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るいとも!  作者: 唐子
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6.「まぁ、惚れたよね」

4話と重複する箇所があります。同じシーンの、別視点です。

シノはあの時こんなこと考えてたよーという補足です。

 

 やっほやっほ~!ふーちゃんじゃ~ん!久しぶり!元気してた?


 おっと、恨みがましい目で見てくるね~。腐女子暴露はまだ尾を引いてるの?そっか~。でも痛くもかゆくもな~い!

 あはは、怒んないでよ~うまくいったでしょ?ただ暴露したんじゃないもん。あっくんにもふーちゃんにも、どっちにも都合のいいようにしただけ。結果オーライ。今こうしてしあわせでしょ?


 ここにいるってことは、あっくん待ち?オレもクロちゃん待ち~!ちょっと話そうよ、お勉強の邪魔かな?

 わ~い!じゃ、相席失礼しま~す!この席ならキッチンからも見えるし、やきもきさせちゃおう!


 だいじょうぶだいじょうぶ~。そんな警戒しないでよ~。オレ、基本的にクロちゃんとあっくんが関わんない限り、傍観者だから。

 ……ありゃ、鋭いね~。そうだね、ふーちゃんはいつでも当事者になれちゃうんだよ~。あ、でも、安心して。

 あっくんが悲しむようなことは絶対しない。ふーちゃんの幸せはあっくんの幸せ。でしょ?……えーこんなんで照れないでよ~。


 ちょっと待ってて~ドリンクとってくる~。ふーちゃんもなんか温かいのとってくる?おっけ~待ってて~。




 おまた~。はい、ジャスミンティ。熱いから気をつけてね~。

 オレ?オレはココア~。暦の上ではもう春なのに、まだ寒いよね~。


 そう言えばもうすぐバレンタインだけど、もう用意した?

 あ~。そっか、それならクロちゃんに相談するといいよ~。クロちゃんあれでいて、家事はおばあちゃん仕込みで万能だから。うん、毎年手作りくれるよ~。去年は中からトロ~ってチョコ出てくる……フォンダンショコラ?それそれ~。めちゃくちゃうまかった~。

 落ち込まないでよ~。あっくん、ふーちゃんが作ってくれるのなら岩石でもうれしいと思うけど?あはは、でも、あっくんでそういう人でしょ?そうそう笑って笑って。


 オレもちょっと楽しみになってきちゃった。毎年直前まで秘密なんだよ~。サプライズって。クロちゃん半分外国人なんだから、今年は外国かぶれしたバレンタインしようかな~?アメリカとかじゃ、男の方から愛を乞うんだってね?バラ一輪とかいいよね~。本数と色で意味があるんだっけ~?


 ん?あぁ、そうだよクロちゃんハーフだよ~。詳細知りたければ本人に聞いてね~。オレが話していいことでもないだろうし。

 そうなの、あの家には、おばあちゃんと二人なんだよ。だからいっぱい遊びに行ってあげてよ。やっぱり同性の友達ってオレたちとは違うしさ~。


 ん?なぁに?

 あぁ、ふふ。どこまで本気なの、って?んー心外だな~。ゼロから百まで、全部本気なんだけどな~、オレ。


 疑わないでよ~心外だな~?まぁ、たしかに茶化してはいるけどね。

 これでも片思い歴長いんだよ?もう十年近いもん。ちょちょ!声大きいって!……え~ほんと、オレどんなふうに思われてるの~?

 お、ちょっとはオレに興味出てきた?……あーなるほど。やっぱり女の子だね~恋バナに目ぇ輝かしちゃって。

 あはは、いいよ~オレのおのろけを聞くがいい!


 オレがクロちゃんに拾われて救われて、あっくんと友達になる話ね。






 こう言っちゃアレだけど、小っちゃいころのオレ、かなりかわいい子供だったんだよ~。

 女の子見たいっていうのかな~?中世的というよりまったく女児で、線も細くてチビで弱虫泣き虫で、弄りがいのありそうな、そんなこども。

 あ、やだやだ、冗談じゃないってば~。あっくんに聞いてもいし、写真見れば一目瞭然じゃん。こんなしょうもない嘘はつきませ~ん。


 んでね、オレ兄ちゃんがいるの。

 三つ上で、学校に一人はいるでしょ、ガキ大将みたいな奴。まさしくそれでね~。


 兄ちゃんを気に食わない奴、敵わなくて恨んでる奴、とにかくとばっちりがオレにきてね。オレ、弱っちいもんだからさ~、やられっぱなしなの。でも、あのころから変にプライドだけはあってね。助けを呼べなかった。

