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第三話

「……は?」


 俺は今起きた出来事に目を見開いて驚く。

 え~と……どういうことだ? ……うん、夢だな! 夢にしては意識がハッキリし過ぎているような気がするがそうに違いない!

 いつの間にか内に眠ってしまったようだ。自分で思っていたよりも疲れていたのか。


「イツツッ……」


 ベタだが本当に眠っているのか確かめるために自分の頬をつねってみた。ただ痛いだけで目覚める様子はない。

 つまり、これは現実……ということか? ……いや、少し待て。もしかしたら物凄くリアルな夢という可能性も……あるわけないか。

 夢の中で夢だと認識することはあるらしいけど(明晰夢ってヤツだったけ?)、ここまでハッキリとした夢があるとは思えない。まぁ、夢だと信じた方が楽な状況ではあるが。


 とりあえず状況を確認するために周りを観察する。

 広い空間にバスケのゴール、端には得点板やパイプ椅子等々。見覚えがあるな。というか、俺の通っている高校の体育館だ。今日も午前中にここでバレーの授業をした。

 カーテンは完全に閉めきっていて外の様子を見ることは出来ない。


 そして俺の他にも人がいるようだ。人数は一人、二人……六人。俺を合わせて七人か。

 全員が高校の制服を着ている。六人のうち三人が俺と同じ高校の制服で、残りの三人は他の高校の制服だ。というか今気付いたが俺も高校の制服を着ている。

 ……どういうことだ? さっきまで部屋着だったはずなのに。しかも場所も一瞬で移動している。意味が分からない。起こった出来事に理解が追い付かない。


 他の人達は俺と同じように困惑していたり、冷静だったり、欠伸をしたりと皆バラバラの反応をしている。

 ……って、神山さん!? 距離が離れていたからすぐには気付かなかったけど、間違いないく神山さんだ。

 何と言うかフラれたばかりだから、どう反応したらいいか分からないんだが。

 俺が別の意味で動揺し出したその時、後ろから声をかけられた。


「君は葛西涼介くんかな?」


「……そうですけど」


 振り返ってみると、そこにはニヤニヤとした人当たりの良さそうな男が立っていた。

 ……こいつ、何で俺の名前を知っているんだ? 少なくとも俺は知らないんだが。見覚えもない。


「『何で俺の名前を知っているんだ?』みたいな顔をしているけど、そこまで警戒しなくていい。僕は君の同級生だ。名前は切原湊という」


 切原が俺の考えていることを見透かしたような口調で説明してきた。

 なるほど。俺の同級生なのか。確かによく見たら制服が同じだな。

 でも俺の方は名前を聞いたこともない。クラスも違うし。まぁ、同じ高校に通っているならどこかで俺のことを聞いてもおかしくないか。俺は自分がそんな目立つ生徒だとは思わないが。

 というか、そんなことより先に確認しないといけないことがある。切原は俺のことを知っているみたいだし自己紹介の必要はないだろう。


「これってどういう状況なんだ? 部屋でのんびりしていたはずなのに、気付いたらここにいたんだが」


「さぁ? それは僕にも分からない。僕も同じだからね。ついさっきまで自分の部屋でAV観賞していたのに、いつの間にか制服を着て体育館にいた」


「…………」


 あまりに自然に言ったので気付くのが一瞬遅れたが、この男は爽やかな顔で何を言っているんだ……。

 お前が何をしていたかなんて聞いていない。聞きたくもない。特にAV観賞なんてものは。

 まだ会ったばかりだから詳しいことは分からないけど、それでも俺の勘が言っている。――こいつは間違いなく変人だと。


 バアンッ!


「――っ!?」


 いきなり大きな爆発音が聞こえた。この場にいる全員の視線が一点に集中する。

 俺も視線を音の出所に移すと、壇上の中央に火柱が立っていた。大きさは三メートルぐらいだろうか?

 本来なら「火事か!?」とパニックになるところだが、俺を含めて全員が焦る様子はなく冷静なままだった。火というのは生物が本能的に恐れるものだが、この火柱には恐怖を感じない。

 そこにハッキリと存在を感じるのに――ぼうぼうと激しく燃えているのに一切熱気が伝わってこない。見た目は普通なのに、何と説明していいか分からない不思議な炎だ。


「レディース・アンド・ジェントルメーン!」


 火柱が一斉に全方位に分散すると、その中からサーカスのピエロみたいな格好をした男が現れた。身長はかなり高く、奇妙な笑顔の表情の仮面をつけていて、それが不気味な雰囲気を醸し出している。見るからに胡散臭い。

 火の粉はギリギリのところで俺達に届かず、下につくと同時に跡形もなく消えた。本当に不思議だ……。


「皆さま、ようこそいらっしゃいました! わたくしが今回のゲーム大会の司会進行を務めさせていただきます! 気軽にピエロとお呼びください」


「……ゲーム?」


 俺の近くにいた一人がピエロの言葉に反応する。違う高校の制服(確か近くの有名な進学校だな。自信はないけど)を着ていて眼鏡をかけた頭が良さそうなイケメンだ。宮城もそこそこイケメンだけど、あいつ以上だな。

 眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせながらピエロを睨んでいる。口角が僅かに上がっていて笑っているようにも見える。

 ……こいつもまた得体が知れない奴だ。


「いきなりのことで皆さまも状況を理解されていないと――」


「はい!」


 ピエロの言葉を遮るように切原が元気に勢いよく手を上げた。

 凄い度胸だな。でも、あんまり変なことを言うなよ……。

 こんな訳の分からない状況で唯一情報を持ってそうな奴を怒らせるのは得策じゃない。

三話終了です。


では感想待ってます。

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