Another Daily -Qualia and Love- 04
話す事が無くなってしまい、手持ち無沙汰な状態になる。沈黙が場を支配する。誰か助けろ。期待はしちゃいないが。
この沈黙の所為で、いつも以上に優の事を意識してしまう。
さりとて特段これといってすることも無いため、さっきまでと同じように、仰向けに水に浮き、水の流れるがままに流される。すると、優も同じように
「あ、あわわわわわっ!?」
……出来なかったみたいだ。溺れてるし。
「ほら、掴まれよ」
右手を差し出すと、優は何とかそれに捕まって体勢を立て直した。
「暦君、器用だね…?」
「そうか?」
「私、浮き輪取ってくるね」
優はそう言って、プールサイドに上がる。
「俺も飲み物買ってこよう」
ついでに俺もプールから上がり、タグを持って売店に行く。
「優、何か飲まないか?奢ってやるぜ」
「え、いいの?」
「おう」
「本当に?じゃあ、CC〇モンがいいな」
「オッケー。買ってくる」
そう言って俺たちは一度別れた。
としま〇んのプールでは入場時にタグを渡されて、ドリンクやアイスクリームと言ったものを買う際にはそのタグを専用の読み取り機にタッチさせ、帰る際に一括して代金を支払うシステムになっている。
コーラとCCレ〇ンのMサイズを買い、荷物を置いてある場所へと歩く。浮き輪も含めて、先ほど俺と神崎先輩の二人で運んだのだ。
その途中で、優を見つけた。浮き輪に空気を入れる機械(電動式、正式名称不明)を使い、浮き輪に空気を入れていた。
「大丈夫か?大変なら替わるけど」
「大丈夫、大丈夫。これぐらい、余裕だよ」
「そうか?ならいいが」
そのまま、優の隣で浮き輪に空気が入っていく様子を見ていた。
やがてそれも終わり、二人で歩き出す。一度荷物を置いてある場所へと戻り、休憩することにしたのだ。
二人で歩いていると、今まで以上に優のことを意識してしまう。
…何だっていうんだよ、全く。不可解なこの感情に、若干の苛立ちを覚える。
荷物を置いてある場所へと戻ると、俺と優はビニールシートの上に座り、それぞれ喉の渇きを潤す。さすがに全部は飲みきれなかったので、蓋をしてクーラーバッグの中に仕舞う。クーラーバッグ、持ってきて良かった。
「優の分も一緒に仕舞っておこうか?」
「あ、おねがい」
「りょーかい」
水分補給も終えたところで、再びプールへ───。
「……次、どこ行く?」
「うーん、波のプールにする?」
「よし、そうするか」
ザザーン、ザザーン。岸辺に、波が打ち寄せる。
「…海みたいな感じだな」
「そうだね〜」
しばらく、波に揺られてぼんやりとしている。ちなみに優は、浮き輪に座っている。楽しそうだな。
…さあて、どうしたものか。何か会話を続けないといけないのだが、話すネタに困る。
ちらり、と横目で優を窺うと、ばっちりと優と目が合ってしまった。気恥ずかしくなり、二人で慌てて目線を逸らす。
これじゃあまるで、恋人同士みたいじゃないか。




