表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
るいとも!  作者: 唐子
4/17

4.「とんでもねーやつが来おったと思った。あながち間違ってなかった」

歩視点。



 

 俺とクロの出会い?

 あー、まぁ、覚えちゃいるよ。聞きたいか?ふーん、そんな面白い話でもないけど。




 出会いは小一の冬な。クロの母親がクロ連れて出戻ってきたの。

 で、同い年だからよろしくしろよ、ってんで引き合わされた。そんなもんだよ。特別な話しじゃない。


 印象かー。なんか、虚ろな奴来たなーと。え?いや、クロの話だろ?

 間違ってないよ。あいつ最初すげー暗かったの。無口だし、いつ見ても寝てるみたいな真顔だったし。

 親の離婚で外国からこんな田舎に来たんじゃ、環境の変化についてくのもやっとだったんだろーなって、今なら思えるけどさ。そん時は知らないしさ。


 あぁ、そっか。そうそう。クロ、あれでハーフなんだよ。お前知らなかったか?

 目とか見てみ。榛にちょっと緑混じりで、不思議な色してるから。

 クロ母は見事な黒髪ストレートだから、金髪クセッ毛は父親譲りなんかな。ニューヨークだかパリだかわからんけど、そっちに仕事で行っててそのまま現地婚したらしい。父親の話は、ちょっとしか聞いたことないな。よくわからん。


 そういえばクロって、最初日本語ダメだったんだよ。聞くのも話すのも片言でさ。英語の方がすんなり話せたの。

 スラングまじりの下町言葉だったからかなり聞き汚かったけど、まぁなんとか意思は読み取れたからね。

 英語で考え聞いて、それ日本語に直して、まるきり繰り返させて、丸暗記。苦労したわ。でもまぁあいつマジ野生だから、とっかかりさえ与えたらあとは感覚でどうにかなったみたい。子どもの内は語彙なんて、話しながら覚えていくもんだしね。


 そー、俺、先生代わり。一応英語は読み聞き書きできたしな。一緒にいて不自然じゃない年頃で、遊びながら二人でコミュニケーションの練習しろってつもりだったんだろ。

 俺もガキんころはクソ生意気で、あんまり周囲と円滑じゃなかったし。ぶっちゃけぼっちだったし。


 そんな顔すんなよ。今はそうじゃないだろ?



 クロの話な。中途半端な時期に転入してもあれだし、新学年までになんとか日本語話せるくらいまで持ってくって方針で、よく二人で放り出されたわ。


 最初は話せないし、動かないし、笑いも怒りもしないし、俺もコミュニケーションなんか苦手だしさ。あいつがぼんやり土ほじくってる横でずっと本読んでたわ。あはは、もくろみ外れてる?その通り。

 ほんとに最初の一カ月はこんな感じだったよ。



 動き始めたのは二か月過ぎてからかな。だんだんクロも好奇心が出始めてさ。外に外に興味が行ったの。でも俺はインドア派だったから出たくない。どうなると思う?


 動物に近いガキ二人意見が違えば、まぁケンカだよ。殴り合い。

 あいつのせいで俺、乳歯三本ぬけたんだよ。俺も二本ぬいたったけどな!

 したんだよ、そーいうケンカ。そのころお前はまだ生まれてなかったしな。

 互いに加減なんかわからないから、結果は結構悲惨だったよ。その割に両家族大笑いで写真にまで残してくれちゃってるけど。あぁ、残ってるはずだよ。そんなに見たいもん?母さんに聞いとくわ。多分アルバムにあるよ。


 んー、殴り合いのケンカして、お互いの痛みが分かった?のかなあ?いや、そんなんじゃないか。

 お互い、こいつになら遠慮しなくていいって思ったんだろうな。

 それからあっちこっちひっぱられて、あれは何これは何攻撃。ここで辛抱強く付き合ったおかげで、お前のあれ何攻撃は楽だったっけな。


 もちろんクロにもつきあわせたよ。俺ばっか無理して外でるとか、フェアじゃないし。じっくり勉強漬けにしてやったのに、どうしてあいつはいつまでもバカなんだろうな?幼児教育はほとんど一緒なのに、謎だわ。お前はああはなるなよ?



 新学年になってやっと転入してきたけど、やっぱり俺はボッチだったし、クロもそうだったな。あまりに毛艶が違ったからかな、遠巻きにされてたよ。

 このころのクロは、まだしゃべるのも聞くのも苦手だったみたいだし。感情が高ぶると英語の方がでて周りは混乱とか、よくあったよ。やっぱり表情はあんまり変わらなかったけど、ちょろちょろよく動く奴だったな。危なっかしくって、後ろからついてってたわ。犬の散歩みたいな?


