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Another Daily -Qualia and Love- 05

 恋人同士、ねぇ……。

 俺には似合いそうもない感じの言葉だ。

 しかしまあ、この胸のちくちくするような違和感は、恋愛感情だとすれば説明が付くのだろう。

 でもなあ。何となく、それを認めてしまうのは負けたようで嫌だ。


 そして、あっという間に時は過ぎて。

 俺と神崎先輩は、二人で再び女子の着替えを待っていた。今は午後5時になるちょっと前。

 あの後も何故か優は俺の後を付いて回ったので、結局今日の殆どは優と一緒に居たことになる。

 まあ、悪くなかった。それなりに楽しかったし。

 女子たちが出てきたので、皆でとし〇えんを後にする。

 としま〇んを出たところで、それぞれの岐路に別れる。

 優と一緒に帰ろうとしたところで(実は家がそこそこ近くに在るのだ)、矢部先輩に引き止められる。

「そうだ、神林クン?」

「何です、矢部先輩?」

「例のアレ、準備出来たから今度調整しにおいで」

「あ、分かりました。ありがとうございます」

「いいって、いいって。趣味だからさ。じゃっ」

「はい、さようなら」

 今のは、矢部茜先輩。一つ上の、女のガンマニアの先輩だ。

「? …何の話?」

「まあ、色々あるんだよ。ほら、帰ろうぜ、優」

「……うん」

 まあ、それが何なのかは、その内分かるさ。それが必要となる事態が起こらない事を祈るけれど。


 二人で歩いていると、今まで以上に優のことを意識してしまう。 ちらちらと、横目で優の横顔を窺う。動悸がする。更年期障害か?そんなわけあるか。

 彼女の隣を歩きながら思う。

 …俺は、いい加減に認めたほうがいいのかも知れない。


 俺は彼女の事が、美影優の事が好きなんだと。


 近くにいるだけでドキドキして、頭ん中真っ白になるぐらい、優の事が大好きなのだと。


 六月のあの時から、いやもしかしたらそのずっと前から、彼女に好意を抱いていたのだと。


 この、胸に燻るもやもやとした想いは、紛れもなく恋心であると。


 俺はいい加減、今までは思ってもみなかったこの事を、認めたほうがいいのかも知れない。


「はははっ」

 思わず笑い出してしまった。こんな簡単な事さえ分からなかったなんて。なんて道化だ。滑稽が過ぎる。

「? どうしたの?急に笑いだして」

「いや、何でもない。ちょっと、こっちの話だ」

「そう?まあ、いいや。暦君、この後予定は?」

 上目遣いで、優がこちらを見る。

「や、特に無いな」

 そう答えると、

「じゃあ、ちょっと寄り道していい?」

 悪戯っぽくそう言った。


 優が連れて行った場所は、神社だった。

「今日、花火大会なんだ」

 道路から境内までそれなりに高さがあり、結構階段を上ったので、その分花火がよく見える。

 今もまた、花火が一輪、空に散った。

「ここ、穴場なのよ。どう?」

「……すげぇ。…いい場所だな、ここ」

「でしょ?」


 それからしばらく、二人で無言で花火を見ていた。


 今まで俺は、特定の誰かに対して、これほど強い恋愛感情を抱いたことは無かった。

 クオリア、つまり感覚質の話を覚えているだろうか。

 知らないモノを本質的に知覚するのは困難である、という事が言いたかった訳だが、この想いの正体が分からなかったのはそのクオリアの所為ではないのか、と思ったのだ。

 曰く、観た事・体験した事の無いものは、知識としては知っていたとしても本質を知っているわけではない、と。

 これから、この想いがどこに向かい、どんな結末を迎えることになるのかは俺には分からない。それでも、たとえどんな終わりを迎えようとも、俺は後悔だけはしないだろう。



      〜Fin〜

 ストックがあったので…一日二本投稿、やっちゃいました☆

 どうも、斎藤一樹です。


 唐突ですが、暦君の「クオリア」の解釈は微妙に間違っています。作中で本人も言っていた通り、彼はうろ覚えでしかこの話を覚えていません。いや、例え話の内容は合っているのですが、その解釈が間違っていまして。興味のある方はウィキペディア等で調べてみてください。

 さて、水着回とか言っておきながら碌な水着の描写がなく、すみませんでしたと謝罪の言葉を述べておきます。でも、多分この物語は終始こんな感じのような気も。

 あと、作中で暦達が遊んでいたとし○えん、閉園になるそうです……。ぎゃあ。勿体ない。

 それではまた。次はDaily辺りの更新になりそうです。

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