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小話『その時、ユイは』

ちょっとした番外編です。

 北の国境線戦の状況がこの上なく気がかりな今日この頃。殿下はご無事でありましょうか。

 そんな事を考えながら過ごしていたある日、珍しくセルネレイト様から呼び出しがありました。


「小屋を修繕したいから木材の手配してくれない?」


 小屋というのは、昔レオルヴィア様とレオンハルト様が遊び場として使われていた道具置き場の事で、あの場所にはお二人とセルネレイト様しか入れないようになっている場所です。


「お一人で修繕を? 作業の者も手配いたしましょうか?」

「あーっと、僕一人で大丈夫だから。あの場所には誰も入れたくないんだ」

「……そうですか」


 あの場所は三人のうちの誰かの『許可』がないと入ることができません。ですがレオルヴィア様はもういません。だからこそあの場所はレオンハルト様にとっては思い出の場所。セルネレイト様もあの場所はあのままそっとしておきたいのでしょう。

 私は木材の手配をお約束して、セルネレイト様と別れました。






 別の日。


「ねえ、僕ってそんなに頼りないように見える?」


 庭でお見かけしたセルネレイト様は開口一番にそんな事を申されました。

 何やら自信を失くされているご様子。


「……何のお話でしょうか?」

「そんなことないよね?」


 こちらの話しは聞いては貰えないようです。


「……そんな事はないと思います」

「だよね」


 とりあえずその解答が欲しかっただけのようです。

 一体何があったのでしょうか。


「あ、そうだ。釘がないって言ってたから、用意しておいて」


 それだけ言うとセルネレイト様は背を向けて行ってしまわれました。


「……言っていた?」


 その言葉に少々疑問を抱きましたが、聞きそびれてしまいました。






 また別の日。


「ねえ、最近は女の子が一人で家作ったりするの?」

「はい?」


 開口一番にそんなことを言われ、少々理解するのに苦労しました。


「女性一人でそんなことができるとは思えませんが……」

「そうだよね。普通はそう思うよね……」


 何があったのでしょうか。

 セルネレイト様はいつになく真剣に悩んでおられるようです。


「普通できないよね……何で出来ちゃうんだろ……しかも上手だし……大工さんもビックリだよ……」


 何やらボソボソと呟いているようですが、意味不明です。

 本当にどうしたというのでしょうか。


「何かあったのですか?」

「女の子だったはずなのに……今だって女の子だよね?」

「……どなたの話ですか?」


 お互いに回答のない質問をしばらく続けてしまいました。




 それからしばらく経った夏の日。ユイはようやく、セルネイの意味不明な会話の真実を知ることとなる。


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