 弱っちい自分を、兄ちゃんや両親に知られるのだけは嫌だった。特に兄ちゃんにだけは知られたくなかった。

 兄ちゃんは強くてさ~、敵も多かったけど、仲間もいっぱいいた。多分、張り合いたかったんだよね。年の差も経験値もまるで違うのに、兄ちゃんに勝てないわけがないって、あのころはなんでか無条件に信じてたんだよ~。

 だから、頼れる仲間もいない、一人でじめじめ泣いてる自分を自覚したくなくて、誰にも見せたくなくて、ずたっぼろで帰っても、ケンカしたとか転んだとか、そういう言いわけで押し通してたの。ふふ、意固地でしょ~。


 え?あぁ、仲いいよ!ブラコンかもね~兄ちゃんそろそろウザいもん。あはは!大丈夫!

 張り合える部分も、自分がより勝ってる部分も、敵わないものも、弱い所も、全部ひっくるめて呑みこめるようになったしね。全部まとめての兄ちゃんは嫌いじゃないよ~。もう泣いてばかりのお子さまじゃないしね~。




 そうそう、クロちゃんは小二からの転校生だったんだよ。

 それまで外国いたから、言葉の問題もあって、遠巻きにされてたね~。あっくんも含めてね。

 あ、誤解しないでね~。クロちゃんの道連れとかじゃなかったんだよ~。


 あっくん自身、近寄りがたい空気を出してる子供だったんだよ。オレ違うクラスだったけど、あのころのあっくんは体育とかでもいつもボッチだったし。クロちゃん来てからクロちゃんと組んでたけどさ~。

 登校班とかあった?あ、ほんと?うちもあったんだけどさ、ちょっと思い出してみて~。

 縦列に並んで登校する時、絶対離れて歩く奴とかいたでしょ?集団になじめなくて、個別の成績は揮うのに、通信簿に「協調性がありません」て書かれる奴。あれをあっくんだと思ってよ。想像つきやすいんじゃない?

 クロちゃん?あー、確か、フラフラすぐどっか行こうとして、あっくんにランドセルつかまれて方向修正されてたような?ごめんね、そのころのオレもいっぱいいっぱいで、随分俯いて歩いてたからさ、覚えてないや~。


 このころのクロちゃんもあっくんも、すごい無口だったんだよ。無駄口一切叩かない、視線で会話する、みたいな。

 ………うん、ちょっと妬けるよね。でも今は違うし。うん……。



 出会い、かぁ。う~ん。今でも考えるけど、これ、オレが先に出会ってたんじゃダメだったんだよね。

 そうそう、あっくんより先にって意味で。ダメだったんだよ。この順番じゃなきゃダメだったんだ。


 あっくんの話、聞いてる?……そっか。

 よかったらさ、機会があったら、ううん、バレンタインの時にでも、聞いてあげてよ。


 オレとクロちゃんの問題って、だいたいよそからあずけられた類の、余計な荷物だけどさ、あっくんは違うんだよ。あっくん自身の問題なの。

 それをふーちゃんがどうにかしてくれたら、オレとクロちゃんはすごく安心なんだ。一緒に持ってくれるんでも、悩んでくれるんでも、アドバイスするにしろね。気に留めといてくれるとうれしいな~。



 なんかしんみりしちゃったね~、もうやめとく?

 あ、続けるの?ふてぶてしくなってきたな~。嫌いじゃないよ、そういうの!

