プロローグ
―――ジャングル。
背の高い常葉樹によって辺りは薄暗く、はびこる蔓性植物のせいで足場が悪い。おまけに湿度が高い為ぬかるんでいる。
何をやるにしても最悪なコンディションであるフィールドだがそんなところに一つの人影があった。
周囲に溶け込み易くするための迷彩が施された軍服やフェイスペイント。地からの負荷を軽減出来るような頑丈なブーツ。外見で何より目立つのは手に持っているものを始めとした幾つもの銃だ。
太股に巻き付けたホルスターには拳銃を、肩にはロケットランチャーを持ち手にしているのは突撃銃だ。その上、弾帯をたすき掛けにしているおりその姿は最早一つの武器のようにも見る事が出来た。
そんな物騒な物を見に纏っている奴が何をしているか、それは他の気配である。今やジャングルは戦場となっている。自分以外は全て敵なのだ。何処から狙われているか分からない。息を殺し、足音を最小限に抑え自らの気配を消す。
実を言うと混沌としたこの状況で一つの目的を持って行動していた。その目的とはある人物を排除する事だ。そいつには何回も返り討ちに合っている。戦い方の特徴も体が覚えている。様々なトラップを駆使して此方の行動範囲を狭めてくる。これだけでも十分厄介だというのにそれは奴の『本命』を確実に当てる為の布石にしか過ぎない。
……その奴の本命とは―――
「カチッ」
その時、足裏がジャングルでは本来有り得ないはずの感触を感じ取っていた。
『しまった!?』
感じ取ったのが先か後か、足で踏んだ「それ」が爆発した。
『……!』
幸い、と言えるかどうか爆発の衝撃で吹き飛ばされただけで外傷は負わなかった。しかし、奴のトラップは一段では終わらない。
ダメージはなかったもの吹き飛ばされたので受け身を取り損ねる。そこには更なる罠。それによって足首が縛られる。ワイヤーが切れる事で発動し別のワイヤーによって吊り上げられるものだった。
身動きが取れず、迎撃しようと銃を撃っても反動で狙いが定まらない。そもそも奴がどこにいるかも分からない。それもその筈、奴の本命とは―――
考えが完結する前に眉間を撃ち抜かれる。姿は未だに見えないままだ。
長距離射撃を正確にするための武器、『狙撃銃』だったのだ。
「………また勝てなかった…」
目の前が徐々に暗くなっていく。
「あ〜!もうっ!!またあいつに勝てなかったよ〜!」
先程までとは全く違う場所でその叫びは響き渡った。