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第3話:ミランダ

 リコリスの件で問い詰めようと思ったら逆に受付嬢――ミランダに捕まってしまった。

 ギルド内も何事かと静まり返る。


 やめろ静まり返るな。注目するな。


「ふふふ、見ましたよロックガードさん」


 見るからに邪悪な笑みを浮かべるミランダ。

 何を見たんだ。


「何の話だ?」

「またまたー。さっきの可愛い子ですよ」

「ああ、リコリスのことか」


 可愛いってのは見た目の話か?

 それとも子供はみんな可愛いとかそういう意味か?

 多分どっちもだろうな。


 つまりそういうことか。

 俺みたいな一人でやってる男が、あんな少女を連れてギルドに入ってきたからギルド内の空気がおかしかったんだ。



 いや、待ってくれ。


「違う。別にパーティーを組んだとかじゃない。クエストの途中、魔物に襲われてるところを見つけて拾ったんだ」


 慌てて取り繕う。


「? 襲われてるところってパーティはどうしたんですか? あの子一人だったんですか?」


 ミランダもどうやらおかしいことに気づいたようだ。


「パーティは組んでなかった。一人だった」

「ほら、パーティからはぐれちゃった……とかじゃなくてですか?」

「そうだ。一歩間違えれば死んでたぞ」


 あの子が受けていたランクCは本来パーティで受けるレベルのランクで、決して子供が一人で受けるようなクエストじゃない。

 俺のように一人でやる奴も居るが。


「いえ、あの、え? あの子、ランクCのクエストを受けてた気がするんですけど」


 ミランダも状況を飲み込んでくれたようで、ようやく本題に入れる。


「その件だが、受理したのはアンタだろう? あんな子供に。しかも初めて受けるクエストでランクCを受理するなんて何考えてるんだ」


 俺の言葉に心なしか青ざめた様子のミランダ。

 当然か。あの幼い少女を危険な場所に送り込んだのは自分だって気づいたんだから。


「うわー、大失態だー……。あの……言い訳させてもらえるならあの子、このギルドに来る前に登録"だけ"は済ませてたみたいなんですよ」


 つまりどういうことだ?


 話を整理すると、あの少女がここに来た時には既に登録は済んでいて、しかし説明は聞いていない。

 このギルドだと登録時に冒険者の心構えやクエストの説明を聞くはずだから。


「他の町で登録だけ済ませて、説明を受けずにこの町に来たのか」


 説明を貰うタイミングの違う他の町か村のギルドで登録だけ済ませたのだろう。


 ギルドの登録自体はどこで行っても同じだ。

 登録したら名前を彫ったプレートを貰う。プレートを貰ったらそのクエストを受けるギルドで見せればいい。

 受付に顔を覚えられたらプレートすら見せなくてよくなるが。


「はい、多分そうかと。なので、あの子がパーティの代表でクエストを受けに来たものだと思い込んでしまいました」


 戻ってきたのがロックガードさんと一緒だったので驚きましたけど。とミランダは続けた。



 なるほど。子供だからパーティの雑用か何かだと思っていた訳か。


「つまりは不幸な事故だな」

「いえ、確認を怠った私の責任です」


 反省してるなら責めることもない。

 おそらく後でギルド長に自分から報告して、お説教をもらってそれでこの一件は終わりだ。

 俺のお役目もここまでだ。



「じゃあ俺の方はこれで」


 話も終わったし帰るか。


「ちょっと待ってください。それで、あの子はどうするんですか?」


 どうするも何も、俺としては関わらずに済ませたいんだが。


「……」

「……」


 お互いに相手の出方を伺う。

 いつの間にかギルド内には喧騒が戻っていたが、俺達の間には沈黙が広がっていた。




「おい!」


 喧騒と沈黙が混じる中、一際大きい声が響く。

 これはガルバンの声だな。


「お前らにそのランクはまだ早い、下のランクのクエストをもう数回はこなしてからにしろ」


 どうやら、背伸びして高いランクを受けようとした誰かをいさめたようだ。

 流石にギルドの顔役をしてるだけあって面倒見がいい。


 その面倒見の良さでリコリスの時もいさめてくれてたら、俺が面倒を拾うこともなかったのに。


 いや、待てよ……?

 面倒見がいいなら好都合じゃないか。リコリスをガルバンに押し付けてしまえ。


「あ、ロックガードさんが悪そうな顔してます」


 どうやら顔に出ていたらしい。

 しかし、そんなことはどうでもいい。



 何か言いたそうなミランダを振り払い、ガルバンに声を掛ける。


「ガルバン、ちょっと相談がある」

「ジェイルか。相談ってのは、どうせさっきの嬢ちゃん関連だろ?」


 内容を言う前に言い当てるガルバン。

 そりゃわかるか。


「わかってるなら話は早い」

「おっと、相談を受けるのはいいが今は無しだ。後で酒場に来な、赤屋根の所だ」


 なるほど、高い相談料になりそうだ。

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