 飲み物おかわりとってくるね~。いる?ちょっとまってて~。





 じゃぁ、季節外れの夏の話ね。クロちゃんに救われた話。


 いじめられてたのも、そんなに長い期間じゃなかったんだよ。小一から始まって、終息したのは小二の二学期かな。え、長い?でも陰険なのはそんななかったしね~。実際には、夏休み前には終わったもんだし。

 ここで我らがクロちゃんの登場ですよ!あはは、ごめんごめん、うん。あっくんもいたよ~。

 きっかけはクロちゃんがくれた。で、あっくんが守ってくれた。だからオレは、立ち向かえたの。


 夏休み前の話ね。その日、やっぱりオレはいじめられてた~。

 俺よりちょっと上か、兄ちゃんと同い年かちょっと上か、そんくらいの男子七、八人に囲まれてたのね。殴る蹴るボール当てのあと、仕上げに泥水ぶっかけてくれてさ~。泣くもんかって思っても、涙って出てくるんだよ。でも泣いたら泣いたで囃されてさ~、どっちにしろ面倒なんだよね~。

 肩ドンだったかな?なにかしらされてコケちゃって、下は泥だし、もう最悪って、いよいよ惨めでさ~。

 その時に、さっそうと現れた誰か……ていうかクロちゃんだったんだけどさ、俺のことコカした相手に飛び掛かって、殴りつけたの。ぐーだよぐー!びっくりしたぁ。今でも鮮明に覚えてるよ。


 マウントとって一発、ひっくり返されて一発、またマウントとって二発殴って、腹蹴られそうになって飛びのいたの。

 双方鼻血は出てるは擦り剥いてるは砂まみれだわ、すごくてね。でも、クロちゃんの方がすごかったよ。ふーふー動物みたいに息して、相手を睨みつけて。気圧されてたもん。俺も気圧された。ぽかんと見惚れてしまった。そしたらクロちゃんが叫んだの。


「泣くな!」


 って。


 ビリビリした。すっごいぞくぞくした。ああいうのを恫喝っていうんだろうなって、後でこの熟語知った時思ったよ。

 で、手を差し伸べて言うの。


「負けたくないなら、一緒にこい!」


 ふふ、ヒーローみたいでしょ。ここまでなら、ただのかっこいい人だったんだよ。

 その手をとっさに掴んで、その勢いのままクロちゃんは公園の外に走っていってさ。そうそう、入り口にはあっくんがいたよ。勢いのまま合流して、町中逃げ惑ったの、三人で。


 今思えば不思議だけど、あの時三人みんな、ずっと手を握っててさ。うん、オレ真ん中にね。オレが一番弱かったんだもん、足手まといだった。でも、置いてかれなかった。追いかけてくるいじめっ子はどんどん増えてったけど、絶対置いてかれなかったし、置いて行こうなんて思わなかった。

 クロちゃんは野生の勘ていうのかな~?こう、通りの向こうにいじめっ子の気配がする!こちの方がなんがヤな感じする!って。それが当たるんだよ~。隠れてやり過ごしたりね~。


 で、町中駆け回って、最後はクロちゃんちの裏の林に逃げ込んだの。そしたらびっくりだよね!

 跳ぶって言われて引かれるまま転がるように地面を跳んで、後ろまで差し迫った追手にもうダメだって思ったら、振り返った瞬間いじめっ子たちが消えるんだもん!びっくりした!

 あの林、クロちゃんとあっくんのブービートラップ練習場になってたんだって~。みんな落とし穴とか、降りかかってきた投網にからまって、大人が来るまでもがいてたんだもん。十、二十の落とし穴やトラップを、七歳そこそこの子供二人が作ったって、それがまずすごいよね!


 それに、それだけじゃなかったんだ~。

 しまいには、いじめっ子の親まで出てきたの。駆けつけてくれてたお巡りさんも一緒に状況確認ね。親はカンカンだし、落とし穴の中は泥でヒルが棲んでたらしくて、結構グロイ怪我の子も多かったみたい。


 でも全部、あっくんが論破してくれたんだよ。


 オレがいじめっ子に殴られ蹴られ泥水浴びせられたこと。これはオレに残った殴打痕と着てた服が証拠。

 オレを助けたクロはいじめっ子に殴り返されたし、俺たちは町中を執拗に追い掛け回されたこと。これは、クロちゃんの鼻血跡とたくさんの町の人が目撃してた。

 その林が私有地だということ、私有地に無断侵入して器物破損……罠にかかるのもこれになるんだって、ふーちゃん知ってた?……だよね。知らないよね。で、土地所有者に危害を加えようとしたことは、起訴案件になるって、大人相手に堂々言ってさ。

 だんだん黙ってく大人を見るのは、ちょっと胸が空いたな~。


 冷静に論破するあっくんと交代でに黙りこくっちゃったクロちゃんだけどさ。


 つないだ手がね、震えてたんだ。あっくんも、クロちゃんも。

 それで、全部済むまで、二人とも、まったく無表情でさ。


 それ見て、なんていうか、今まで殴られてきたどの傷より痛かったの。


 多分怖くなかったわけじゃないんだよ。

 多勢に無勢なんて、大人だって怖い。でも、乗り切ってくれたの、二人で。

 オレはお荷物でしかなかった。何の力にもなれなかった。助けてもらうだけだった。

 恥ずかしくなったよ。オレもこの二人の力になりたいって思った。

 誰かの何かになりたいって、多分生まれて初めて考えたんじゃないかな?

