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Another Daily -One day of rainy season- 02


 いや、あの顔に若干見覚えが在るような…。

「あら?分からない?」

 くすくすと笑いつつ彼女が言う。…この声にも聞き覚えがある。この声と顔から判断すると…。

「…もしかして、優か?」

「気付くの遅いよ〜、暦君。もしかして本当に分からなかったの?」

「悪い、全く気が付かなかった。髪型とか服が変わると、意外と分からないもんだな」

 制服の時よりずっと綺麗だ、とは言わなかったけれど。ちなみに彼女は普段はポニーテールである。特に意味もなく〜である調になってみた。まあ、僕もポニーテールは嫌いじゃない。どうでも良いですかそうですか。会話を続けよう。

「そうかな?」

「そうだよ」

 彼女の名前は美影優。俺の所属する成華学園演劇部の部員で、俺のクラスメイトだ。誰にでも優しい性格で、男女問わず人気が高い。

「美影さんはもうホント大和撫子っていうか、なんか和風美人ならぬ和風美少女って言うか、むしろ女神様だよ女神様!あの美しさと優しさは女神様の如しだよ!」

 という無駄に熱い(むしろ暑苦しい)主張を、俺はクラスメイトから無理矢理聞かされた事がある。

 まあ、これで彼女の人柄についての説明は十分だろう。なんて事を思っていると、

「そういえば暦君、何でさっき私のことじっと見てたの?」

 優が首を傾げながら無邪気そうな顔で言った。

「──────────!?」

 うわぁ、気付かれてた!俺、絶体絶命のピーンチ。あまりの不意打ちに頭がパニックに陥る。脳内でリオのカーニバルに勝るとも劣らないぐらいの大騒ぎが始まった。嘘だけど!

 まあそんな状態だったので(一言で言うと混乱の極み)、つい口が滑ってポロッと言ってしまった訳だ。

「見惚れていたんだよ」

つまり、隠しておくはずだった本音を。

 言い終わってから一体自分がナニを口走ってしまったか気付き、慌てるがもう遅い。優の顔があっという間に紅く染まっていく。たぶん俺の顔も同様だろう。頬が熱くなっている事が自分でも分かる。

 どことなく気まずい空気が流れる。お互いに言葉をかけようとしても、何となくためらってしまう。そんな空気を洗い流してくれたのは、雨だった。

 ポツリ、と頬に冷たい感触が走る。空を見上げると、今度は額にポツリ。

「と、とりあえずあそこの東屋に行こうぜ。雨、降ってきたし」

 そう言うと、優は

「う、うん。そうね」

 頷き、

「ほら暦君、行きましょう!」

犬のリードを引きつつ、今までの気まずい空気を振り切ろうとするかのように、東屋へと軽やかに駆けていった。慌てて俺も追い掛ける。

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