温泉に泊りこみになるけど、その辺の事情は大丈夫?」

「あ、はい! もちろんなのん! 食事付きで温泉にも無料で入れて、城で暮らせるのん」


 ウサギ族のンンはリシュアにニコッと微笑んだ。

 リシュアは複雑な笑みを浮かべながら「採決はハジメ殿が決めることゆえ」と、呟いた。


「接客とか大丈夫かい?」 

「お金の為なら頑張れるのん」

「あはは……そうなのね」


 俺はリシュアに視線を飛ばした。

 リシュアも笑みを浮かべている。手ごたえも悪くない。


「んじゃ、よろしく頼むよンン。明日の朝には旅立つから、それまでに準備を整えておいてね」

「はい、よろしくなのん!」


 ウサギ族のンンは終始笑顔だった。

 嬉しそうに飛び跳ねながら部屋を出て行った。

 

「次で最後だなぁ」

「では、呼んでまいる」


 次の子はネコ族の女の子だ。

 

「ネコ族のニャムだニャ~」


 ネコの子は朱色の髪に同色の燃えるような瞳で、活発そうな印象を受けた。

 狩人らしく毛皮で作った衣装を纏っている。

 

 名前:ニャム

 種族:ネコ族

 年齢:15歳

 クラス:狩人

 自己ピーアール:狙った獲物は逃がさないニャン


「クラスは狩人なんだね」

「そうだニャ~。弓が得意だニャン」

 

 狩人は食材集めの即戦力だと思った。

 実はアリスもリシュアもマリリンも、襲ってくる魔物には対処できても素早く逃げ去る獣を仕留めるのは、苦労しているのだ。

 また単純に俺はネコ好きでもある。

 実はもう採用を決めていた。


「掃除や洗濯はできるのかい?」

「お安いご用だニャン」

「料理はどうかな?」

「料理は苦手だニャン」


 ま、料理はいいか。

 ンンが得意だし皆がンンに教わればいいのだ。

 

「そうそう、後は住み込みだけど大丈夫かい?」

「問題ないニャン」


 ンンも語尾がヘンだったけど獣族ってそんなものなのか?

 ニャムの返事は更に輪をかけたように淡白だ。


「ニャムから何か質問とかないかい?」

「可愛がってほしいニャン」

 

 つぶらな瞳で、じいいいいぃっと俺を見つめる。

 俺は思わず目をそらしリシュアを見た。


「ハジメ殿。狩人がいれば食糧事情が解決するやもしれぬ」


 同感だ。


「よし、ニャム。よろしく頼むよ。明朝には王都を立つから準備しといてね」

「わかったニャン」


 慣れないことは疲れるともんだ。

 そう思いながらも無事に人材確保ができ、俺は胸をなでおろした。


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