 どうしたら役に立てるのかなんてわからなかったから、素直に教えてもらいに行ったよ~。

 それからずっと、一緒にいる感じ~?



 うふふ、長くなっちゃってごめんね~。みんな耳タコでもう聞いてくれないんだよ~。クロちゃんの雄姿とかあっくんの機略縦横なふるまいを語っても、アーハイハイで済まされちゃうの~。慣れって怖い~。でもひさびさに語れて満足だよ~ありがと~。



 あ、そろそろクロちゃんのバイト終るや~。オレ行くね~。

 あっくんはもうちょっとかな~。ふーちゃん女の子なんだから、あんまり遅くまで出歩いちゃだめだよ~?あっくんに家まで送らせたげてね。

 悪いとか思わなくていいから~。男に送らせるのは権利だと思えばいいよ~。じゃないと、あっくん心配でふーちゃんの後ろ追ってっちゃうかもね~。

 あはは、冗談だよ~。でも、本当暗くなる前に帰った方がよかったんだよ?あっくんのためにも遠慮なんかしないでね。


 あ、ヤダ雪降って来たよ~。積もるかな~?

 じゃ~またね~!風邪ひかないでね~。





 * * *


 ク~ロちゃ~ん!おっつかれさま~!雪降ってきちゃったね~傘ある?なければ相合傘だよ!

 ……うぅ、さすがおばあちゃん子……天気予報は外さない~……。

 おお?これは、からあげの匂いと……肉まん?わ~い!やったね、クロちゃん大好き!あ、ヤダ!そっちピザまん?!うそうそ~!クロちゃんひどい~そっちの方好きなの知ってて~!


 ……んはい、ふまいでふ。……クロちゃんたら、いきなりねじ込んでこないでよ、オレびっくりしちゃった。


 あぁ、わかる~?ふふ。あっくんとこのファミレスで、ふーちゃんに会ったんだよ。で、こないだの暴露のお詫び含めて昔話をね。

 飽きないよ~。脳内補正もあるんだろうけど、忘れられっこないし、忘れたくないし。オレは繰り返すよ何度だって思いだしてみせるさ!そうだね、ムスカくんは大変いじらしいキャラだよね~。


 あ……。


 んーん。いや、肝心の、クロに突き落とされちゃった部分を話すの忘れちゃったな、って。

 やだよ~。これこそ、忘れられないんだよ。

 ……。








 …………………クロちゃんには、無意識な言葉だったのかもしれないけど。

 多分、一番欲しかった言葉なんだと、今でも勝手に思ってるんだよ。


 クロちゃんをつかまえて聞いたよね。

 どうしたら、君の役に立てる?って。


 クロちゃんが言ったんだよ。

「そばにいて」「手を握って」って。


 あのとき握った手が、すごく小さくてもろくて、壊してしまいたくて……温かくて。

 あの力強さとは正反対のものを、一緒に持ってるクロちゃんを、放っておけなくて。

 だから。


 だから、オレは……。








 ……ごめ~んっ!待ってよクロちゃん置いてかないで~!

 ダメダメ、ちゃんと送らせてよ。好きな子を送るのは、男の権利なんだよ?

 うん?えへへ、寒いからね!おれの手あったかいでしょ~?






 だから、ずっとつないでようね。

 はなれる日まで、つないでようね。








布川さんの伝票もシノが一緒に持ってきました。

さらっとこういうことをする男、長船鎬@幼なじみ厨クロ廃。

布川さんはあっくんがきちんとおうちまで送り届けました。



後半はでき上がり次第更新します。週末からできたらいいね。

誤字脱字が多すぎてびえーッとなっていますが、全話更新してからゆっくり直します。

発見したら活動報告のコメントでも感想でもいいので、そっと教えていただけたらと思います。


2015.12.17 改稿。


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