 奇行が始まったのもこのころだなー。

 最初はあれ、落とし穴。


 子どもの作る落とし穴なんて、大したことないって思うだろ?いや、これは、俺も悪かったと思ってる。

 サバゲーのトラパーマニュアル読本なんて、見せるべきじゃなかったと、今ならわかる。俺も子どもだったんだな。


 クロんちの裏に林が広がってるだろ。けっこうな広さの。あそこもクロんちなんだよ。知ってたか?

 あそこにでっかい落とし穴掘った。二人がかりで二週間かかったな。網とか泥水とか使って、結構深く、本格的に。うん。偽装も完璧だった。完成の瞬間、真顔でハイタッチしたもん。

 まぁ、作るのに夢中で、そのあとしばらく放置だったんだけど、それも、うん……悪かった。


 しばらくトラップ作りに二人してハマっててさー。畑の害獣とか、よくかかって褒められたりしたもんだから、調子のってさ。

 他の子がしてるような遊びに夢中になれなかったんだよな、俺もクロも。

 で「なんかとんでもねー奴が来おった」って感じでますます遠巻きにされて?

 集団行動苦手なのはこのころからだよ。反面教師にしろよ。



 ああ、シノは、その時他のクラスだった。

 で、あいつ、いじめられっこだったの。


 あのころのクロよりチビだったんだぜー。今の姿からじゃ想像もつかんわな。

 華奢で色白ですぐビクついて泣く、そこらの女子よりかわいい男子だったね。髪色が他と違うってのもあって、男子には格好の的だったよ。いじめただけすぐ泣くんだもん。


 ん?登校班一緒で顔見知りだったけど、仲良くはなかったよ。

 そのころ俺は他人に対して無関心だったし、クロも自分で手いっぱいだったから。


 それがどうして今こうなると?それ、俺もいまだ不思議なんだよな。


 クロの風変わりな行動が当たり前になると、それにいちゃもんつけてくる奴も、一定数はいたんだ。どこにでも難癖つけてくる輩ってのはいるもんだ。

 それでも遠くから吠えてるようなもんで、うるさいだけで実害はないから放っておいたんだよ。


 シノの兄ちゃんいるだろ。そうそう、なかさん。

 お前は知らんかもしれないけど、この人がさ、すっっっっっげー悪タレなの。


 俺らの三つ上でさ、面白いことにすぐ首つっこんで、引っ掻き回して、周りは酷い目あうのに本人だけケロッとしてさ、台風の目みたいな。うん。ある意味天災みたいな人だよ。しょうがねーよ。俺らの悪さなんて、ほとんどこの人仕込みだもん。

 リーダーシップあって頼りになるんだけど、近くにいるにはおっかなびっくりというか。面倒見がいいとこだけが救いだね。あれで身内には甘いから。

 そういう奴ってさ、妬みも買いやすいだろ?で、本人に向けられなくてどこに向くかって。

 そいつが大事にしてて、見た目も中身も弱っちょろくて簡単に手を下せそうなのが、低学年にいるじゃん、て。


 シノが狙い目だよね。


 なかさんは上級生にも同学年にも下級生にも、妬みもうらみも買ってた。

 シノは弱くて、自衛なんて無理無茶無謀でねー。けっこうもうずたぼろだったよ。



 うん。ここまでが傍観。

 こっからがクロの奇行。



 いつだったかな、暑くて、でも夏休み前には決着ついてたから、七月かそんくらい?


 シノが公園で、明らかに年上の奴らに、泥水ぶっかけられて泣いててさ。

 公園の入り口でそれ見て、俺は関わらんとこってすぐ帰りたかったんだけど、隣のクロがさー。何を思ったか駆け出して、いじめっ子の一人に飛びかかったんだよ。あ、男だよ。みんな男だった。

 取っ組み合いで地面ごろごろしたと思ったら、飛び掛かれる距離をとってにらみ合ってさ。俺もシノもぽかんだよ。お互い鼻血出てたし。

 そしたらシノの方向いて、雄叫んだんだよ。


「泣くな!」


 って。


 「負けたくないなら、一緒にこい!」って、手を差し伸べてさ。


 負けるって何にだよとか、お前いつの間にそんなアグレッシブになったのとか、ツッコミは多々あれど、シノはクロの手をとった。


 俺もよく覚えてるなー。それだけ印象的だったんだけど。続けるな。


 多勢に無勢だ、逃げるが勝ち。巻き込んでくれたクロをののしりながら走ったよ。

 で、ここでクロにいちゃもんつけてきてた奴ら。

 シノいじめてた奴らの中にもいたんだけどさ、こいつらがクソで。追いかけられてるうちに目を引いて、どんどん集まって来て。こっちが追いつめられてるとみるや、多勢に回って追いまわしに来たんよ。うん。けっこうな人数になったよね。さすがにきつかったよ。

 こっちはまだ体も小さい低学年で、向こうは体も大きくて持久力もある上級生だ。時間の問題だったね。

 なんとか家に入り込めばしのげると思って、隠れて、走って、クロは本能の奴だからさ、危機回避力とか半端ないんだよ。知ってるだろ?


