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魔法少女は信じちゃいけない  作者: 夜光始世
第三章★桐津羽衣児
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桐津羽衣児2


 テストのできはあんまり良くなかった。そりゃそうだ。俺は天才じゃない。日々コツコツ勉強してるからテスト前に詰め込まなくてもいいだけであって、睡眠不足とか不安定な感情とかに簡単に左右されちゃうような凡人なのだ。

 まぁそれでも十位以内には食い込めんだろ。テスト用紙が回収され、折よく鐘が鳴って教師が教室から出ていく。あーねみー。

バタリと机に突っ伏していると、山口さんに声をかけられた。山口さんの席は俺の席からかなり離れてるっていうのに、わざわざ歩いてきたらしい。

「今回ちょっと難しかったね。桐津くんどうだった?」

「俺もマズいかな。今回は山口さんに負かされそう」

「やだ、そんなこと言っていっつも桐津くんのが上なのに」

 拗ねたようにじとりと俺を見る山口さんは、生徒会副会長である優等生だ。華やかじゃないけどまぁ可愛い方。でもお堅そうだから告白されにくいだろうな。

 この人は俺のことが好きだ。

「山口さんに負けないようにって思うから頑張れてるんだよ。ライバルがいるってやっぱありがたいな。山口さんが同じクラスでよかった」

 爽やかスマイルを向けると照れたように俯いた。耳が赤くて可愛い。わかりやすいなぁ。

でもプライド高いから簡単には告白してこない。扱いを間違えなければずっと『いいお友達』ポジでいてくれる便利な子だ。

 学校ではピアス穴を髪で隠してセルフレームの伊達眼鏡かけて真面目くん気取ってる俺も、たまに告白されることがある。もちろん学校で恋人作る気なんてさらさらないから全部丁重にお断りさせていただいている。「ごめん、気持ちは嬉しいけど俺ずっと好きな人がいるんだ……」って。

 誠実な一途キャラでいけばそんなに角は立たないし俺のイメージも守られる。ただやっぱり振ったばかりの子とうっかり二人きりになっちゃったりすれば多少気まずい空気が流れてしまうので、なるべく告白自体を避けるようにしているのだ。

 なおも話したそうにしている山口さんを適当にあしらいつつ、俺は今日のストレス発散場所を考える。

 マギダンはうるさくなくて楽だけど、最近は験也さんが恵登に過保護過ぎて居辛い。瀬田さんとなんかトラブったせいらしい。と言っても験也さんが一方的に嫌ってるだけだが。

 験也さん――験也実仁は、結構な財閥のお坊ちゃんだ。親父に聞いたら、お前あんな人と交流があるのかと喜んで教えてくれた。

 跡取りではないが、一生食うに困らない莫大な財産と豊富な人脈を持っているようだ。マギダンは道楽なんだろうな。表の店を放って俺らのためにカクテル作ってくれたりすることも多々あったし、どう見ても儲かってるとは思えない。

 あの人は多分『理解のある大人』でいることが好きなんだ。未熟な俺らの面倒を見て楽しんでる。未熟の塊みたいな恵登と相性がいいのも当然だ。

 反対に、俺は恵登が苦手だ。一応波風立てず仲良くしてるけど、できれば近寄りたくもない。あんな小さくてかよわい少年相手に、って言われるかもしれないけど、だから嫌なのだ。

 か弱くて儚げで守ってあげないといけないなんて虫唾が走る。――まるで母さんみたいで。

 誰かが助けてくれないと何もできなくて、すぐ傷ついて泣いて、慰められるのを待って、頼りなげに微笑んでいる、あのめんどくさい女。

 絶対に弱いのはあっちで、どうしたって悪者はこっちで、そんな人間を相手にするのは死ぬほど疲れるのだ。

 幸い恵登は母さんほど弱弱しげじゃないし、験也さんが全面的に面倒見てる――つーか溺愛してるから、俺はなんも求められない。だから優しいふりして表面的なつきあいをする。それで今までうまくいってた。

 けど、マギダンの裏手で死体が発見されて以来、恵登の不安定さと験也さんの庇護欲がグレードアップしちゃって、近くにいるとそのキリキリした雰囲気になんだか居た堪れなくなるのだ。

 まぁテキトーにどっかの店に行けばいいか。 

 今度はちゃんと女の子見極めよ。今日妙にもやもやしてんのは、昨日の不完全燃焼を引きずってるからかもしれない。

「……って思うんだけど、どうかな、桐津くん」

 机に肘をつき、上目遣いで同意を求める山口さんに、「そうだね」と返事すると、ぱぁっと表情を明るくした。

「だよね! ありがとう、桐津くん」

 なにが、だよね!なのかはわからないが、求められていた返事ができたようで良かった良かった。

 あー早く学校出たい。



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