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魔法少女は信じちゃいけない  作者: 夜光始世
第三章★桐津羽衣児
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桐津羽衣児4


「マジ神国のトップの人ってみんな超クールっスよね! 俺こないだ遠藤さんが喧嘩してるとこ見たんスけどありえねぇ動きしてて、もうほんと獣!つう感じでハンパなかったっス」

 後藤が目をきらきらさせながら言う。あぁそうだ、遠藤も戦闘系だったな。瀬田さんの悪口言われない限りはおとなしいが、目つき悪ぃし上背あるから悪目立ちしてよく絡まれてる。で、あっという間に返り討ち。

 あいつはスイッチ入るとマジ理性飛ぶっつーか、人間じゃないみたく、それこそ後藤が言ったように獣じみた暴れ方をする。爪で切り裂き歯で噛み砕き、恐ろしい素早さで懐に飛び込み一撃で急所を突くのだ。ついたあだ名が狂犬遠藤。瀬田さん以外には飼い慣らせない、厄介な犬。

「あいつまた喧嘩してたんだぁ。誰とやったの?」

 一応聞いてみると、後藤は何故か誇らしげに「小島っす!」と言った。小島? どの小島だよ。

「小島は元々リゲラのパシリしてたんスけど、解散したあと偽露鎮に入ったんス。もうすげーうぜぇ奴で、イキってるわりに弱ぇし、親がサツの偉い奴だとかで自慢すっし、遠藤さんがキレたの当たり前っスよ、俺あいつがやられたの見てめちゃくちゃすっきりしましたもん」

 ……あー、小島博次か。親がサツ? いや、確か警察庁室長は小島の叔父だったはずだ。それだって充分マズいけど。

 あ゛―もう。めんどくせぇ奴潰してくれたなぁ、遠藤。これほっとくと神国全体が目ぇつけられっかも……。結局は瀬田さんだって迷惑被るんだぜ。わかってんのかね、あいつ。わかってねぇんだろーなぁ。なんせ中学もろくに行ってない底辺だ。物事の裏を読むとかできなそう。

しょうがねぇから俺が後始末しとくか。一応情報通気取ってるわけだし、この程度の根回しはね。

幸い当てがないわけじゃない。携帯を取り出してアドレス帳を呼び出す。

「あれっ、白狐さん、携帯変えたんすか?」

「あー、うん」

「へー、かっこいっすね。前のも黒系で良かったけど」

 うん、あれ見た目は一番気に入ってる。だから別に変えたわけじゃない。三つの携帯を使い分けてるだけ。でも携帯三台持ちなんて胡散臭さ極まれりだから、あえて言わない。

『あ、ハイジさん!? きゃー久しぶりー! えーどうしたんですかぁ、ちょー嬉しー』

 携帯越しに響く黄色い声に適当に返事して、聞きたいことを聞き出す。

 木山達は「やっばモテるんじゃないスかー」という羨望の眼差しで見てくるが、だからそんなんじゃねぇんだって。本気で俺のことを好きになる奴なんていないんだよ。俺が差し出すのは上面だけで、それでもいいって奴しか俺に惹かれたりしないんだから。

「お前らにさぁ、今度可愛い子紹介したげよっかぁ」

 通話口を塞いで小声で囁くと、木村達はマジすかぁと色めきたった。たーんじゅん。だからちょっと席外してねと手で払う仕草をすれば、すぐに察して立ち上がり、音楽に合わせて踊りの輪に加わっていく。

 さて、何日で片付くかな。相手によって携帯と声色と言葉づかいを使い分けながら、俺は裏工作を進めていった。

                                                                                                                                                                                                                 


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