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告白どころではないっ!

わたくし、狭間雄輔は鳳高等学校の2年、男子生徒です。

先日、思いを寄せている相手に告白をしようとしたところ、何故か。本当に何故か第三者を交えてカラオケに行くことになり、とりあえず着いて行ったところ、特に何もなくカラオケの時間が過ぎ、各々の帰路に着いた訳でございます。

帰ってからはお互いメールで「今日のカラオケ楽しかったねっ(^ν^)」などとやり取りを行い、就寝。

そして目覚めた朝、わたくし思ったのです。


「俺間接的にフられたんじゃね!?」


一方的な好意というものは、受け取る側からすればありがた迷惑、むしろ素直に言ってキモいと思われ、しかしそれを相手に伝えるのも悪いという発想から、今回の件はお流しという結論に至ったのでは無いのでしょうかそうではないのでしょうか。

カーテンから朝の光がチラチラと刺し照らす、起きたばかりなのに頬が冷たい。


「あくびだよ、全部あくびで出たんだ。俺泣いてない……」


俺は二度寝を決意した。


春休みというものは恐ろしい。この心地良い暖かさに、少し冷たい風。あと中途半端に短く、しかも花粉で鼻も目も大変な事になる。

後者2つはともかく、春休みというものは人をダメにする。気付いたら明日から学校、そんな展開はもう何年も繰り返してきた。


まぁ告白失敗してから何も特になくボーッと過ごしていただけなんですけどね!!

今日は4月1日、始業式。あの日から本当に何もなく過ごしてきた訳で、朝起きるのが少し大変だった。夜遅くまで起きていかがわしいDVD見てたり、オタクの友人から借りたいかがわしいパソコンでプレイするゲームにハマり、ノンストップでやり続けていたらもう新学期。昼夜逆転生活が祟り、割とギリギリな時間の登校だった。


校門をくぐり、校舎の前に張り出された新二年生用の新しいクラス名簿を確認しに行く。

周りにはまだ沢山の生徒がいた、中には一緒のクラスだねとはしゃぐ者やまたお前かよとからかい合う者と、多種多様だった。


「俺はーーーっと」

2年B組、らしい。

思わずやってしまったことと言えば、気になる彼女のクラスを横目で追うことであった。そして横目ではなく正面から二度見をすることになる。


「おっ狭間くん一緒のクラスだ!よろしくねーっ」


そう言って隣には想い人こと告白失敗の主、早見沙織さんのお姿が。


「にょっ、よろしくぅ…っ」


一瞬変な声が出たが、気にしない。狭間雄輔はクールに挨拶をするぜ。


「あっ狭間くんそういえば、こないだのカラオケの日だけどさ、私に何か言おうとしてたじゃん?何だったかな?」


この時、少しだけ時が止まった。


さあここでクエスチョンだ、秘技告白流しの後のこの質問、この意味はつまり「そういうことにして告白無しでお願いします」という事なのではないか、疑問文で聞いてはいるが実はこのセリフからは命令文が読み取れる訳だ。どうする?君ならどうする?


私ならこうするッ!!


「ちょっといいかな?」


耳打ちを頼むと早見さんは何だろうという顔をして耳をこちらに傾けてくれた。


来た、この流れは激アツ!!


何度も予習をして来た、シャドーもデモンストレーションも何でも!!


(実は…… )


小声で勇気を振り絞り、その続きをーーー


「おおっとごめんよォ!!」


「へぶっ!!」

「ひゃっ!!」


後ろから来た何かにぶつかって後頭部を打った様だ、頭がフラついた。


「いッたいなァ、何だよ!」


振り返るとそこには、バットを持った女子がいた。しかも可愛い。


「悪かったって言ったでしょ?ごめんごめん。そっちの、早見さんも大丈夫?顔赤いよ?」


「へ?」


早見さんの方へ振り返ると、顔は真っ赤になっていて片手で耳を抑えていた。

俺が振り返るとさらに顔が赤くなり、何も言わずにそのまま走って何処かへ行ってしまった。


「悪かったね、それじゃ。」


こっちの可愛い子もそう言って去って行く。


バットの可愛い子は兎も角、早見さんは何故逃げ出す様に去って行ったのだろうか。

唇に仄かに残る柔らかい感触が、記憶を、体験をフラッシュバックさせる。


あの時、後ろからバットがぶつかり、その衝撃で早見さんに倒れかかる形になって……


気付いた時には俺も顔が真っ赤に染まっていた。


「つ、付き合ってもないし何でもないのに耳にチュー……」


それは逃げ出す、俺が女子なら何なら一発ビンタをカマしてから逃げ出したよきっと。

落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせながら、新しい教室へと足を運ばせた。道中何があったかも覚えてはいない。


教室に着き、新しいメンバーに見知った顔ぶれ、皆と挨拶を交わして自分の席を黒板で確認、ぼーっとした頭で着席する。


ふと隣の席を見るとーーー


「あ……おはよう狭間くん。」


早見さんがいた。


「お、おはよう……。 」


2人の間に沈黙が流れる。


告白どころではなくなってしまった、まずはこの流れを断ち切るしかない。

「そういえばさーーー」

「あっさっきのー!」


ことごとく俺の発言は彼方に飛ばされる運命にあるらしい。


「何だよって……あ。」


先ほどのバットの可愛い子が後ろにいた。


「よっす、これからよろしくなっ 」


新学期初日から、嵐の様に色々な事が訪れるものだ。

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