子ぬこが鳴いていますよ(ミィ)
少しずつ更新しますので、話の進む速度はどちらかというと遅いです。
ご容赦下さい。
ここは魔界、魔族達の住む世界です。
この世界の生き物は弱肉強食です。
間違っても焼肉定食じゃありません、美味しいですけどね。念のため言っておきます。
そんな魔界ですから<癒し>とか<可愛い物>には飢えています。
ぶっちゃけ飢餓状態です。ハングリーってやつです。
そんな魔界の魔族達は殺伐としていました。
些細な事が切欠で戦争になる事も珍しくありません。気が短い人も多いです。
そんな魔界ですから、生き物も強くないと生き残れません。ぶっちゃけ怖いとか強いとか危ないとかそんな感じの生き物ばかりです。
まあ厳しい魔界を生き残る上で仕方ないんですけどね。
そんな魔界のある魔王のお城に一匹の見慣れない生き物が何処からか迷い込みました。
小さな子ぬこです。
体はとても小さく、泣き声はか細くフワフワの毛に包まれています。
瞳はクリクリとしていて何とも言えない可愛さが有ります。
口には牙がありますがまだ子供なのでそんなに痛くありません。
時々誰かの指とかにじゃれついて、周りをほんわかさせてます。
誰かがかまってあげると喜んでじゃれつきます。
まだ子ぬこなので高い所には登れません。登ろうとしてはズリズリと落ち、 登ろうとしてはズリズリ...と落下するのを何度も繰り返します。
よくそんな光景を最近見かけます。
そんな可愛い姿を見て城の魔族達は(その姿を残したい!)と考えました。
そして全員一致で国の税金である機器の購入が決まりました。
......いいのか?本当に?
子ぬこが来てから数日...子ぬこは大人気です。可愛い仕草が大人気です。
ちなみにその時の様子を何人かの魔族が魔道機と呼ばれるこの世界のカメラみたいな機械でよく激写しています。
そうです、税金で魔道機を購入しやがりましたこの魔族達...
城の中ではもうカメコの巣窟の様になってます。
城に仕える魔族はカメラを常備しながら仕事してます。いいんでしょうか?
更に、自分の仕事をしている場所に子ぬこが来るとその場所は撮影会場になります。
他の場所の魔族は悔しそうです。
...仕事しましょうよ。
ちなみにその魔族はカメラを激写しながら鼻血を流してますが(笑)。
用があると魔族の足元に来てナァー、ナァーと泣きながら足を肉球で叩いてねだります。
あ、今一人のカメラを構えていた魔族が足元を叩かれて倒れました。
その顔は鼻血を流しながら幸せな恍惚とした表情で倒れています。
......まあ問題無いでしょう......多分。
そんな訳で今この子ぬこの居る魔王城は比較的......いやかなり平和でした。
そんな時、ある出来事が起こりました。
子ぬこがクリクリとしたつぶらな瞳で魔族達を見ながら。
「ミィ ミィ ミィ、ミィ ミィ ミィ」
可愛い声で子ぬこは何かを必死に訴えているように見えます。
あ、またそれを見ていた何人かの魔族が、鼻血を流しながら幸せそうな顔をして倒れていきました。
いいのか?お前らそれで?
あんたら一応強くて恐ろしい魔族の筈なんだけど......
でも子ぬこの泣き声は止みません。ずーっと泣き続けています。
「何だこの可愛い...おほんっ!煩い声......はぁ?」
そう言いながら魔王様がやってきましたが......彼等の、部下の格好を見て絶句しました。
部下達は額には<小動物LOVE>と書かれたハチマキに子ぬこの姿をプリントアウトした半被を着てカメラによって子ぬこを撮影していたからです。
何かどっかのアイドルの撮影会みたいになってます。
いや、もう子ぬこはこの城のアイドルでしょう。
「お前ら...その格好は何だ?」
「「作りました!<俺達<私達>>で!」」
物凄く息がピッタリです。手遅れでしょうねこの魔族達......
そんな所に宰相さんがやって来ました。
「君達、駄目じゃないか」
「宰相様...」
「(お?流石宰相、戒めてくれるのか?」
「ファンクラブの時間じゃないんですからその格好は止めましょう」
「「はーい」」
「お前かよ!!言いだしっぺは!」
「そうですが?」
「止めろよ!」
「何故です?」
魔王様が突っ込みになってしまいました。
「仕事はちゃんとする。ファンクラブの活動は時間外は禁止。問題は無いでしょ?」
「あるわい!」
「何処にあるというのですか?」
「こんな事してたら敵攻めてきたらどうするんだ!」
「は!そういえば...」
宰相さん、はたと気が付きます。
「全く......」
「これではこの子を守れませんな」
「俺を守れよ!!」
「魔王様お強いじゃあないですか」
「お前ら誰に雇われてると思ってるんだよ!!」
「ああ」
「ああ、じゃねぇよ!!」
「冗談です」
「本当か?本当に冗談だったのか!?」
魔王様どっと疲れました。
「取り敢えず報告と、何でコイツは鳴いている?」
魔王様、正体不明の生物を部下達に調べさせたようです。
調べた部下が魔王様の前にやってきました。
ハチマキと半被を着て......
