第4話:ガルバン
ジェイル19歳、ガルバン27歳と年齢差はありますが二人の間に敬語はありません。
そういう間柄です。
「おう姉ちゃん、こっちにハイエールと金糸豚のつまみを持ってきてくれ」
ガルバンが大きな声で店員を呼びつけ注文を頼む。
さっきから容赦のない頼み方だ。
「ジェイル、お前は頼まないのか?」
「じゃあ俺は、冷えた蜂蜜酒と火炎草の実で」
ガルバンに促されて自分も甘めの酒と辛めのつまみを注文する。
普段は酒なんてあまり飲まないが飲む時は楽しんで飲みたい。
「そういやお前、まだ18歳だったか。誘っておいてなんだが飲めるのか?」
ガルバンが少し申し訳なさそうに聞く。
この国の法だと18から飲酒OKだが、まだ飲み慣れていないと思ってるのか。
「いや、もう19歳になったし、酒も平気だ」
「そうか。お前がギルドに来たのは16の時だったのに、早いもんだ」
「よく知ってるな。言ったことあったか?」
「一人で居るのが気になったことがあってな、ギルドの奴に聞いたことがあるんだよ」
「そうか」
二人で酒をあおる。
本当ならすぐにでも相談に入りたいところだが、席についてすぐってのは無粋か。
「それにしても容赦ないな」
もちろん注文がだ。
「悪いな。最近ようやく金が目標額まで届きそうだからつい節制しちまってな」
なんとなくガルバンのような体格のいい男から節制という言葉を聞くと違和感が湧く。
「結婚資金だったか?」
「似たようなもんだ。いいとこの嬢ちゃんなんだが家が借金を作っちまってな。立替えってわけじゃないんだが、もしもの時の為に返せる分だけ貯めておきたいんだ」
そういえばギルドで誰かが話しているのを耳にしたことがある。
たしか大きいところの商人だか商会の娘だとか。
「やばいのか?」
「いや、どこも? 元々商才のある家だから時間があれば返せるんだが。ゴタゴタがあってすぐ返せってなった時、私財を売るのは嫌だろう?」
なんというか男気があるな。
ギルドの顔役なんてことをして多くの人に慕われるだけはある。
「じゃあ、なんの心配もないな」
「そういうことだ」
少しばかり不穏な話になるかと思ったが、そんなこともなかったようでよかった。
暗い話は嫌いだ。
コップを持ち上げるといつの間にか酒が空になっていた。
次の酒を頼むか。今度はワイン……いや冷酒だな。
「そういや、お前はなんのために冒険者をしてるんだ?」
ん? なんのため?
「もちろん金の為だ」
こんな冒険者なんて仕事を趣味や酔狂でやるつもりはない。
一人でやりたかったって事と、剣が得意だったから。それだけの話だ。
「違う違う、俺は今は例の資金を貯めてるだろ? お前は何が欲しいんだ? 生活する金以上にクエスト受けてるだろ」
なんだ、そういう話か。
確かに俺は一人でやってる分、他に分ける必要がないからそれだけ貯まる。
その上でギルドに顔を出す頻度から大体わかるか。
「俺は家が欲しいんだ。古い家じゃなくて新しい家だ」
宿生活も悪くないんだが、やはり家が欲しい。
「なるほどな。わかりやすい理由だ」
「だろ?」
できれば白い家がいい。大きな犬を飼うのも良いな。
「それなら騎士を続ければよかっただろうに」
「知ってたのか。確かに騎士を続けていれば家を買うのも早くなっただろうが、俺にはあの堅苦しい集団の中にいるのは無理だよ」
いや、無理だったって方が正しいか。
狭き門を潜ったのに半年でやめたような男だ、俺は。
「勿体ないねえ騎士様は」
「ほっとけ。それに急いでるわけじゃないんだ。それに気楽な分こっちの方が性に合ってる」
ハッキリとした目標はないが27歳、今のガルバン位までに建てれればいいやと思ってるんだ。まだまだ時間はある。
当然早く建つに越したことはないし、金があれば余裕を持った生活が出来るのでクエストは頻繁に受けているが。
「それで嬢ちゃんの何を相談したいんだ?」
しばらく酒を交わすと話題に詰まったのか、ガルバンの方から唐突に本題を切り出す。
「大体わかってると思うが、面倒なのを拾ったんで引き取って欲しい」
「わかってると思うが俺のパーティに入れるのは無理だ。人数も多いし受けるクエストのランクも高い」
それもそうか。ガルバンはランクBの中でも高いレベルクエストを受けているはずだ。
そんな所に素人を入れるなんて到底できない。
例えガルバンが引率をしたとしてもだ。
「じゃあ、どこか引き取ってくれそうないいパーティはないか?」
「引き取るだけならあるが、問題がある」
あるのか。
「問題は、女の居ない若いパーティってことだ」
「なるほど大問題だ」
若い男だけのパーティに若く見た目の良い女を入れたらどうなるだろう。
女一人をめぐってパーティが崩壊なんてのはよく聞く話だ。
いや、あの子は子供だし平気か?
まあ、ガルバンも言う位だしやめた方がいいんだろうな。
「それで、どうする?」
どうするって……。
俺は一人で居たい、それは変わらない。
変わらないんだけど……。
「俺が面倒見るよ」
面倒見るのも嫌だけど見捨てるのも良心が許してくれそうにない。
それなら自分で引き取るしかないだろう。
「さっさといっぱしに育て上げて、どこかのパーティに引き渡すさ」
「なるほどね。あくまで一人でやりたいわけだ」
「当然」
それにしても結局こうなったか。
相談したはいいが話が進展しなかったな。いや、確定しただけ後ろに進んだのか。
「こっちも引き取ってくれそうなパーティを探してやるから、あまり気にするなよ」
別に気にしてはいないが。
いや、気にしてるか。一人じゃないというのは少し怖い。
「早めに見つけてくれよ」
「おう。ま、景気付けに今日は豪勢に飲もうや。頑張れよ守護の騎士サマ」
「うるせえ」