 家の前まで大勢に追い込まれて来て、もう少しってところで、クロ、そのまま走ってっちゃったんだよ。

 何してんだよって思うだろ?俺は、走ってった方向見たら、まぁ、察せちゃってさ。


 都市マラソンと一緒だよ。一度走り出したら、流れに乗るんだ。集団心理ってそういうもん。赤信号みんなで渡ればってやつ。お前はやるなよ?

 誰かのせいにするようなことは絶対するな。自分の行動の責任は自分でとれ。兄ちゃんとの約束な。


 で。


 俺達が安全圏を通りすぎるだろ?

 追走集団は「あれ?」って思いながら「しめた!」って気になって勢い増すだろ?

 大回りして、行き着く先はクロんちの林だろ?

 林には、仕掛けたトラップがまだ、手つかずであるだろ?

 俺たちは知り尽くしてるんだから、当然避けるだろ?

 勢いのまま追走集団はつっこんでくだろ?


 まぁ、引っかかりますよね。


 正直スマンかった。


 落とし穴の深さは二メートル以上だったし、田んぼから引いた泥水にヒルがわいてたのは、想定外だった。

 狼穽モドキで一網打尽してしまったのも、ちょっと深めで自力で上がれなくしたのも、正直スマンかった。

 あ、簡単だけど意外と効果あるのは草を結んだ罠な。地味に効く。すっ転んでそのまま落とし穴にインしたのも多かったし。

 引っかからせて上から網打つって仕掛けも、作るのは楽しいけど、引っかかるやつによるな。逆上させて混乱すればするほど絡まってくれるから、よく考えてな。



 そこに来るまで、町中走り回って大騒ぎしてるんだから、周りも気がつくわな。

 なかさんも、巡査の……そのころはもう少し若かったか、おっさんもな、気にして駆けつけてくれて。


 まぁ、阿鼻叫喚だったわけだが。


 泣くわ喚くわ、悪ガキどもとその親は俺らを責めたけどさ。

 年下のガキ追いかけまわしたあげく私有地に入り込んで勝手に罠に嵌ったのは、あいつらの方だしね?そう言えば、それ以上は追撃されなかったよ。俺が一つの真理を学んだ場面。賢くなったね。

 クロはやるだけやってまただんまりに戻っちゃったし、シノもちんぷんかんぷんて顔してたし。説明できたの俺だけだったからね。しょうがない。思えば、こっから役割分担できてしまったんだよなー……。



 それからしばらく、誰にも手も口も出されず静かでいいなーって思ってたんだけど。それも夏休み前までだったな……。

 夏休み入る前には、シノとクロが転げまわって遊ぶようになってたよ。

 引っ張るというか引きずり込まれるし、なかさんには目ぇつけられるし、シノは泣かなくなった代わりに愉快犯になってってクロは便乗したりそそのかしたりするし、詰め甘いから結局手を貸さないとあいつら酷い目にあうし、手を貸したって酷い目にあったし……散々だよね。


 こうして俺のあいつらのお守人生が始まったわけだが。


 とんでもねー奴が来おった、っていうのは、あながち間違ってなかったな。

 クロもシノも、とんでもなく傍迷惑な奴らだよ。あいつらといると本っっっ当厭きないわ。ハハ。



 ん?嫌いじゃねーよ。嫌いな奴にここまでつきあわんわ。そこまで酔狂でも変態でもない。シノじゃあるまいし。大好きってわけでもないけどな。

 腐れ縁?もう家族?みたいな、そう、お前より出来の悪い弟妹みたいな、な。そんな感じ。


 いつまでも、ずっと同じってわけにはいかないし。

 ここまで一緒だったんだから、これから多少離れても平気だろ。


 いつかは家族離れしないと、いい大人にはなれんだろう。ああ、泣くなよ。

 今すぐって話じゃないし、お前と離れるって話でもないだろ?

 いつかは、お前も親離れして家族離れして乗り越えてくことなんだからあーああああああああああああ泣くなって!


 泣き虫だなぁ、智。ヘッドスライディングでベースつっこんでって皮ズル剥けになっても泣かなかったのに。

 いや、優しく育ってくれて、兄ちゃん嬉しいけどな。


 ちょっとやそっと離れてるくらいじゃ、変わらんだろうってこと。だって家族なんだからさ。

 ふらっと戻ってきたとき、そのまんま受け入れてもらえるのも、家族のいいところなんじゃね?

 だから泣くことなんかないんだよ。



 え、次の試合?スタメンなの?すげーじゃん!

 待てな、……うん、バイトもないし、行けるよ。秋の新人戦に向けた練習試合なんだろ?応援するよ。クロとシノにも声かけるわ。あいつらも都合ついたら来るよ。

 あ?当たり前だろ。あいつらにとっても、お前は弟みたいなもんなんだから。



 おう、兄ちゃんにホームランボール見してくれよな!






弟が聞いた、三人の出会いの話。




2015.12.14 改稿。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