Another Daily -Qualia and Love- 02
沈黙が続く。
そんな時、ぽつりと神崎先輩が言った。
「…なあ、神林。スクール水着について、どう思う?」
「ゲフンゲフン!」
この人、こんな人でもある。
「…大丈夫か?」
「唐突すぎたので、思わずむせました」
いきなり何を言いだしますかね、この人は。
「…すまん。…で、答えは?」
どうやら答が聞きたいらしい。俺は素直に答えることにした。
「素晴らしいモノだと思います!」
神崎先輩はにっこりと笑って右手を差し出してきた。俺も同じようにして、がっちりと握手を交わす。言葉に出来ないぐらいの密度の絆で結ばれた気がした。
そんな事をしていると、
「はーい、お待たせ〜!」
竹崎先輩の声がした。振り向くと、部長である竹崎先輩をはじめに、演劇部の女子が勢揃いしていた。水着も、ビキニやワンピースタイプ、パレオ付きなど様々だ。
…スクール水着は、いなかった。
いや、まあ閑話休題。
華は腰にスカート状のフリルの付いた、ビキニタイプの派生系みたいな水着だった。色は黄色。
一方優は、白のビキニを着ていた。いや、何というか、純白っていう感じだ。清らかな白、みたいな。
眼福。
来てよかった。
「……こ、暦君?…どこか変……かな?」
俺がじーっと見ていたからか、優が言った。恥ずかしいのか、少しもじもじとしている。
「あ、いや、そうじゃなくて…」
まあ、実際には見惚れていたのだが、そんな事をわざわざ教えてやるつもりもない。梅雨のあの日の二の舞は御免だ。
「…………」
思い出したら、少し頬が熱くなった。
「……?どうしたの?」
心配してくれたらしい。
「いや、何でもない」
「そう?」
なぜだか、変に優の事を意識してしまう。このもやもやとした不可解な感情は、慣れることが無い。
この感情の正体は、一体何なのだろう。
「おーい、そこの男子共〜っ!早く来〜いっ!」
竹崎部長がプールの中からこちらに手を振っていた。
「そう思うんなら、荷物運ぶの手伝ってくださいよ!」
「えー?だって、荷物持つのはオトコノコの仕事でしょ?」
「…………くそぅ」
反論する気はない。言ってみただけだ。……期待なんて、してなかったさっ!
神崎先輩と2人で、何とか全員分の荷物を運び終わると、
「ほら早く!もう終わったんでしょ?」
「…ああ」
「終わりましたよ。これで終わりですよね?」
「うん。ご苦労様!」
きらきらと輝くような笑顔で竹崎部長が言った。その笑顔に、少しだけ苦労が報われた気がした。
何というか、実に人を動かすのが巧い人だ。




