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Another Daily -One day of rainy season- 03


 東屋には、俺達以外は誰もいなかった。とりあえず2人でベンチに座り、ぼんやりと雨の景色を眺める。

 ちらりと隣に座る優の横顔を覗き見る。やっぱり綺麗だ。学校で普段見ている制服姿も綺麗だけど、私服姿の優は更に輝いて見える。


 ザーッ…………。

 雨足が強くなってきた。

 俺は思考を切り替えた。このままだとさっきのような気まずい空気になるパターンに陥りかねない。その一環として優に話題を振ってみる。

「優はこの辺りに住んでるのか?」

「うん。暦君も?」

「ああ。ここから歩いて大体10分で着く位の距離だな」

「へえ、結構近いね。駅の方?」

「いや、あっちの神社の方向。優の家はどこら辺?」

 等と他愛の無い話をしていると、突然

 ピカッ

 と空が煌めき、

 ドドーン!

 と轟音が鳴った。

「きゃっ!」

 と、可愛らしい悲鳴を上げて、優が俺の腕にしがみついてきた。うわあ。なんか柔らかい2つのものが腕に押しつけられている。……その柔らかいナニかの正体については、深く考えないことにした。

 雷鳴が鳴り響くたびに、優はぎゅっとしがみついてくる。俺はそのたびに理性を総動員させなければならなかった。


 30分ほどすると、雷は遠ざかっていき、雨もずいぶんと小降りになった。その頃になってようやく、優は俺の腕を放してくれたのだった。

 ちなみにその間、優の連れている犬は、雷が鳴っている間もおとなしくお利口に〈お座り〉のポーズでじっと静かにしていた。

 ……おい優、おまえ犬に負けてるぞ。

 さて。雨もだいぶ小降りになってきたので、俺は帰ることにした。本音を言うともう少し優と一緒に居たかったのだが、このままだと親に怒られそうな気がした。一応家のテーブルの上に『ちょっと散歩に行ってきます。9時頃戻ります。 暦』という書き置きを残しておいたのだが、時計を見ると今は9時30分を指し示している。

 ……過ぎてるじゃん。とっとと帰らないと。

「ごめん、優。そろそろ俺、帰るぜ」

「え、もう?」

「おう。そろそろ帰らないと親に怒られる」

「…そう、なんだ……」

 なぜか残念そうに言う優。多分話相手が帰ってしまうので残念がっているのだろう。

「んじゃ、また明日な!」

「あ、そ、その、暦君!」

 帰ろうとしたところに声をかけられる。

「うん?何かな?」

「えっとその、私と一緒に帰らない?」

 その願ってもない誘いに、

「おー、じゃあそうするか」

 俺は条件反射的に返事をしてしまう。

 傘を開きつつ、2人で東屋を出る。もうほとんど雨は降っていなかった。そしてとうとう止んだ。俺は傘を閉じる。どんよりとした曇り空の合間から、僅かに陽の光が射し込んでいる。

「ほら、見て暦君!」

 優の指差す方向を見ると、

「虹だよ!」

 鮮やかな七色の大きな橋が空に掛かっていた。


      ──fin──


 さて、いかがでしたでしょうか?ギャグ主体のDailyとはまた違うノリの作品でしたが。DailyとAnother Dailyが対を成すように、竜也と暦もまた対になるキャラクターです。その辺りも味わいながら(?)お楽しみ下さい。

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