「お前もかよ!!脱げよ!今は!!」
「あ、すいませんついうっかり...」
「うっかりじゃない!!......たく...でコイツはなんて生物だ?」
魔王は部下に促します。
「はっ!この生物は ぬこ という生物らしいです。人間界の生物のようです」
「人間界の生き物か...人間界にはこんな生き物が居るというのか」
「そのようです」
「で、何でコイツはさっきから鳴いているんだ?可愛くて仕方な......エホッ!エホッ!煩くてかなわん」
魔王様必死に取り繕ってます。
「何かを訴えているのでは?」
「何が言いたいのだ?お前?」
そう言いながら魔王様は子ぬこの前に屈んで目線を合わせますが、子ぬこはミィ ミィと可愛い声で鳴いているだけです。
「魔王様...魔王様...顔が緩んでます」
「は!...我とした事が...」
もう今更な気もしますが(笑)
兎に角誰もこの子が何故鳴いているのか分かりません。分かったのはこの子が<ぬこ>というだけです。
ですがその時、一人の女魔族が言いました。
「お腹すいてるんじゃないですか?」
「腹がへっているのか?」
「多分」
「よし、お前ら飯を持って来い」
魔王様の命令の元、食料が集められました。
肉、肉、野菜、果物、肉、肉、肉、果物......肉が結構大目です。
勿論、子ぬこは口にしません。
そして泣き声は止まりません。
「おい食わないぞ?」
「おかしいですね?この肉なんて魔界国産牛の肉なんですけどね?」
何か松坂牛とか国産の牛とかが魔界にもあるみたいです。
「ん?そういえばコイツに飯をやっていたのは誰だ?」
不思議に思い、魔王様皆に聞いてみました。
結果、誰も手を挙げませんでした。
「おいおいおい!じゃあどうやってコイツこの数日生きてきたんだ??」
「え?そこら辺から食料くすねたんじゃあ?」
「そんな訳あるか!食料庫からどうやってコイツが盗むんだ」
「俺はよくつまみ食いしますよ?」
「......そうか、お前暫く減棒な」
「ちょ!魔王様ーー!」
軽すぎる口は災いの元となりました。
「全く......しかしどうしたもんかな?...ん?」
その時誰かがやって来ました。
「アイリ?」
「あら?旦那様どうしてここに?」
やって来たのは魔王様の婚約者アイリ様です。
長く青い髪、優しげな瞳、白い肌を持つ魔界でも上位の美人さんです。
何かを持っています。
「アイリ何だその持っている物は?」
魔王様は婚約者さんに話しかけました。
「これですか?」
そう言いながらアイリさんは持っている道具を見せます。それは......
「哺乳瓶ですわアナタ」
「哺乳瓶?そんな物どうするんだ?」
「これですか?それはこうします」
アイリさんはそう言うと、鳴いている子ぬこを優しく胸元に抱き締めると、白い液体が入った哺乳瓶を子ぬこに近づけそれを飲ませます。
そうすると子ぬこは哺乳瓶から白い液体を飲んでいます。
その光景を見た周りの魔族達は、母親が子供を慈しむ様な光景で見る者に癒しを与えています。
「お?飲んだ。もしかしてその哺乳瓶に入っているのは...」
「これですか?ミルクです。少し温めにしてありますけど」
「コイツの食事の世話をしてたのはアイリだったのか、助かった。コイツが何を食べるのか分からなくてな」
すると子ぬこを抱えながらアイリさんは答えます。
「この子はまだ小さいですからもしかしてと思いまして」
「その考えは無かった...流石アイリだな」
何とか子ぬこの食事問題も何とかなりました。
しかしこの後アイリさん、いきなり爆弾投下してきました。
「私だって調べたんですから、駄目ですよ魔王様ちゃんとしなきゃ、お父さんになるんですから」
「あー、うん気をつけ......え?」
アイリさんの言葉にその場の皆か驚いています。
「あ...アイリ?もう一回言ってみてくれ?何だって?」
「妊娠3ヶ月目だそうです。」
その瞬間、周りの魔族達や魔王様から歓喜の声が出てきました。
「良くやったアイリ!!」
「おめでとうございます」
「めでたい日になったなぁ」
「魔王様バンザーイ!」
「ちくしょう俺も彼女欲しい!」
「魔王様のエッチ、スケベー!」
「ちくしょう!リア充め!爆発しろ!」
「待て!最後の辺り言ったの誰だーーーーーーー!!出て来い!!それと誰がスケベだーー!!」
彼らの城はこれから賑やかになっていきそうです。
恐らく続く。
感想、ご希望、要望、等々ありましたらお寄せ下さい。
なるべく反映できるように頑張ります。